見出し画像

遺伝学者が語る「新型コロナワクチンの安全性」について

今日のおすすめの一冊は、五條堀孝氏の『人間は生命を創れるか』(丸善ライブラリー)です。その中から「進化学はヒトの未来を予測する」という題でブログを書きました。

五條堀孝氏が緊急出版された「新型コロナワクチン」とウイルス変異株』(春秋社)という本の中から、抜粋引用してみました。

2019年末、中国武漢市で確認された新型コロナウイルスは、正式には「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)」と呼ばれ、その後、欧州、アメリカ、アジア、アフリカ と中心を変えながら広がりパンデミックが襲いました。このウイルスに感染すると、感染者は「コロナウイルス感染症(COVID-19)」すなわち急性呼吸器疾患を引き起こします。
そしてこの 感染症ウイルスは、以前に流行した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)および中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)とは系統的に親類関係にあるものの、それらとは比較にならないほど人類に圧倒的な脅威をもたらしています。
2021年6月現在、日本は第4波の緊急事態宣言は解除されましたが、全国民へのワクチン 接種を速やかに行うことを急務とするほか、感染拡大の抑制と経済活動との両立を見据えた変異 株対応のワクチン開発、そして感染を終息に向かわせるための増殖阻害剤(治療薬)の開発が期待されているところです。
新型コロナウイルスのワクチンにはさまざまなものがありますが、主として使用されているのは、ファイザー社およびモデルナ社のメッセンジャRNA(mRNA)ワクチンです。私たち のDNAの持つ遺伝情報を細胞核から細胞質へ伝える役割を担っているmRNAを用いることで、 私たちの身体でウイルスのタンパク質を生成し、免疫記憶を発動させて中和抗体を作ることができるのです。これには本書で述べられているように、mRNAをワクチンとして使用するまでの 研究に長い年月がかけられており、そこではいくつか特筆されるべき工夫が凝らされています。
日本でもmRNAワクチンが使われるようになると、私のところには疑問や不安の声が殺到し ました。「開発されて間もないワクチンを投与しても大丈夫でしょうか?」「遺伝子操作されたワ クチンを投与しても、将来の子どもに影響はないでしょうか?」「変異株が問題視されています が、mRNAワクチンはどこまで効くのでしょうか?」「新型コロナについていろいろな情報が 飛び交っていますが、何を信じてよいのか分かりません!」「変異とは、いったい何ですか?」 など......。
そこで、遺伝学者の立場からこうした不安や疑問に応えようと、とりわけmRNAワクチンの 仕組みや有効性および安全性、ウイルスへの対応策、変異株についての考え方など、正確にわかりやすく説くことの必要性を感じ、本書を緊急出版することにしました。 私の専門は、遺伝学およびゲノム進化学です。新型コロナウイルスについて、疫学的にはもち ろん遺伝学的知見からもさまざまに研究が行われ、これまでに多くのことが分かってきました。

不安解消! Q&A

◆【新型コロナワクチンは何種類ある?】 新型コロナワクチンは、従来の手法で作られているワクチンをはじめ、ウイルスベクターで作られているものや mRNAで作られているものなど、2020年9月時点で、およそ210種類ものワクチンがあるといわれています。
◆【どのワクチンが一番効く?】 遺伝的な観点で捉えるならば、「核酸ワクチン」 といわれる mRNAワクチンが有効的であると 考えられます。
◆【mRNAワクチンは他のワクチンとどこが違う?】これまで使用されていたワクチンは、ウイルスの一部のタンパク質を体内に投与し、免疫ができる仕組みでした。それに比べmRNAワクチンは、ワクチン構造にいくつかの工夫が凝らされていて、ウイルスのタンパク質をつくる基礎情報の一部を持つmRNAを投与します。私たちの身体の中で、この情報をもとにウイルスタンパク質の一部が作られ、それに対する抗体が産出されることで免疫ができていきます。つまり、ウイルスタンパク質の産出方法が他のワクチンとは異なります。
◆【ファイザー社のmRNAワクチンは、どのように作られるの?】ニューヨー クタイムズによると、新型コロナウイルスが持つスパイクタンパク質の遺伝子コードを使ったDNA分子(プラスミド)を大量調製し、大腸菌のなかに導入します。その後、大腸菌を大量に培養し、DNA分子をいったん取り出して精製したところで、このDNA分子であるプラスミドの純度およびDNAの塩基配列を 確認していきます。そして、このDNAの塩基配列の情報をもとに mRNAを作り精製して、ワクチンに仕上げていくのです。
◆【mRNAワクチンを接種すると、遺伝子組み換え人間になる?】 mRNAワクチンを接種してもDNAを操作することにはならないので、そうなる ことはありません。
◆【ワクチン接種は小児には必要ない? 】子どものワクチン接種の対象は、満16歳から満12歳以上に引き下げられ、対象範囲が広がりました。しかし、12歳に満たない方は、新型コロナワクチン接種の 対象にはなりません。 ファイザー社のワクチンについては12歳以上、モデルナ社のワクチンについて は18歳以上が接種対象になっていますので、その点で留意が必要です。
◆【mRNAワクチンの安全性は大丈夫?】 mRNAワクチンの開発には25年以上の歳月を経ており、その副反応は他のワク チンに比べ比較的少ないように思われます。
◆【なぜ mRNAワクチンは2回接種する? 】mRNAワクチンが接種されると、私たちの身体の免疫記憶でウイルスのタンパク 質を覚え始めますが、時間の経過とともに記憶が薄まってしまうこともあり、2回打つことで身体の中の免疫記憶をより強化するためです。これは、mRNAワクチンに限ったことではありません。
◆【mRNAワクチンは変異株に効く? 】新型コロナウイルスは常に突然変異を起こしていますが、現在のところ mRNAワ クチンの接種をした後で変異に対して効力が弱まったり、失ったりすることはないようです。大阪や東京で蔓延しているイギリス由来の「アルファ株」については、 有効的であるとの検証も見られます。ただし今後、これらのワクチンから逃れる変異が出現することもあり得ますので、注意が必要です。
◆【mRNAワクチンといわれるファイザー社とモデルナ社はどこが違う? 】ファイザー社およびモデルナ社は、実用化に向けた段階で会社が異なるだけで、研究開発における根元は同じものです。
◆【新型コロナワクチンは、どうしてワクチンの種類によって保管温度が異なるの?】 mRNAはRNAの一種であり、分解されやすい特徴を持っています。そのためm RNAワクチンは、脂質の膜で覆われたナノ粒子などで包み込まなければならず、 その手法によって保管温度が異なるものと考えられます。

今日のブログはこちらから☞人の心に灯をともす


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?