見出し画像

小さな大きな一歩「嗅覚のための迷路ーOlfactory Labyrinth」

こんにちは、香りのコミュニケーターHIROです。

目標1,500名来場。オープンして 1週間で500名の来場。想定外でうれしい悲鳴が聞こえたと。

目標入館者数は3週間余りで達成し、11月22日時点では2,200名を超えていると伺った。こちらの学芸員、藤本さんは嗅覚に関するみなさんの強い関心を感じていますと話してくれた。

画像1


2017年12月、パリは「ル・グラン・ミュゼ・デュ・パルファン(Le Grand Musée du Parfum)」(現在は閉館)。藤本さんはここで初めて嗅覚鑑賞の面白さを体験したそうだ。

嗅いでいくことが面白い。嗅ぎ分け、(嗅覚で)知覚して、(香りの)繊細さ知る。(香りが呼び戻す)記憶を辿って振り返ることが面白い。この一連の体験を、自身の感じたことを伝えるとしたらどう表現するだろうか?共有したい、日本でも展示したい。

嗅覚の展示会は、欧米では見かけます。筆者がニューヨークで暮らしていたとき、SOHOのギャラリーで開催されていたり。少し角度は異なるが、著名な香水のボトルの中にある液体だけをアートとして捉え、視覚や触覚で感じるものを取り外し、その作品が生まれた時代の社会的背景をキューレートしたり。目に見えないモノの展示会に触れる機会がよくあったものだ。

最近では日本でも、嗅覚にフォーカスしたインスタレーションが設置されていたりするが、大々的に開催しているわけではない。古い本のニオイを嗅ぐ展示?もあったと思う。東京だっただろうか?

嗅覚アーティストでググると、Maki Uedaさんが出てきたそうだ。日本国内で嗅覚アーティストといったら彼女しかいないのではないだろうか?(笑)

匂いには個人差があり、一人が心地よいと感じていても、別の人は不快だと感じるもの。まさに公共の場である美術館で香りのするモノの展示はハードルが高い。

それでも、企画を温めていた藤本さんは、比較的チャレンジができる秋の企画展の担当の順番が回ってきたタイミングで、「ここはもう、やるっきゃない!」と動き出した。 

2019年1月、Maki Uedaさんに声掛け。翌月にはお返事。

2019年10月、こうして実現した日本の美術館での初の嗅覚の展示会の模様はこちら。

①《嗅覚のための迷路 ver. 5》@2階オープン展示室

画像2

②《嗅覚のための迷路 ver. 4》@展示室2

カバー写真参照。

③《OLFACTOSCAPE ーローズ香の分解ー》@展示室1

画像3

画像4

話を伺いに名古屋駅から東海道線に乗り、一駅、二駅。そこから15分くらい畑の間を散策すると到着。生憎の曇りで、今にも雨が降りそうな湿気が手伝って、心地よい土の匂いが立ち込めていた。写真をとりながら歩いたので、20-25分かかっただろう。

「地方の小さな美術館だからできたのでは」と学芸員、藤本さんは振り返っていたが、小さな大きな一歩だと筆者は強く思う。

展示を鑑賞した来場者が思い出の匂いを書き残すコーナーがあるが、次はもう一歩踏み込んだ、直観で感じたことを言葉にする ー面白かった以上の深い感想 ー を残してもらえる仕組みつくりを考えているとか。

画像5

今回の成果を伺ったところ、視覚障害者の方々のためのセッションを開催した際、健常者よりも(嗅覚に)敏感だけど、健常者と同じように、これ何の匂い?、説明してもらわないとわからないよと話していたと言う。ファクトだけを説明し、学芸員さんのエピソードも話すと盛り上がったそうだ。香りがコミュニケーションの活性化につながったことが嬉しかったと話す。

やはり香りによって一人一人が個でより良い状態にあると、集合体でより良い社会(筆者が目指す社会!)が創れる事例か?と、お話し聞きながら、密かに筆者はうなづいた。

次回は何の匂い?ではなく、どんな気持ちになったか共有できると良い。

この若い学芸員さんの原動力に感謝と拍手を!

寄せられた感想を読んでいると、AIの時代だからこそ、人間の五感の覚醒が大切になると思いますと、筆者も同感である。

アフターデジタル

2006年からデジタルを担当していた筆者は、今の猫も杓子もデジタルトランスフォーメーションという風潮に少し嫌気がさしている。(しかし、筆者が生活をしていけるのはデジタルのおかげであるが)AIが人間にとって代わるとか、仕事がなくなるから不安だとか。

じゃぁ、その次はなんだろう?を常に考えて生活している。2008年に香りと出会ったのも何かのご縁であろう。

一方でデジタル、もう一方で感性。ではなく、これからは

「デジタル(機械)x感性(人間)」

ではないだろうか?

今日も香り溢れる素敵な一日を!

*オリジナル記事はこちら


お読みいただきありがとうございます!香り(嗅覚)の世界は徐々に注目を集め始めていますが、まだ多くの方々には未知の領域です。試行錯誤中ですが、スキをクリックしてくださったり、シェア・コメントなどいただけたらとても嬉しいです。