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自由と信頼

川田十夢のnoteの更新。冒頭にこんなことが書いてあった。

ラジオが好きです。インターネットも同じくらい大好きです。たったひとりの声を届けたり、聞いたり、読んだりすることができる奇跡的なメディアだからです。ここに残すのは、ラジオで話すためにまとめておいた原稿。放送に収まりきらないところがあったのと、鍋をかぶったおじさんについても補足したいところがありました。
川田十夢/「鍋をかぶるおじさんの自由」

J-WAVE 金曜日夜8時。INNOVATION WORLDのナビゲーターを務める川田十夢。そのコーナーのひとつにBrain laboratoryがある。頭の中の研究所、最先端の川田十夢の頭の中身をリスナーに届けるのだが4月15日の放送は普段よりも幾分真面目で真剣な内容だった。

前段階でゲストにソウル・フラワー・ユニオンの中川敬を迎え、川田十夢は熱い想いを語っていた。川田十夢が熱望しての出演だった。
なぜ、川田十夢は中川敬を必要としていたのか。

ひとつは中川敬のこれまでの活動の揺らぎのなさにあるだろう。一貫した姿勢を貫き通し、時代にどんな厄災が降り掛かろうとも中川敬は音楽を通して人々のところに向かって行った姿。名曲「満月の夕」は阪神淡路大震災の被災者たちのもとを回りながら生まれた曲である。

そしてその音楽は様々な要素を含み、実験的かつ冒険的な内容でトラディショナルな音楽を中川敬が解釈し咀嚼して新しいものとして産み出している。ソウル・フラワー・モノノケ・サミットとして被災地でチンドンをベースにアイヌ民謡、朝鮮民謡、明治大正の流行歌を高齢の被災者のために演奏し続けた。解釈することを恐れずに。否定されることも厭わずに。

川田十夢は中川敬との会話の中で以下のように語った。

中川さんの活動はニューエストモデルの頃から聴いてまして。中川さんが作る曲に対する信頼っていうのがあって。中川さんは態で音楽を作ってないと僕いちリスナーとして思ってて。僕プログラマーなんで何でも分析しちゃうんですけど。

密接なんですよね、言葉とメロディの関係が密接でこれ以上分解出来ないってところまで中川さんは一旦音楽を分解して曲を作ってる気がしてて。言葉と音が密接だなと聴きながら思うんですよ。

4月15日放送INNOVATION WORLDより

アーティストとして文化的態度の密度が、激しさが、誠実が惹きつけるのだと思う。佐野元春がかつてソウル・フラワー・ユニオンのことを「日本で唯一の日本のバンド」と形容していることを川田十夢が挙げていたが、その音楽がその経験から生まれた言葉と不可分なほど結びついていること。つまりその思想ごとを音楽にしているのだと私には思える。

つまり世界に降りかかるどんな厄災からも一切目を逸らさない。現象から目を背けない。彼の音楽への誠実はそういう過酷のなかにありはしないか。
ただ見るという苦行。目を逸らさず、目を背けずに現象を見るということは過酷なのだ。なぜなら冷徹な目も必要だからだ。

感情がなければ音楽は生まれないが、感情に振り回されるだけでは逆に人の感情に愬えることは出来ない。自身の身を切る冷静も同時に持ち合わせてはじめて悲惨の瓦礫にうたは響く

そしてそれは川田十夢にも共通するところであるだろう。この天才と名乗る開発者の目から見た戦争はどう映るのか。
開発者にとって戦争とは私たちの解像度とはずいぶん違う鮮明さと角度で見えているはずで、なおかつ川田十夢は表現者でもあるからその繊細も併せ持つ感性は切りつけられる痛みを伴うのだと想像する。

だからこそ。その姿に信用が置けるのだ。開発者としての姿勢に。必ず彼はその技術を武力に転用しないだろうということがわかるから。

真に精神的であり勇気を知る人というのは現象に目を背けない人のことだ。時代が季節が人々がどんなに辛くとも痛々しくとも見続ける覚悟が川田十夢にはあるのだ。
それを言葉に響かせる時に川田十夢の真実の音楽となる。そしてラジオから流れる。それが奇跡なのだし、真実のうたは自由をめざす!

