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セルゲイから電話

先日、家の近所の商店街を歩いていると、携帯電話が鳴った。相手はセルゲイ。ウクライナ東部ハルキウを拠点に活動(?)しているが、ブローカーなのかディーラーなのか、一言で表すのは難しい。
「金さえ払えばなんでも用意してやるぜ」という無頼漢、セルゲイ。昨年、一緒にドンバス地方を巡った仲で、その時彼にはドライバー兼通訳を頼んだ。ウクライナ軍の検問で止められた時、「地元のコサックと東京のサムライが通るぜ!」と兵士に言い放ち、猛スピードで突破していった彼である。

「よぉ、ヒロ。いまどこにいるんだ?」
「いや、今は東京だよ。どうした?」
「別に用件はないけど、そういや軍に強いコネができたから、またドンバスでもヘルソンでも案内してやるぞ。どんなヤバい場所でもな。げへへ」

下品な笑い声を出しつつ、急に話題が変わる。

「俺の嫁さんがさぁ…」
「えっ、結婚したの?」確か、以前はガールフレンドと言っていたはずだ。
「まあ、嫁みたいなもんだ。妊娠したんだ。ベイビーがいるんだよ」と、彼は柄にもなく嬉しそうに言う。

「ところで、この間一緒に乗ってた車がぶっ壊れちまってさ。友達に金を借りればなんとかなるが…」
金を無心されるかと思い身構える。何かと入用なのだろう。妙に弱気な声のトーンが気になった。
「こっちは毎日のようにミサイルが落ちまくってる。マジでヤバい」
最後に彼はそう言った。

返す言葉がない。とりあえずハルキウに行ったら連絡する、どうにか仕事にするから、とだけ言って電話を切った。

商店街を歩きながら、そんな危険な街でこれから子供を育てていくのだろうか、と考える。目の前には、週末で賑わういつもの平和な商店街。店から揚げたてのコロッケの匂いが漂う。どっちも別世界のようで、どちらも同じ現実の世界である。考えすぎると頭がおかしくなりそうになるな、と思いつつコロッケをひとつ買って食べる。仕事なあ。



最近、映画を見た。『A Perfect Day』(邦題は「ロープ 戦場の生命線」)。舞台はバルカン半島のどこか、という設定だが、ボスニアの舞台と登場人物のそれぞれのキャラクター、ルー・リードの音楽もとてもよかった。地元の人間が国連(UN)平和維持軍にUnited Nothingと言い放つ、徹底的な不条理のブラックコメディでした。またボスニアを旅したい。

これはサラエボの博物館にある「スレブレニツァの虐殺」に関する展示。
当時、維持軍に参加していたオランダ軍がやけくそで描いたものだとか。

こんな広告もありました。ベネトンのボスニア紛争の兵士の服は何かで見て衝撃を受けた。サラエボにはベネトンの店舗があります。宮嶋茂樹氏の書籍「不肖・宮嶋のネェちゃん撮らせんかい!」(ムチャクチャな内容の本ですが)によると、ベネトンは停戦直後にサラエボに店舗を出現させたもよう。


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