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これが決め手

その日は朝から雨だった。

どの靴を履こうか。雨の日は靴を決めてから服を考える。
思った以上に強めの雨だから、レインブーツにしようか。でも、10月とは言えちょっとブーツは早いかな。。。
何度目かの着替えで「よし!コレにしよう」と、お気に入りのピンクのスカートにレインブーツを履いていくことにした。

待ち合わせは水族館。

柱にもたれたり離れたりそわそわしながら待っていると、待ち合わせ時間を少し過ぎた頃、駅の方向から小走りで来る彼の姿が見え、ほっとした。
水族館へ入る前にお昼を食べることにした。二人きりで食事をするのは初めてだったが、何も思い出せない。緊張していたからではなく、二人で食事することに違和感がなかったのだ。食事を共にした時の違和感は意外と記憶に残るもの。食べ方だったり、注文の仕方だったり、店員さんへの態度だったり。。。違和感がないことがその後の居心地の良さに繋がった。

水族館をゆっくりぐるっと巡った。ペンギンショーも見たかったが、親子連れが多く、すでに席は子ども達でいっぱいになっていた。ペンギンショーはあきらめ、もう一つの目的である映画館へと向かった。

私は水族館が好きで、彼は映画館が好き。

ここは水族館と映画館が併設された、2人にとってこれ以上ないファーストデートにうってつけの場所だ。

どの映画を見るかは彼にお任せした。決めた映画は正直あまり好きなジャンルではなかったので、少しがっかりしながら見始めたが、結果とても面白かった!
保守的な自分では出逢えない、新しい世界を見せてもらえた気がして嬉しかった。

中途半端な時間だから。。。とお茶をしてから夕飯を食べに行った。お店は和食で、日本酒を通じて出会ったのに、その日飲んだのは焼酎。
「この黒糖焼酎美味しいんですよ」そう言うと、気に入ってくれてずっと飲み続けていた。その姿に、いい人だなぁと思った。
さっきのお茶と焼酎で、お腹はたぷたぷ。二人して何度かトイレに行きつつ、相手のことが知りたいし自分のことも知って欲しくて、たくさんたくさん話した。気がつくとラストオーダーも過ぎ、広い店内には私たちしか残っていなかった。

「まだ一緒に居たいね。」

そう言って、彼の住む家へ向かった。
すっかり雨は上がり、レインブーツの中は少し蒸れている。ちょっと恥ずかしいな。。。やっぱりレインブーツはやめておけばよかったかな。。。

ふいに手を握られた。
初めて繋いだ手は、酔っているせいもあり温かくて、

「あぁ、この手が最後の人になったらいいなぁ。」

そう思っていたら、思わず口に出して言ってしまった。
彼も「そうだねー」と言って繋ぐ手に力を込めた。

***

息子くんが産まれてから、手を繋いで歩く機会はめっきり減ってしまったけど、その手は相変わらず温かい。
これからも手を取り合って生きていこうね。旦那さま。

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