川田十夢はその表現によって時代を翻してみせようとするだろう。何年かかっても自由を目指すだろう。中川敬との対話を今後進めていくのだと思うし、いまなぜ中川敬なのか。すごくよくわかる気がした。

ウクライナの人々に共鳴を。そして自由を。真実を。

以下、中川敬との会話が流れた後に『鍋をかぶるおじさんの自由』の内容をBrain laboratoryのコーナーで川田十夢が語った言葉である。時折、感情を横溢させながら。


4月15日放送分文字起こし)

Brain laboratory のコーナーです。毎週頭の中で考えることをお届けしています。今週は「反戦の狼煙」ということで選曲テーマにしていますので反戦についてお話したいなと思います。先に言っておくとものすごく真面目です、今週は。

中川さん(メインゲストの中川敬のこと)話す時、聴いてればわかるけどめちゃくちゃ面白い話の応酬もしたかったけど、今隣国で戦争が起こっている中しっかり話をしておきたいということがありましたので。このコーナーも毎回そんなに真面目な話をしてないですけども、今回ばかりは反戦の狼煙をあげたいと思います。

ラジオと言うのは奇跡だと思うんです、現代の。たった1人の声を届けたり、聴くことができる奇跡みたいなメディアですから、本来は。だから中川さんも、音楽を作るときは個人的な気持ちって仰ってましたけど僕も日々思うことがありますから。最小単位の自分の感覚、意見の話をしたいと思います。中川さんにそういう話を聞いたのに僕も話さないってのはフェアじゃないからね。僕も真面目にお話ししたいと思います。

ウクライナに関することで特にラジオで引っかかっていたことが、これは他局ですけど3月14日くらいに放送されていた、名前出した方がいいのかな。出さないほうがいいのかな、でも出さないとわからない。

テリー伊藤さんという方がウクライナ人のオクサーナという方とちょっと議論になった場面がありました。ウクライナ出身のオクサーナさんは日本で通訳されてる方なんですけどロシア侵攻が始まっている状態でテリーさんとしてはまず「ロシアには勝てないんじゃないか」「ウクライナ人が戦い続けることは避けた方がいいんじゃないか」っていうことを伝えたんです、番組の中で。

そしたらオクサーナさんは「ウクライナが戦わないでそのままの状態をただ見ていればいいんですか。その言い方はウクライナが戦争を続けたくて続けているように聞こえる」と反論しました。

そしてテリーさんは「そういうつもりはない、見捨てるつもりはなくて、ただウクライナの人たちの命が奪われていくのが見てられない」と言うんです。それにオクサーナさんは重ねて言うんです、「ウクライナの人を死なせたくなければ色なアクションを日本も含めて色んな国々がアクションをするべきでしょう」と。テリーさんは、これちょっとテリーさんの番組になっちゃったけどちょっと我慢してね大事なとこなんで。

結局ですね。「日本は武力を出せない。中国も出さない。アメリカだって世界大戦は絶対にしないとバイデン大統領も言っている。」とテリーさんは言ってたんですよ。で、オクサーナさんは「武力的なことはしなくていい。経済的な制裁をすればいい」と色んな話をしてたんですけど、やっぱり僕ら日本人と戦ってきたウクライナという戦ってきた人たちの接点というか同じように世界平和を思うけど、ちょっとやっぱり違うんだなということを思ったんですね。

それが引っかかってて。それからウクライナのことを歴史含めて考えて調べてるうちにひとつ分かったのはウクライナという土地が昨日今日始まったわけじゃないんですよね、略奪の歴史が。

下手すると1000年とか長い時間の中で自分たちの土地を守ろうと続けてきて自分たちの国が成立しているという歴史がまずあって。僕ら日本人というのは自由という言葉の角度が違うんだろうなと思ったんですね。色んなウクライナに関するキエフ公国あるいは色んな歴史的なものを見てるうちにこれはNetflixに上がっているドキュメンタリーでウィンター・オン・ファイヤーというドキュメンタリーがあるんですけど。

