何年断られ続けても
今日のおすすめの一冊は、ロッド・ジャドキンス氏の『天才はしつこい』(CCCメディアハウス)です。その中から「平凡な人が非凡になるには」という題でブログを書きました。
本書の中に「何年断られ続けても」という心に響く文章がありました。
すばらしい作品を生み出したいなら、剣闘士の心意気を取り入れよう。 古代ローマの剣闘士には知性と技能と強い意志が求められたが、これは重要な仕事や作品に取り組むときに土台となる素質と同じだ。 攻撃されたときには、盾で自分の作品を守りながら応戦する必要だってある。
1990年代のこと、建築家ザハ・ハディドはひどい不幸に見舞われた。 カーディフ・ベ イ・オペラ・ハウスの建築デザインコンペで、ハディドが優勝。 オペラ歌手がつける豪華な首 飾りに見立てたデザインで、イギリス一独創的で魅力的な建築物になるだろうと、建築家もデ ザインの専門家も口をそろえて言った。
ハディドにとっては新境地を開いた作品だった。 とこ ろが、予算を握っていた狭量な政治家と官僚がプロジェクトを中止したのだ。 ハディドはショックを受けたが、それではと世界中のプロジェクトに次々と設計案を応募して応戦した。
やがて、こんなパターンが見えてきた。 建築家やデザイナーはハディドの設計案を評価して、依頼を決める。 しかし決定権をもつ委員会が、尻込みして依頼を撤回する。「ハディド設計の建築物は建設不可能だ」と何年言われつづけても、ハディドが意欲を失うことはなかった。
ついにドイツのヴァイル・アム・ラインにあるヴィトラ消防ステーションがハ ディドの設計どおりに建設され、これが大きな転換点となる。 世界各国のランドマークとなる 建築物の設計依頼が、急に殺到し始めたのだ。
ハディドは戦士らしい鋼の意志力の持ち主だ。 生まれながらではなく、自力で身につけた。 男性優位の競争社会である建築業界で、イラク出身の女性として、次々と立ちはだかる障害物をいくつも越えてきた。 剣闘士の思考を意識的に身につけたのは、作品に自分の個性を込めるため。 何があっても自分自身と自分の感性に忠実でいるという固い決意を貫くためだ。
まわりを見渡してほしい。ほとんどの物の形は左右対称だ。 だがハディドはあえて左右非対称にすることで、動きがあり目を引くデザインを生んだ。 選考委員会はこの非対称さを見て、建設できないのではないかと恐れをなすが、 ハディドが信念を曲げたことはない。
バランスのよさにこだわるのではなく、アンバラン スさを追い求める。 あえて不安定につくろう。 見る人をそわそわさせ、心の均衡を崩してみよう。 静かな長い楽節のすき間に短いフレーズを大音量で差し挟んでみたり、精巧に描き込んだ部分のすぐ隣に大きな空白を置いたり。 色、大きさ、質感作品のどんな要素にも、それぞれの重量がある。
左右対称の作品ではこうした要素が中央線を境に均等に分けられ、予想の範疇を出ない単調な仕上がりになる。 一方で、左右非対称のデザインは重量の積み方に変化をもたせ、作品に動きと意外性を与える。
ハディドがドイツの造船会社ブローム・ウント・フォスと共同でデザインした全長128 メートルのスーパーヨットは、重さは左右均等であるものの、外観は左右でまったく異なる。 通常は水平ラインでつなぐ船のデッキを斜めのラインでつなぐことで、耐えず変化する水という環境になじむ、動きのある形に仕上がった。
先述のカーディフ・ベイ・オペラ・ハウスの件では、ウェールズの政治家と官僚から成る委員会が、安全策をとって投資を拒否した。 だが、のちによく似たプロジェクトを企画した中国の政治家と官僚は、広州オペラハウスをハディドの設計で建設し、街をみごとに文化の中心地へと変貌させた。
広州は新しい発想を恐れない近代的で進歩的な都市だと世界に知らしめた。 2004年、ハディドは名高いプリツカー賞を受賞。 1979年にこの賞が開設されて以来初の女性受賞者となり、その後も数々の賞を獲得した。 優れた建築家に贈られるロイヤル・ゴールド・メダルを2016年に受賞したときのハディドの言葉を紹介しよう。
「建築業界の女性は、常にアウトサイダー。別にいいんです、私はこの立ち位置が好きですから」 かつて、ハディドは建設不可能な建築物を設計することで有名だった。 いまは、建設不可能に見える建築物を「建てる」ことで有名になっている。
誰かが、まったく新しいことや、変わったことをしようと計画すると、必ず既存の勢力、保守的で変化を好まない勢力から反対の意見が出て、計画がつぶされることになります。これは今に始まったことではなく、古代よりくり返された新旧の対立です。
世の中には二つの勢力しかないと言われています。一つは「現状打破の姿勢」の勢力。もう一つは「現状維持の姿勢」の勢力。現状打破の姿勢の人達は「進歩発展の姿勢」でもあります。人のせいにせず、常に現状(世の中)をよりよくしていこうという人たちで、それを最後まであきらめない人です。
反対に現状維持の姿勢の人たちは、人にたより、人のせいにする人たちです。「できない」とか「難しい」「困った」が口グセのグチっぽい人で、現状に甘んじ、自分だけよければいい、という姿勢の人でもあります。
何年断られ続けても、現状を打破しようとする人でありたいものです。
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