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オリーブオイル沼にハマってイタリアへ

油で料理が変わる!と言ったら信じますか?



おなじ料理を
おなじ食材で
同じように作ったのに


仕上がる料理の味が違うことに不思議に思い、何が原因なのか思い巡らした時がありました。



散々考えた結果、
オリーブオイルしか思い当たらず。
気になってしかたなかったので、いろいろと調べていたら、当時イタリアで『オリーブオイルソムリエ』という資格がとれる講座があることを知り、イタリアへ飛んで学びオリーブオイルソムリエの資格をいただいて帰国しました。




オリーブオイルソムリエの資格を取る数年前にイタリアで料理留学をしており、それをきっかけに自宅でこじんまりと料理教室をしていたので、オリーブオイルの知識も料理教室に活かせる、その程度に思っていたのですが・・・まさかオリーブオイルの沼にドハマりするとはその時は思ってもみませんでした。




資格を取って帰国後、いろいろな場所でオリーブオイルの話をさせていただく機会に恵まれたのですが、話をしていくうちに、オリーブオイルのことも、そしてオイルを作りだすオリーブのことも、もっと知りたくなり、イタリアへ通い出しました。




オリーブオイルの展示会がある、と知ってはイタリアへ飛び、
オリーブオイルの勉強会がある、と聞いてはイタリアへ飛ぶ




飛行機が新幹線のように身近に感じ始め、勉強するための飛行機代は何とも思わなくなり、日本国内のオリーブ関連のイベントも、他の予定をキャンセルしてまでも通っていました。




そして、私を『オリーブオイルの沼』に誘い込むタイミングはそう遠くなく、訪れました。農園さんに直接訪問できるチャンスがやってきたのです。



サルバトーレさん(右)と家族


『オリーブオイルの沼』へヌルヌルと


初めて自分一人で訪問させてもらった農園さんは、イタリアのかかと、プーリア州にある、レ・トレ・コロンネ農園。今では高品質なオイルでオリーブオイルのコンテストでは金賞総なめするような、すごい農園になりましたが、私がこちらの農園と出会ったときは、まだその走りのような時期でした。




生産者のサルバトーレさんと初めて出会ったのは、イタリア。オリーブオイルの展示会でした。イタリアで行われていた食の展示会に何度もいくうちに、彼が出展しているブースを何度も見かけ、毎回他の農園のブースよりも、キラキラ輝いているように見えました。




毎回、そのキラキラに引かれるように近づき、つたないイタリア語で話しかけ、オイルをテイスティングさせてもらいました。



『あ~~おいしい!』


オリーブオイルソムリエとしては、私はまだまだ未熟な時期でしたが、それでも、色々なオリーブオイルをテイスティングしてきた中で、ダントツ彼のオイルは美味しかったのです。




記憶に残るくらい、清々しいグリーンの香り。口に含むと、ローズマリーのような芳香に、コーヒーのような苦味があり、後味で野生のルッコラのような辛味を感じるけど、鼻で感じたグリーンな香りが口の中でいつまでも香っており、森の中にいる感覚、とでも言いたくなるくらい、とにかく口の中が心地よかったのです。油であることを忘れさせるくらいに。



あ~誰か彼のオイルを輸入してくれないかな~・・・



そう思いつつ、毎年彼のオイルを展示会で見かけてはテイスティングしていたのですが、ある年の展示会でまた彼を見かけた時、どうしても農園に行ってみたくなりました。帰国まであと3日しかないタイミングにもかかわらず、迷わず彼に言いました。『あなたの農園に行ってみたい』すると、明後日ならいるよ、という答えが。





明後日。それは私にとって帰国前日。
しかも、その時彼と出会った場所は北イタリアの端っこ。彼の農園は南イタリアの端っこ!だけど私の日本への帰国時の空港は北イタリア。



異国の地で、1000キロを日帰り!?


1000キロを飛行機で日帰りしました



普通なら、諦めると思います。でもあの時の私は、それでも行きたかったので、その時泊まっていた知人宅に戻って知人に、『北イタリアから南イタリアまで、飛行機で農園を日帰りしたいので飛行機を探してほしい』と頼みました。



知人は、目を見開いて驚きましたが、私が『どうしても行きたい』としつこいので、驚きながらも航空券を探してくれました。すると、まるで用意されていたかのように、行きも帰りも1席だけ空いている飛行機がありました。



私は呼ばれたんだ・・・。



そう思いました。
迷わずそのチケットを購入し、約束通り農園を訪れると、今までテキストで学んできた『オリーブオイル』への知識は、全然役に立ちませんでした。テキストに書かれていた生産方法と全然違うやり方で彼がオリーブオイルを作っていることを知り、テキストをバイブルのように大事にしていた私は、この経験をきっかけに、テキストを見なくなりました。



農園に通うのが一番!



