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説得の名人

今日のおすすめの一冊は、高橋健太郎氏の『言葉を「武器」にする技術』(文響社)です。その中から、「説得に必要なことは何か」という題でブログを書きました。
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説得に最も必要なのは、「感性」や「感情」、「好き嫌い」であり、その上で「論理的説得力」が発揮できるという話は、言われてみれば、なるほどそうなんだろうな、とかなり納得性があります。

説得に来た人が、どんなに正しいことを言おうと、理路整然としていても、もし、相手が前から嫌っている人だったら、話を聞く気にもなりません。説得力はゼロです。つまり、話を聞く前に、もう嫌になってしまうからです。

説得の名人とは誰かと言われれば、田中角栄元首相をおいて他にはいないでしょう。こんなエピソードがあります。(田中角栄100の言葉/宝島社)より

◆《直接接してもらえば、田中がどういう人間か必ず分かってもらえる。ところがそうしない人もいるんだな。正面からちゃんと接してもらえば分かるのに。》田中角栄は、ある立場の議員たちから「会ってはいけない政治家」と言われた。角栄を説得するのは不可能で、逆に取り込まれてしまう。盟友の大平正芳でさえ「田中に会うと奴の言うとおりになる。会わないで話を決めないといかん」とぼやいたほどだ。信頼して腹を割って話せば、田中角栄を必ず理解してもらえる。「私が乱暴至極というだけの人間というのは間違いだ。知らないまま毛嫌いすることは互いに自戒すべきことである」と角栄は語っていた。
◆《若い奴に対しネチネチとやるのは大嫌いだな。叱ったとしても、次の人と会ったときにはもう忘れている。君には負ける、また会おうですよ。》すぐに怒るがすぐに忘れる人と、一度怒ったら決して忘れない人。どちらもいるタイプだが、角栄の場合は典型的な前者である。遅くとも次にあったとき。早ければ怒った1時間後にはケンカの相手に「悪かったな。また会おう。飲もう」と必ず自分から持ちかけ、むしろ関係を深めてしまう“特技”があった。好き嫌いで政治をしない角栄の明るくカラッとした性格にほれこんだ政治家は数知れない。
◆《相手が立てなくなるまでやっつければ、敵方の遺恨は去らない。徹底的に論破してしまっては相手が救われない。土俵際には追い詰めるが、土俵の外に押し出す必要はない。》田中内閣時代には田中派議員だけでなく、野党にも多くの「隠れ田中派議員」がいたことは有名だ。国会運営をスムーズに展開するため、角栄は政敵を完全に潰しにかかることを本能的に警戒し、それをやらなかった。黒白をつけることはときに心地よいものだが、それによって政治の幅は狭まり、損をすることになる。相手を生かすことが自分を生かすことだと角栄は肝に銘じていた。

政敵までもがファンになってしまう田中角栄元首相。情の政治家と言われ、同時に数字や法律にも詳しかったので、「コンピュータ付きブルドーザー」と言われました。キケロ―の言う、説得の三要素(論理力、好印象、感情力)をすべて持っていた、ということです。

情があり、論理と数字にも強い人には限りない魅力があります。

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