見出し画像

グロース株に気をつけろ!|なぜ金利が上がるとグロース株は売られるのか?

皆さん、あけましておめでとうございます!

今年はNoteやYoutubeなど米国株を中心に更なる配信をしていきたいと思いますので今年もよろしくお願いします!

足元では日本を除く世界的なインフレ懸念が加速する中、2021年12月15日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)において、米国債などの資産を購入する量的緩和縮小(テーパリング)の加速も決まり、終了時期の想定を2022年6月から同3月への前倒し、22年中に合計3回の政策金利の引き上げが見込まれています。

そんな米国の金融政策の重要な節目を迎える2022年、金利上昇によってグロース株に対する逆風が暴風雨になりかけている最中、「金利が上昇するとなぜグロース株が売られるのか?」について、なるべく平易な言葉で解説していきたいと思います。

1.お金には時間的な価値がある

画像1

そんな金利とバリュエーション(株価)との関係を考えるにあたり、突然ですが、上記の問題を少し考えてみてください。

問題1:皆さんが100万円もらえるとしたら、今日の100万円が良いですか?それとも1年後が良いですか?

おそらく99.9%の人は、100万円もらえるのであれば、「いますぐ」100万円が欲しいと思ったでしょう。

それはそうですよね笑

今すぐにでも100万円が受け取れるのであれば、その100万円を使って欲しいものが買えますし、欲しいものがない人でも、その100万円を1年間投資に回していたら100万円以上に増やすことができるからです。

つまり同じ「100万円」という額面が同じ金額であったとしても、受け取るタイミングが違えば、「100万円」の価値も違うということです。

もう少し具体的に説明すると、「今すぐ」100万円を受け取れば、もっとも確実な方法で、一番高い利息の1年定期預金がある愛媛銀行 四国八十八カ所支店の定期預金に預ければ0.27%の利息がつくので、1年後には少なくとも「100万2,700円」になっています。

この当たり前の概念をファイナンス的にもっともらしく表現すると「金銭の時間的な価値」といいます。

画像13

それでは皆さんは1年後に「いくら」もらえのであれば、今すぐに100万円を受け取らずに、1年後まで我慢できますか?

この問題ではおそらく人によって意見が割れると思います。

Aさん:いますぐにでもお金が欲しいから1年後がいくらであろうと「今すぐ」受け取りたい

Bさん:「確実」に増えるのであれば、100万円よりも増えるならば1年後で良い

Cさん:「確実」ではなくても良いから、「もっと」増やしたい

皆さんはどれに当てはまりましたか?

ここでは誰が正解ということはありません。

2.リスクの考え方

画像11

この1年後に「いくら」であれば、1年後まで我慢できるのかという問いは、実は皆さんのリスク許容度を図る問いです。

一般的に「リスク」というと「危険」という意味合いで使われることが多いですが、ファイナンスにおける「リスク」とは「不確実性」を意味し、リスクとリターンのバランスを指します。値下がり(下振れ)だけでなく、値上がり(上振れ)も、ファイナンスにおける「リスク」となります。

例えば、リスクが低いと資産として、先ほどみたような定期預金が挙げられますが、銀行預金は大きなリターンが見込まない代わりに、元手の資金(元本)で確実にリターンを得ることができます。
(ATM手数料がかかるのは目をつぶりましょう笑)

一方で株はどうでしょうか?

株価は毎日上下するため、元本が保証されるわけではありません。時には元本が大きく割れこむ(マイナスになる)ことだってありますし、元本を大きく超えることもあります。

さきほどの問題2のように1年後に皆さんが欲しいと思う金額が人によって違ったのは、このように皆さんの求めるリターンと許容度できるリスクが異なるからです。

3.会社の株価はどのように評価されるのか?

画像6

以上をふまえて、会社の株価はどのように計算(評価)されるのか?を説明していきたいと思います。

「いきなり話が飛びやがったな笑」と感じる方もいるかもしれませんが、このリスクとリターンの考え方は株価と密接にかかわってきます。

株価がどのように理論的に算出されるを説明するにはコーポレートファイナンス分野になるので、身構えてしまうかもしれませんが、ご安心ください。

Discount Cash Flow(DCF法)とかWeighted Average Cost of Capital(WACCもしくは加重平均資本コスト)などのコーポレートファイナンスの専門用語を使わずに概念を解説してきたいと思います。

では、さっそく「会社の株価はどのように計算(評価)されるのか?」を解説したいと思います。

4.時価総額(株価)は企業の稼ぐ力

画像7

会社の時価総額(株価)は理論的には上図のように、会社が将来稼ぐであろうフリーキャッシュフロー(FCF)、つまり「稼ぎ」の合計金額を現時点の価値(時価)に計算したものです。

そして将来の「稼ぎ」の合計金額を現時点での価値(時価)として算出するには、2.リスクの考え方で見てきたように、将来に受け取る金額(この場合は「稼ぎ」)のリスクがどれだけ高いのか低いのかによって変わってきます。

画像13

そのことを感覚的に理解していただくために上の例を見てください。

例えば、世界のトヨタ自動車と設立3年目のスタートアップの1年後の収益がともに「100億円」になると見通しが示されていると仮定して、この将来の「100億円」という稼ぎが、現時点だといくらになるのか考えてみましょう。

世界のトヨタ自動車と設立3年目のスタートアップとでは、現時点での価値は同じになるでしょうか?

