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小作品群

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断片的な作品を集めます。断片だけど世界はつながっている。
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桃ちゃんとの思い出1

これは幼少期の思い出である。私を育ててくれた伯母桃子との記憶を断片的に書いたものだ。いくつかの思い出をいくつかの文章にわけている。
昭和50年代の古ぼけた思い出の中にはグランドキャバレーで過ごした思い出も含まれる。
映画の中にその頃の自分をみて、その感想文のなかに紛れ込ませてもいる。雑多な文章をまとめてみた。

*広島旅行記
焼きたてのパンを思い出している。
たぶん、センチメンタルジャーニーが続い

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小作品群・1.前編

小作品群・1.前編

死がその冷たい指を死にゆく者の眼の上に置くとき、一つの視線が発する光は、いったいどこへ行くのだろう。バシュラール/『蝋燭の焔』

中村祈の毎日は短調だった。毎日のようにイ短調のワルツを練習していた。
母はピアノ講師だった。祈にピアノを教えてくれたのは母だ。
母は面長で色の白いのに赤に青い小さな花が散ったフワフワとしたワンピースを着て祈にピアノを教えた。
ピアノ椅子に座る祈の真横からは粉っぽい花の匂

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