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イエナプランとは

今日のおすすめの一冊は、平川理恵氏の『リクルートOBのすごいまちづくり 2』(CAPエンタテイメント)です。その中から「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という題でブログを書きました。

本書とは別の本ですが、「イエナプラン」という、本ブログの中でも取り上げられていた話がありました。

《古びてしまった学校から新時代の学校へ》
今日、世界中の経済活動が国境を越えて展開され、インターネットの急速な普及で国や文化や言葉の壁を越えて情報が飛び交っています。そんななか、これまでの学校のあり方が、もはや時代に合わなくなってしまっていることは、日本だけでなく、世界中の教育関係者や多くの 親たちが感じています。
実際、電話や計算器、テレビや洗濯機などの家電製品、腕時計や自動車など、どれをとって みても、100年前にはたぶん想像もできなかったほど、形も機能も変わってしまっています。それなのに、なぜか学校教育の姿だけは、100年前とほとんど変わっていないというのはどういうことでしょう。
世界中の多くの国で、いまだに学校が、100年前と同じように、「教室」という 仕切られた空間で、教壇に立つ教師が、整列して座っている子どもたち全員に同じ教科書を使い、 同じ方法で知識を伝える授業をしているというのは、100年前の電話を見るのと同じくらいに滑稽な光景だといってもおかしくありません。
新しい時代に、新しい道具を使って、もっと急速に変化していく未来に向かって生きている子どもたちが古めかしい教室で、古めかしい方法だけで教えられることにうんざりするのも無理からぬことです。そろそろ、今という時代にもっ とふさわしい、また、子どもたちがやがて出ていく20年後や50年後の未来社会の姿を見据えた 新しい学校へと脱皮する時が来ています。
【グローバル時代に求められるカとイエナプラン】
2018年初頭、Asia Society/Centre for Global EducationとOECDは、「急速に変わる世界の中 で グローバル・コンピテンスを教える(Teaching for Global Competence in a rapidly changing world)」と題する報告書のなかで、これからの人間に求められる力を定義し、それに向けた教育のあり方を明らかにしました。
そこでは、グローバル・コンピテンス(グローバル時代に求 められる力)として、OECDが示した4つのドメイン、すなわち、【世界を探究する】 【異なる観点があることを認める】【考えを伝達する】【アクションを起こす】をあげています。
もう少し詳しく言うと、自分の身の回りにある事物や現象をきっかけに、深く世界に向けて 探究する力、自分のものの見方と他者のものの見方を共に受け入れる力、自分のアイデアを文化や言語や価値観が異なる多様な受け手に効果的に伝達する力、よりよい社会に貢献するため 自らのアイデアを行動に移していく力、ということです。
さて、こうした学校のあり方は、今ようやく世界中の教育者が語り始めているのですが、実を言うと、すでに90年以上も前に、ドイツの教育学者ペーター・ペーターセンがイエナ大学の 実験校で取り組んだ学校教育の考え方、イエナプラン教育と酷似しています。
さらには、この ペーターセンの学校変革のアイデア、イエナプラン教育は、ドイツではほとんど広がらなかっ ですが、1960年台半ばから、隣国オランダで教員や保護者に受け継がれ、200校を超える学校現場で試行錯誤の経験と実績を積んできました。
しかしこのことは、残念ながら、オランダの外ではほとんど知られていません。 イエナプラン教育は、OECDが求める「グローバル時代に求められる力」をはるかにしのぐ深い教育哲学に支えられ、幅広い人間形成と世界市民社会の理想を求めて展開されています。
イエナプラン・スクールは、次にあげる要素を大きな特徴として、学校教育活動を展開しています。
●《異年齢学級》 イエナプラン・スクールでは、通常、3学年(幼稚園では2つの年齢集団)の生徒たちから 成るファミリー・グループと呼ばれる異年齢学級が基本単位になっています。子どもたちは、 同じ学級で3年間過ごし、年少・年中・年長という異なる立場を経験します。
●《4つの基本活動》 イエナプラン・スクールでは、4つの基本活動をもとに学校での活動を企画します。それは、対話・遊び・仕事・催しの4つです。
●《リズミックな時間割》 毎日の日課は、教科ごとに区切られてはおらず、上の4つの基本活動が循環するように決められています。そこでは、子どもたちのバイオリズムに合わせ、集中して学ぶ時間と身体を動 かしたり話したりしながら学ぶ時間とが、交互になるようにします。また、すべての時間を科目ごとに同じ長さで区切るのではなく、その日の子どもたちの雰囲気や活動への関心の度合い などを考慮して柔軟に伸ばしたり短縮したりできるようにしています。
●《ワールドオリエンテーション》 科目の壁を越えて、生きたホンモノの題材をもとに、子どもたちが、協働で探究する学びです。 ワールドオリエンテーションは、イエナプランのハートと呼ばれており、子どもたちの学校生活のすべてにかかわるものです。 つまり、ワールドオリエンテーションのテーマは、遊びや催しのテーマにもなるし、教科学習の内容にも可能な限り反映されます。たとえば、読書や作文ではこのテーマが使われ、算数で学ぶ内容は、探究や報告の際に関連づけられます。また、音楽・図画・体育などの表現活動にもテーマを反映させることができます。
●《生と学びの共同体》 学校は、子どもたちが1日の大半を過ごす場です。イエナプラン・スクールでは、学校を「生と学びの共同体」と呼び、家庭と同じように、生活の場として考えると同時に、教員は、子どもたちの学びをファシリテートする養育者であると考えます。 また、学校は、子どもたちを中心に、養育の第一義的責任者である保護者と、子ども学的な立場から育ちを支援する教員によって作られる「学校共同体」とみなされます。『イエナプラン 実践ガイドブック』(教育開発研究所)

日本でも2019年4月、長野県南佐久郡佐久穂町に茂来学園大日向小学校というイエナプラン・スクールが開高しました。ここは私立ですが、ブログにも書いた広島県では2022年から常石小学校の施設を活用して「イエナプラン教育校」を設置する予定だそうです。

イエナプランはそもそも公立の学校変革のためにつくられたものなので、常石小学校がはじめての試みと言っていいかもしれません。

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