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中国語の短編を読む会(2024年6月28日)

 毎週金曜日の夜に行っている、中国語の短編を読む会(中国語中上級者向け)のレポートです。
 中国語の短編小説を、中国語を学んでいる日本語話者と日本語を学んでいる中国語話者が共に読み、和訳する過程を通じて、言葉を介した理解と交流の魅力をお伝えします。
   今回は、フミさんが選んだ短編小説。”文身店的轶闻”の5回目です。
 今回は久しぶりに霄(xiao)さん(母語;中国語)が参加してくれました。日本語母語話者3名、中国語母語話者3名と半々となりました。登場人物の名前の由来について議論したり、四字熟語やことわざの意味、使われ方、背景について深堀りしながら訳すことができました。

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小尚见他紧张了,告诉他这只绰号的来源。
李一言在外洋轮上当随船医生,赚了不少钱。

小尚は彼が緊張しているのを見て、そのあだ名の由来を彼に教えた。李一言は遠洋航海の船医をして、かなりのお金を稼いだ。

李一言という名前の由来 ”一言既出 驷马难追”一度言ったら引っ込みがつかない。男らしい言い方。ちゃんと約束したという意味。”一诺千金”約束は大切にするの意味(1つの承諾が千金に値する、が原義)。一言为定
【yoko】

自打老婆死了,小区里四十六岁的老姑娘与六十四岁的老阿姨,都抢着要做他填房,还大打出手,被李一言婉言拒绝。因为得不到他,“四十六”与“六十四”就联手骂他是“老流氓”。

奥さんが亡くなって以来、団地の46歳のいき遅れと64歳のおばちゃんがどちらも彼の後妻の場を争って、取っ組み合いの喧嘩までしたが、李一言にやんわりと断られた。彼を得られなかったので46と64は手を取り合って、彼のことを”老いぼれ女たらし”と罵った。

 
「自打...」は「...以来」という意味で、ある出来事が起きてから現在までの状況を説明する際に用いる。文学的な表現。現在の中国語では”自从”を使うことが多い。
姑娘;結婚したことがない。行き遅れの女性。
阿姨;結婚したことはあるが、夫が亡くなったか離婚した女性。未亡人と訳すと離婚した女性を含まなくなるのでここでは”おばちゃん”と訳した。
填房;古語で、夫を亡くした後に他の男性と再婚する女性を指す。家の女主人のイメージ
大打出手;取っ組み合いの喧嘩までする
婉言拒绝;丁寧だがはっきり断る。中国人がよく使うのは”你太好了。配不上。” 私にはもったいないです。
【mika】

居民们心知肚明,这叫吃不到葡萄说葡萄酸!
但大家为了寻李一言开心,就给他起了这么个绰号。

住民たちはそれが彼女らの負け犬の遠吠えだとちゃんとわかっている。しかしみんなはふざけて、彼にこのあだ名をつけた。

 
吃不到葡萄说葡萄酸;イソップ寓話の「狐と葡萄(きつねとぶどう)」取れなかった葡萄を酸っぱくて美味しくないモノに決まっていると自己正当化した物語が転じて、負け惜しみを意味するようになった。
→負け犬の遠吠えと訳すのがよい。この文脈では結婚できなかったことを言っており、林真理子の同名の小説のイメージもかぶる。
寻~开心;寻(動詞、元は尋ねる、捜す、求めるの意味)で开心(喜ぶ)。「彼をとっ捕まえて喜ぶ・笑う」の構造から⇒彼をからかう。喜ぶのはからかう側。
起(动);起名字
心知肚明;成句。心の底から事の真実を理解している状態を指す。しかし言葉では言わないことを暗示している。
【fumi】

李一言老好人,也无所谓。尚仁义提醒丁伟:“今天他去你们店里文身,你千万别给他做,他真要文了身,‘老流氓的名分就坐实了。”

お人好しな李一言はあまり気にしなかった。「今日彼が君の入れ墨の店に行ったら、くれぐれもしてあげないでよ。彼は本当に入れ墨をしたら、おいぼれ女たらしあだなからもう抜けられなくなるんだ。」と、尚仁义は丁伟に注意した。


今天とあるが、”你千万别给他做”は将来への警告を言っており、これからを指している。
坐实;本当のことになる。犯罪など、悪いことを確認できたときに使う。
【xiao】

一听昔日同窗也对文身颇有偏见,丁伟不服气了。但还是好声好气地问:“今天,我就是要了解李一言为啥非要刺这五个外国字母?不弄懂这些字母的意思,我可不敢给他刺字。”

昔の同級生も入れ墨に偏見を持っているのを聞いて、丁伟は納得いかなかったが、落ち着いて尋ねた。「今日、俺は李一言はなぜこの5文字のアルファベットを入れなければいけないのかをどうしても知りたいんだよ。これらのアルファベットの意味が分からない限り、彼に入れ墨なんか絶対しないよ。」

不服气(bù fúqì): 納得しない、形容詞。納得や承認を示さない状態。
好声好气(hǎo shēng hǎo qì): 穏やかな口調、成句。丁寧かつ平和的な方法で話すこと。
【yang】
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