恐らく多くの人が、「一緒ではない」と感じたと思います。
(ここは感じていて欲しいところですが、もしわかりにくかったら、シンプルにトヨタから1年後に100億円もらえる権利と、スタートアップから1年後100億円もらえる権利の現時点での価値は同じなのかに置き換えてみてみてください)

理由はすごく単純で世界のトヨタ自動車には有り余る実績があるので、1年後に100億円稼ぐと言われたら、その信憑性が高いのに対して、どこの馬の骨かもわからない設立3年目のスタートアップが1年後に100億円稼ぐいったところで、誰も信じません。

画像12

それを数字のイメージで表現すると上のように、天下のトヨタ自動車の1年後の100億円の現在価値が「99億円」だとすると、どこの馬の骨からもわからないスタートアップの1年後の100億円の現在価値は「5億円」くらいといったところでしょうか。。

ここで「99億円」とか「5億円」は適当な金額なので意味はありません。ポイントは天下のトヨタ自動車と設立3年目のスタートアップとでは、1年後の「100億円」と言われていも、将来的に稼ぎを実現する可能性(リスク)が異なるため、現在の価値に雲泥の差があるということです。

画像9

この会社の1年後の稼ぎである「100億円」を現在価値に割り引いた比率を「割引率」といいます。

この例ではトヨタの割引率は1%((100億円-99億円)÷ 100億円)であるのに対して、スタートアップの割引率は95% ((100億円 - 5億円)÷ 100億円)ということになります。

5.割引率とは?

このように会社が将来的に稼ぎを実現する可能性(リスク)によって割引率は違ってきます。

画像10

ではこの割引率はどのように計算されるのでしょうか?トヨタとスタートアップの例では「割引率が違う」ことはわかりましたが、一体どのように計算されているのでしょうか。。

ここでようやく「金利」の話が出てきます。

割引率とは、その企業に対して期待されるリターン(期待収益率)ともいわれ、お金を貸す人が求めるリターン(金利)と株の投資家が求めるリターン(配当やキャピタルゲインなど)の加重平均によって求められます。

また少し難しくなってきましたが、少し我慢して聞いてみてください。

お金を貸す人は、その企業にお金を貸したらちゃんと返ってくるのか?という視点でリターンを求めて、

株の投資家は配当が払えるのかや値上がりが期待できるのかといった視点でリターンを考えます。

そしてその加重平均である割引率 = 加重平均資本コスト(WACC)なのですが、WACCをを深掘ることが目的ではないので、あえて割愛します。

ここで重要なのは、割引率を計算するには、お金を貸したときのリターン(金利)と投資家のリターンの加重平均によって計算されるということです。

つまり、すごく乱暴な言い方をすれば、金利が上がれば割引率も高くなり、金利が低くなれば、割引率も低くなるということです。

6.株価に対する金利の影響

画像12

ここで、さらにトヨタ自動車と別のスタートアップの稼ぎ(FCF)5年分をみてみたいと思います。(一つ断っておきますが、稼ぎの金額は適当です)

ここでトヨタの5年間の稼ぎは比較的コンスタントに成長していく計画であるのに対して、スタートアップの稼ぎは最初の数年は赤字から徐々に縮小し、5年後には高い収益を生み出す計画であったとします。
(概ねバリュー株と言われる会社の稼ぐ力とハイパーグロースと言われるテック企業の数字はこんな感じ)

画像12

この2社割引率が同じ「5%」であったと仮定した場合、両者が将来的に稼ぐ金額の現在価値 = 時価総額 は同じ「515」になるように「ワザと」しています。

このように異なる性質の会社の時価総額が同じ2社があったとして、仮に現在のように金融緩和の縮小により金利が上昇したらどうなるでしょうか?

