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ドアをノックする勇気

今日のおすすめの一冊は、水谷もりひと氏の『いま伝えたい!子どもの心を揺るがす “すごい”人たち』(ごま書房新社)です。その中から「いのちをいただく」という題でブログを書きました。

本書の中に、メンタルコーチの筒井正浩さんのこんな素敵なエピソードがありました。

筒井さんと言えば、かつて大阪の履正社高校野球部のメンタルコーチをして甲子園に導いたことがマスコミに取り上げられ、以来、ジャンルを問わず、いろんな人のメンタルコーチとして活躍している。以前は年収1200万以上稼ぐ高給取りのサラリーマンだった。彼には夢があった。しかし、それで食べていけるか分からない。だから会社は辞められなかった。8年間、悶々としていたが、44歳のとき、会社を辞める決意をした。
大きな壁は「嫁さんにどう言うか」だった。ある日、意を決して言った。「夢ができたんや。仕事を辞めたい。ただ、すぐには十分な収入がないと思う」奥さんは一言こう言った。「それなら私も明日から仕事せなあかんね」筒井さん、奥さんの懐の広さに感動した。案の定、メンタルコーチの仕事はなかなか収入には結びつかなかった。ひと月の収入が4万円。これが16か月続いた。「もうあかん」と思った。そんなとき、人との出会いが彼の人生を大きく変えた。
最初のきっかけは元神戸製鋼ラグビー部のスーパースター、平尾誠二さんだった。平尾さんはラグビー日本代表の監督を引退後、スポーツ文化振興のために月一回の6か月間コース、毎回いろんなゲストを呼ぶというセミナーを主催していた。一回目のゲストは元サッカー日本代表の岡田武史監督だった。講演後、会場を出た筒井さんは、控室に入る平尾さんの姿を目にした。「あっ、平尾さんや。話ができたらええなぁ」と思った。その瞬間、「でもあんな有名な人と話をするなんて無理」という思いが頭をよぎった。
「このまま家に帰っても、控室のドアをノックして断られて家に帰っても、結果は同じや。それなら0より1の可能性に賭けてみよう」控室の前まで行った。心臓がバクバクした。ノックができない。どうしようと思っているうちに右手首が二回動いた。「コンコン」とドアをノックする音がした。「やってもうーた。もう逃げられない」中から「ハイ」という声がした。
ドアを開けた。目と目が合った。平尾さんは「どなたですか?」という顔をした。「今日、講演を聴いて感動しました。お礼だけ言いたくて…。お疲れのところすみませんでした」と言ってドアを閉めようとしたら、「どうぞ入ってください」と言われ、びっくりした。向かい合わせで座った。どうしよう。とりあえず名刺交換だ。
平尾さんは筒井さんの「メンタルコーチ」という肩書を見て、「これ、なんですか?」と聞いてきた。「スポーツ選手のメンタルをサポートするんです」と筒井さんが答えると、平尾さんは急に興奮して言った。「絶対この道でメシ食ってください。本気で応援します。諦めないでください」平尾さんは部屋を出て行き、すぐその日のゲスト、岡田監督をつれて来て、筒井さんに紹介した。
それから平尾さんはいろんな人を筒井さんに紹介してくれた。ここから人生が劇的に変わっていった。「ドアをノックしたら迷惑するんじゃないかと、みんな勝手に思い込んでいるけど、ノックしてごらんよ。扉を開けてくれるから。まず動こう。動き出したら見える風景が変わってくるで」と筒井さん。そして若い人たちにこんな一言も。「僕のやったことは手首を2回動かしただけ。その時、必要なのは勇気や。その勇気も最初の一歩だけでええんや」

勇気について、詩人ゲーテの言葉があります。「名誉を失っても、もともとなかったと思えば生きていける。財産を失っても、またつくればよい。しかし、勇気をうしなったら、生きている値打ちがない」。最初の一歩を踏み出せないときに思うことは、「笑われるかもしれない」「バカにされるかもしれない」「批判されるかもしれない」「怒られるかもしれない」「無視されるかもしれない」…。それらをはね返すのが勇気です。

勇気を奮(ふる)い起こして、最初の一歩を踏み出したいと思います。

今日のブログはこちらから☞人の心に灯をともす


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