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梨園をカイゼンした東大卒の熱意

今日のおすすめの一冊は、川内イオ氏の『農業新時代』(文春新書)です。ブログの題も同名の」「農業新時代」として書きました。

「農業新時代」には10人の農業に新風を吹き込んだ人たちの事例が出てきますが、その中から1人、ご紹介したいと思います。

《4年で500以上のカイゼン 東大卒「畑に入らないマネージャー」》東京大学農学部で地域環境工学を学んだ佐川友彦は2007年、同大大学院に進み、農学生命科学研究科の修士課程を終了した。2009年に大学院を出て、外資系化学メーカーのデュポンに就職。4年働き、体調を崩し、デュポンを辞め、とりあえずデュポンでの最初の2年間住んでいた宇都宮に住むことにした。その時にローカルな友達ができたからだ。
栃木県内の企業のインターンシップを紹介しているNPOの紹介で、宇都宮駅から車で20分ほどの阿部梨園にいく事にした。契約は2014年9月から12月まで、各週2,3回。佐川はそこで根本的な問題があると感じた。物の置き場所が決まっていない。資材の置き場所に名前がないので、どこに何があるかわかりづらい。大事な書類がお菓子の箱に入っている。事務所が家の延長のようになっていて、雑然としている。デュポンの環境と比べると、同じ「ビジネス」をしているはずなのに、別世界に見えた。
その一方で、栽培している9種類の梨はとても丁寧に作られていた。梨は、大きさがうま味に直結する。量より質を重視した生産が行われていた。そのこだわりが、ソフトボールのように大きい梨となる。とにかく実が大きくて、ジューシーで、買いに来るお客さんもたくさんいる。佐川はそこにポテンシャルを感じた。「モノが良くて売れているんだったら、足腰の部分をちゃんとチューニングすればもっといい農園になるんじゃないか」そこで意を決して進言した。「やるべきことは集客じゃない。家業から事業に変えるために本気でやりましょう」。
ここから、佐川のカイゼンが始まる。ふたりはまず、「プロミス100」を立ち上げた。佐川の契約が終わる12月までに課題を100個リストアップして、改善しようというプロジェクトだ。迎えたインターン終了の12月、阿部さんと佐川が解決に至った課題は70に達した。この4ヶ月で、阿部梨園には畑作業をしない人間を置いておく余裕がないこともわかっていた。
「阿部が一生懸命向き合ってくれて、変わろうという意欲を見せてもらった。そういう人と一緒に仕事をしていきたいと思ったんです。根拠はないんですけど、フィーリングとして強く感じる部分があったので、自分と波長の合う本気の人と一緒に仕事するのは自分の人生において大事なんじゃないかなって。だから、お世話になりました。また会いましょうで別れたら、絶対に後悔すると思いました」
そこで佐川は履歴書とともに、自分にはこういう貢献ができるという10の提案をまとめて、阿部さんに送った。それは学生時代の就職活動の時とは比べ物にならないほど、真剣に、熱意を込めて書いたものだった。阿部さんはそれを読んで、男泣きした。「父から譲り受けてから、自分ひとりで頑張ればいいという気持ちで過ごしてきたので、佐川君からの申し出はすごく幸せだったし、頼りになる仲間ができたと思いました」
その後数々のカイゼンをしてきて結局、佐川が参画する前は80%程度だった直売率が、2016年には99%になった。栃木県内でもトップの直売率を誇る。2015年から2年間で、阿部さんと佐川が改善した項目は500を超えた。
17年、佐川は「阿部梨園での改善をオンラインで無料公開する」という目的で、クラウドファンディングを行った。集まった金額は446万円。この資金をもとに18年5月、「阿部梨園の知恵袋 農家の小さい改善実例300」というサイトを立ち上げたところ、予想以上に反響が大きく、日本全国の生産者、団体から講演の依頼が殺到したのだ。
「これは、自分でも本当にビックリしています。今年(19年)は講演の依頼だけで70~80件あって、『阿部梨園の知恵袋』を立ち上げる前の5倍から10倍になります」。佐川の存在に注目したのは、生産者だけではない。生産者向けにITサービスや経営支援サービスを展開したい企業からも声がかかり、2019年8月現在、クラウド会計サービスを手掛けるfree、農業メディアのマイナビ農業、農家専用マーケティング・ツールを提供するファーマーズ・ガイドなど6社と手を組み、農業界での知見を活かして支援している。

元々転職先が決まっていたのではなく、NPOの紹介で梨園にインターンシップとして入ったのが縁となった訳です。自分が元々やりたかったことではなく、ただまわりのご縁を大事にして、そこに没頭し、結局はその縁が次々と良い方向に向かっていったということです。夢や目標をカタチにするという生き方もいいですが、こうやってご縁を大事にしていく生き方も素敵です。ご縁を大事にする生き方は、自分でも思ってもみない方向に人生が進みます。たぶん、それがお役目なんでしょうね。

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