よし、大逆転しよう!
今日のおすすめの一冊は、渡邉正裕氏の『食える仕事食えない仕事』(東洋経済新報社)です。その中から、「日本はこの20年間で、相対的に貧しい国に落ちぶれてしまった」という題で書いてみました。
数字でみると、日本は本当に落ちぶれちゃったな、と強く思います。でも、国内にいるとその実感がないんですよね。何故なら、物価も安いし、色々な値段も上がらないし、結構日本、豊かじゃんって。だけど、海外に行くと(今は行けないですけど)、その物価の高さに驚きます。ホテルの値段とか、食事の値段とか、日本よりかなり高い感じです。
「マック指数」というマクドナルドのビックマックの価格比較があります。たとえば(2020年2月調べ)、一番高い国はスイスで6.71ドル(739円)、2位はノルウェーで5.97ドル(657円)、3位はアメリカで5.67ドル(624円)、4位はスウェーデンで5.44ドル(599円)で、韓国は18位で3.89ドル(428円)、そして日本は26位で3.54ドル(390円)です。
タイが19位、ペルーが24位ですから、日本は世界の中でもホントに安くなっちゃったな、と思います。よく言われることですが、中国や韓国の人たちが日本にくる理由は「安いから」だそうです。ホテルも、家電も、食事も、みんな安いから。かつては違いました。品質がよいとか、おもてなしのレベルが高いとか、でした。
小西美術工藝社社長、デービッド・アトキンソン氏は、著書「日本再生は、生産性向上しかない!」の中でこう語っています。
生産性がきわめて低い日本のサービス業は、1990年以降の日本と海外の生産性のギャップ拡大に、最も大きな影響を与えているのです。私が二条城でかかわっている文化財観光を例にとりますと、海外での入場料の平均が1891円だったのに対し、日本の平均は593円でした。海外の文化財は日本の数倍の予算を使って修理し、より良い保存状態を保ち、解説や展示もずっと充実しています。
飲食施設も併設し、グッズを売り、案内するガイドが常駐しているほか、外国語を含む音声ガイドも提供され、頻繁にイベントを開催している。入場料の分だけサービスを向上させているわけです。この違いを、お客様は神様なので600円から値上げできないという「日本の美徳」で説明できるとは思えません。
そもそもサービスの中身が劣っているから、3分の1の入場料なのだと思います。ホテルも同じことです。日本と他の先進国との間で、サービス業の生産性に開きが生じたのは、1995年以降のことです。それにはITの活用が関係している、というのが多くの分析に共通した結論です。美徳や対価ではなく、日本のサービス業がITを十分に活用できていないことが大きいのです。
生産性を向上させるには、組織や仕事のあり方を根本的に変えていく必要があります。ITを導入すれば、犠牲になってしまう人も出てくるでしょう。変化に反対する人が多いため、人が足りないのにITを活用して同じ仕事にかかわる人を減らすこともできないでいる。仕方がないから、移民を入れようなどという人が出てくる、おかしな状況です。
つまり、値段を上げられないということですね。日本はデフレ状態が続き、価格のアップができなかった。だから、給料も上がらなかったとも言えます。ま、これも国内だけで完結しているのなら、それでもよかったのですが、これだけ世界とのつながりが出てきてしまうと、ことは国内だけの問題では収まりません。これは、もっと気合を入れろとか、努力が足りないというようなモラルとか気持ちの問題ではありません。純粋にシステムや仕組みと、経営戦略の問題です。
日本、落ちぶれちゃったって、ホントに悲しいけど、でも、打つ手は無限。そして、切羽詰まったときの日本の力ってすごいです。火事場のバカ力ってやつです。必ず起死回生の手はあります。あきらめないで、投げやりにならないで、一発大逆転に賭けてみたいです。
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