こうやって、私は展示会通いをやめ、農園通いが始まりました。
相変わらず新幹線感覚で航空券を購入し、地下鉄に乗る感覚で空港に向かう。滑走路で飛行機が加速していくと、心のボルテージが上がりまくり、もうワクワクしすぎて興奮しすぎて、飛行機の中で寝れませんでした。訪問させてもらえる農園が、学ばせてくれる農園ができたのです。心躍りました!



ローマの街中で想いを語るオタク



まだまだ流暢とは言えないイタリア語で、辞書を使いながら生産者のサルバトーレさんにいろいろなことを質問しました。オリーブの樹が立ち並ぶ畑の中で、車の中で、事務所で、ジェラートを食べながら、ワインを飲みながら・・・。




イタリア語が十分には分からず、彼が言っていることを100%理解はできなかったけど、イタリア人とは思えないくらい寡黙なサルバトーレさんは、私の質問にひとつずつ、静かに答えてくれました。


教科書通りのは行かない世界なんだなぁ~



私が教わってきたテキストが間違っていたわけではありません。でも土地にあったやり方があるのです。風の向き、湿度、樹の大きさ、土の状態、気温、雨の量、雑草の種類と性質、土地の傾き加減・・・その土地によって異なるのでテキスト通りにはいかないことが多々あるのです。




なので、彼から学ぶことはテキストには書かれていない、土地に住んだ人にしか分からない、彼の経験からくるものばかりでした。




そして、農園をお父さんから受け継いだ彼は、お父さんがこれまで続けてきたやり方、『質より量で儲けを出す』から『どの農園よりも品質の高さで勝負する』にシフトしました。




工場の機械を一新し、周りには持っている人がいないような最新の機械も導入し、いろいろと実験も繰り返しています。オイルに含有するポリフェノール含有量を最大にしてみたり、辛味を落ち着かせたり、苦味を強くしたり・・・。年に一度しかない貴重な収穫時期に、彼は絶えず実験をして品質を上げていっています。





私は生産者ではないので、生産には関わっていませんが、出来上がったオイルのブレンド率をサルバトーレさんと一緒に決めたことがあります。




世界中に発送されるオイルのブレンドを一緒に決めさせてもらえた時、本当に嬉しかったです。

私を頼ってくれた、信頼してくれた・・・

全然笑わない、無駄口もたたかない寡黙な生産者さんが、どこかで私を認めてくれていたのだと思うと、たくさん通わせてもらってよかった、と思いました。


インポーターになっちゃった!


今、私はサルバトーレさんが造り出すオリーブオイル、『アルモニア』を輸入して販売もさせていただいています。ハーモニーという意味を持つこの『アルモニア』は、私が展示会で感動したオイルです。
彼と取り引きを始めてから今日までの間に、インポーターとなった私を泣かせるような実験も、彼は沢山してきました。




オリーブオイルのブレンド品種をいきなり変更したり
ボトルの形状を丸型から三角型に変えたり




事前連絡もなく色々と変わるので、届いたオイルを見てから頭を抱えることもありますが、めげずに彼の実験とあくなき向上心に向き合っていきたいと思っています。




今はサルバトーレさん以外の農園のオリーブオイルも取り扱っていますが、それぞれの農園さんに毎年通い、サルバトーレさんとは違った考え方、想い、哲学に触れては感動し、感心し、オリーブオイルに囲まれた生活をしています。




そして生産者さんたちの想いを、日本のみなさんに伝えようと活動しています。それがオイル販売だったり、セミナーだったり、インスタ、note、youtube・・・いろいろな場所で好きなだけ語らせていただいています。



youtube オリーブオイルの中村さん


私はオリーブオイルの沼にハマりました。
まだしばらく抜けられそうにありません。
このオイル沼で色々な生産者のオイルを浴びながら、たくさんの人にこの楽しさと美味しさを届けていきたいなと思っています。

#ハマった沼を語らせて

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