その中でね、なにかというと2013年に発生した学生デモが元になって当時はロシアの政権の息がかかったヤヌコーヴィチという大統領が政権を握っていました。

2013年それに対して国民たちはデモを起こすわけですね。広場を占拠する。九十何日にも及ぶ戦いだったわけですけど、結論としては1,000,000人のデモ。そして警察隊との諍い、でも国民たちは最後まで武器を持たなかったんですよ。

色んな戦いの中で例えばウクライナの人たちは広場を占拠した。占拠した後に市庁舎を占拠した。占拠して普通は逆上してる人たちだったら破壊をするでしょうけど、ウクライナの人たちはしないんですよね。市庁舎にピアノがあったら、ピアノを弾いているんですよ。そこで踊りまくってるんですよね。踊りまくってて、そこでワインとか飲みまくってる。

なんていうのか武力じゃない方法で私たちは屈しないというのを表現しているんですよ。

そういう国民に対して国がなにをしたか、国というより政権ですね。ヤヌコーヴィチをリーダーとしていた時に法律を変えましたね。選挙とか国民が唯一法律的に可能だったヘルメットとか自分の武装をしてデモを行うということを法律的に潰そうとしました。

それに歯向かう人は違法ということにしたんですけど、それでもウクライナの人たちはヘルメット被ったらいけないんだったら家の中の鍋を持ってきてかぶればいいって、みんな鍋をかぶってデモしてるんですよね。

それがユーモラスにも見えるんですけど彼らの中では皮肉であって批判なんですね。そういうデモをやって結局その政権が倒れたんですよね。

ヤヌコーヴィチが夜中に逃げ出して、デモもあって国民の迫力もあって逃げ出した、ということはあります。議会も正気を取り戻して次の大統領選挙に繋がっていく。非武装で国を取り戻したということがウクライナの国民には体験としてある。けども武力に武器を持たなければならなかったという現状もあるということだったんですよね。

これは最近の2013年とか2014年の話だけとってもそういうことがあった。と、いうことは簡単に戦うなとそういうことも言えないんじゃないかということがありまして。(*放送では声を少し詰まらせていた)

で、またソウルフラワーユニオンのことを思い出すわけです。ソウルフラワーユニオンの曲をお届けしましょう。ソウルフラワーユニオンで「うたは自由をめざす!」

(*ボイスオーバーで話すことを中川敬に謝りながら)戦い方は国ごとにあると思いました。色んな感じ方があると思いますけど僕は武器を持たずに鍋をかぶったというところに感動するし、最後まで武器を持たなかったという選択をしたウクライナと人たちに共鳴するし。ということを感じならがら僕は、やっぱりいい曲だなと思いながらお届けしてますけども。

僕はやっぱり技術を開発するからイノベーションというのは武器にもなっちゃうんだなと見てて思うんですよね。ドローンを改造した武器とかああいうのって完全にプログラムですからね。どうしたらいいんだろうなって思いながら戦況をみてますけどね。

僕、Excelが酔っ払うっていうプログラムを書いたことがあって。酔っ払っちゃうプログラムを秘密で仕込んでおいたら思うようにドローンが飛ばなくなるとか出来るかなと思いながら。

戦争とかの話になるとやっぱり大変大きなことだから一人称を大きくして話しがちだけどやっぱり国の向こうにはひとりひとり人間がいるわけで。僕は最小単位の自分の見解を持って、行動はすぐには出来ないかもしれないけど見続けるってことですかね。考え続けることは続けたいと思っているし、鍋かぶるのカッコいいと思っているし、うたは自由をめざす!なと思いますね。

聴き方が変わるでしょ、『歌は自由をめざす!』のこの曲も色んな想いが込められているなって思います。今夜はこんなBrain laboratoryのコーナーでした。


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