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今こそ、企業独自の働き方を確立するとき

今日のおすすめの一冊は、リンダ・グラットン氏の『リデザイン・ワーク 新しい働き方』(東洋経済新報社)です。その中から「リデザイン・ワーク」という題でブログを書きました。

本書の中に「今こそ、企業独自の働き方を確立するとき」という心に響く文章がありました。

1908年に最初の自動車「T型フォード」をつくったとき、 ヘンリー・フォードが目指したのは、安価で操作しやすく、耐久性の高い乗り物をつくることだった。こうして誕生した世界初の量産型自動車であるT型フォードは、ひとつのモデルしかなく、長い間、車体のカラーも黒だけだった。

生産ラインの能力の限界によりやむを得なかったという事情もあったし、自動車を購入する人たちが多くを望んでいなかったという事情もあった。当時の人たちは、自動車を所有するだけで大満足で、車体のカラーには大して関心をもたなかったのだ。 

しかし、時代が経つにつれて、選択肢は大きく広がっていった。製造工程がモジュール化された結果、メーカーはさまざまな種類の製品をつくったり、個別のニーズに応じた製品をつくっ たりしやすくなった。

一方、消費者は、自分のニーズを反映した製品を手に入れることが可能 だと知り、選択肢を欲するようになった。市場に参入するメーカーが増えて、それぞれの新しいデザインが持ち込まれると、製品の選択肢と多様性はいっそう拡大した。

同様のことが働き方の世界でも起こりつつある。その引き金を引いたのが新型コロナだ。コ ロナ前の働き方は、言ってみればT型フォード的なものだった。 コロナ前は、オフィスに出勤して午前9時~午後5時に働くことがほぼ必須と位置づけられていた。働く場所と時間の両方が大きく制約されていたのだ。

以前から一部の企業は働く場所と時間の柔軟性を高めようとしていたが、率直に言って、2020年春以降の変化に比べれば、微調整の域にとどまっていた。自動車にたとえて言えば、車体のカラーが新しかったり、内装がいくらかおしゃれだったりはしたけれど、基本的にはT型フォードのままだったのだ。

仕事のあり方を根本から設計し直す企業はほとんどなかった。 100年前の自動車の世界と同様、いま働き方の世界で多様性が一挙に拡大しはじめている。パンデミックの衝撃をきっかけに、多くの企業で自社の価値観とパーパスを再検討しようとする機運とエネルギーが生まれた。

そして、長年にわたり前提にしてきた考え方がいまも通用するのかを問い、オフィスに出勤できなくなったことではぐくまれた高度なデジタル能力を活用しようという潮流も生まれている。 

選択肢が増えるなかで、多くの企業の幹部チームは、自社独自の道を切り開きはじめた。い まほど、仕事のあり方が会社によって異なる時代は過去になかった。

企業は、自社ならではの シグネチャー(署名・象徴)とも言うべき働き方を確立することを目指すようになった。ほかの会社とは異な る独特の働き方を採用することにより、人材を引きつけ、自社につなぎとめ、生産性を向上させ、イノベーションを後押しすることが目的だ。

働き方に関して自社のシグネチャーを確立することは、今日のすべての企業が直面している手ごわい課題であり、同時に大きなチャンスの源でもある。

コロナ禍を経験した現在、何年後かに、「あの時が、働き方革命の出発点だった」と言われるときが必ずくるはずだ。働き方の多様性の進化だ。多様化に対して死に物狂いの努力をしてこなかった企業は今後、優秀な人材は入ってこなくなる。

今までとはステージが変わってしまったのだ。コロナ禍が収まったら、またもとに戻るだろうと高をくくっている会社は規模の大小に関わらず、早晩消えていく運命にある。

人手不足がますます深刻になる現在、今こそ、企業独自の働き方を確立するとき。

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