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SNSが脳をハックする

今日のおすすめの一冊は、橘玲氏の『裏道を行け』(講談社現代新書)です。ブログも同名の「裏道を行け」という題で書きました。

本書の中に「SNSが脳をハックする」という興味深い記事がありました。

スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンの『スマホ脳』(新潮新書)は、SNSの危険性を説いて日本でもベストセラーになった。この本でハンセンは、フェイスブックのようなSNSは脳の報酬系をハックするようにつくられていて、その過剰な利用が不眠やうつの原因になり、子どもの健全な成長を阻害すると警鐘を鳴らしている。
徹底的に社会的な動物として進化してきたヒトには、食べることと愛されることと並んで、もうひとつ決定的に重要な欲望の対象がある。それが「評判」だ。「よい評判は仲間内での地位を高め、安全の確保やパートナーの獲得につながる。
逆に悪い評判がたつと共同体から排斥され、旧石器時代にはこれは即座に死を意味しただろう。このようにしてヒトは、よい評判を得ると幸福感が増し、悪い評判によって傷つく(殴られたり蹴られたりしたときと同じ脳の部位が活性化する)ようになった。
わたしたちはもともと、自分の評判(他者からどう見られているか)にきわめて敏感なように「設計」されている。フェ スブックやツイッター、インスタグラムなどは、評判をリアルタイムで可視化するというイノベーションによって脳の報酬系にきわめて強い刺激を与えている。この効果は、とりわけ思春期の若者たちに顕著に現われるだろう。
心理学者のアダム・オルターは「依存テクノロジー」を論じるにあたって、ハンセンと同じく、スティーブ・ジョブズが自分の子どもにiPadを使わせなかったというエピソートから始めている。
ジョブズだけではなく、『WIRED』元編集長のクリス・アンダーソンや ツイッターの創業者エヴェン・ウィリアムズなどIT業界の大物たちも、子どもにデジタルデバイスを買い与えなかったり、その使用に厳格な時間規制をしていたという。
オルターによれば、アメリカ人の平均的なスマホ使用時間は1日3時間で、手に取る回 数は平均10回。メールのチェック、テキストメッセージの送信、ゲーム、ウェブサーフィン、記事などの閲覧、銀行残高の確認などで、毎月ほぼ100時間が消えている計算にな る。平均寿命で計算すれば1年間だ。
驚くべき数字だが、これでも実態を過小評価している。これはスマホ管理アプリの集計結果で、自分がスマホに依存していると自覚しているユーザーの情報だ。スマホ漬けになっていてもそれを「問題」と思っていない大多数は、この統計には含まれていない。
2013年に2人の心理学者が行なった実験では、他人同士の被験者をペアにして、「過去1か月に起きた興味深い出来事」について小部屋でしばしおしゃべりをさせた。 ある被験者グループはスマートフォンを横に置き、別の被験者グループは紙のノートを横に置いたところ、スマホが手元にあった被験者はあまり打ち解けられなかった。
実験後 の感想でも相手との関係の質を低く評価しており、相手に対して感じた共感や信頼の度合いも低かった。スマートフォンは、たとえ使っていなくても、そこにあるだけで人間関係の質を損なうのだ。なぜこんなことになるかというと、スマートフォンの向こうに世界が広がっていることをつねに思い出しているため、目の前の会話に集中できなくなるのだという。

あらゆる依存症(アルコール、ギャンブル、買い物等々)は、脳を刺激し、欲望を喚起させることによって、脳をハックします。スマホ依存症もそれとまったく同じです。あの手この手でスマホを見ないといられなくする手法が取り入れられているのです。

iPhoneが登場したのが2007年ですから、まだ15年しか経っていないのに、スマホ依存症がすさまじい勢いで増えています。これからはせめて、食事をするときくらいは、スマホをテーブルに置かない、というような気づかいは必要ですね。

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