ちなみに割引率が「5%」だとすると、

1年目の割引率は(1+0.05)
2年目の割引率は  (1+0.05)× (1+0.05)と計算します。
3年目の割引率は(1+0.05)× (1+0.05)× (1+0.05)
4年目の割引率は(1+0.05)× (1+0.05)× (1+0.05)× (1+0.05)
5年目の割引率は(1+0.05)× (1+0.05)× (1+0.05)× (1+0.05)×(1+0.05)

n年目の割引率は (1+0.05)^n

というように、年数が先であればあるほど、割引率は高くなります。

画像13

先ほどの稼ぎ(FCF)が変わらないと仮定し、金利が上昇したとして、割引率が「10%」に上昇したと仮定しています。

その結果、2社の時価総額を比較して見てみてください。

割引率を変えただけで、稼ぎが一緒であったとしても、トヨタの時価総額よりもスタートアップの株価が下落する結果となりました。

トヨタの時価総額:448
スタートアップの時価総額:392

割引率を変えただけで56の差が開いてしまいました・・

これはなぜでしょうか?

実はトヨタとスタートアップの稼ぎ方、つまり事業計画にその理由があります。ここでもう1度さきほどの事業計画を見てみましょう。

画像13

何か気づきませんか?

そうです、先ほど説明したようにトヨタの5年間の稼ぎは比較的コンスタントに成長していく計画であるのに対して、スタートアップの稼ぎは最初の数年は赤字から徐々に縮小し、5年後(遠い将来)には高い収益を生み出す計画となっています。

そのため、割引率が上がると、スタートアップの事業計画の中で、もっとも稼ぐと想定される5年後(遠い将来)の稼ぎが一番影響を受けます。

これはどういうことかいうと、将来の稼ぎを割り引くための割引率は遠ければ遠いほど割引率が高くなる結果、スタートアップの事業計画のように5年後(遠い将来)の稼ぎを今の価格に戻すと、割引率が高くなるため、より割り引かれて計算されるということです。

トヨタが毎年コンスタントに収益を稼ぐのに対して、一般的なスタートアップ(グロース株)は最初の数年(もしくは5年)赤字で、将来の一定時期から収益を稼ぐ計画なので、将来収益がより高く割引率かれてしまう結果、金利の上昇局面では理論的には、その影響を影響をもろに受けて下がるのです。

6.金利があがっても株価は下がらない?

このようにファイナンス理論では、金利が上がると割引率もあがるため、株価は下がります。

しかし朝の情報番組やニュースサイトに出てくる”専門家”の中には、「金利があがっても株価には影響がない」と説明する人もいます・・・

ですが、結論から言うとこのような”専門家”の考え方は間違っています。

なぜなら理論的には株価の計算には金利は影響するからです。

では、この”専門家”と呼ばれる人たちは何を言ってるのでしょうか?

それは、金利が上昇する局面において、一般的には物価も上昇しているときなので、金利が上昇しても、企業が商品やサービスの値段を上げれば、稼ぐ力も変わるので”株価が下がらない”といってます。

「そりゃ、金利上昇時に、(稼ぐ力も上げれば)株価は下がらない」なんて、(かっこ)の部分が前提なら、当たり前ですよね?

だって事業計画を勝手に上方修正してるんだから笑

7.ハイパーグロースには気をつけろ

画像14

ということでこのように金利が上昇する局面において、もっとも売られる銘柄はグロース株、特にハイパーグロース株のように遠い将来稼ぐことが前提とした株価がついてる銘柄です。

それはなぜか・・・

それは上の例で見てきたように、収益化するのが遠い将来であるため、その収益化した時点からの現在の価値を計算すると、金利上昇局面においては、割引率がより高くなるため、遠い将来の収益がより割り引かれて計算されるためです。

そして追い打ちをかけるように今のハイパーグロース株にとって厳しいこと・・・

それは「ハイパーグロース」ではなくなってきたということです。

むしろ業績的に見れば「普通グロース」の株に成り下がっています笑

ズームビデオ、ドキュサインなどなど数えればきりがないですが、金利上昇局面に、売上高成長が「普通成長」になってしまったので、強烈な売り浴びせにあってます・・・

ネットフリックスで大人気の韓国ドラマ「イカゲーム」で例えると、

ゲームの参加者(ハイパーグロース)は大金(ハイバリュエーション)をかけて、2020年以降のパンデミック禍におけるゲーム(株式市場の期待)をクリアしてきましたが、成長に陰りが見え始めると、ハイパーグロースが次々にピンクのソルジャー(投資家)に銃殺(売り浴びせられる)されている、そんな状態です。

そして、次から次へと銃殺されるハイパーグロースが増えていき、気づいたら、ハイパーグロースの残骸・・・

なんてことにもなりかねないで、

今まで決算を無事に通過してきた銘柄(オクタ、スノーフレーク、クラウドストライクあたり)の投資を検討している人は利上げが実際に開始されるまでは、今までの水準と比べて”安い”と思っても慌てて、買わないことをお勧めします。

8.最後に

最後まで読んでいただいてありがとうございます。この記事を気に入ってくれたら”スキ”ボタンを押して頂ければと嬉しいです^ ^

またこれからもGAFAMをはじめとする米国や中国の高成長テック銘柄を取り上げて記事にしてますので、これを機に是非フォローをお願いしますm(_ _)m







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?