わたしを取り巻く好きなものについて

わたしは、小説家の津村記久子が好きで、彼女の著書は発売後なるべく早く購入することにしている。
最近、筑摩書房のちくまQブックスシリーズから津村記久子の『苦手から始める作文教室』が発売された。
学生に向けた語り口で、作文の書き方を指南してくれる。おもしろい。
その中に、自分の中で気になったことはメモを取ると良い。とあって、早速P92にある「好きな感じを大切にする」という項目のカート・ヴォネガットの本の訳者 浅倉久志さんの文章が読みやすく心地よかった。ということをメモした。
津村記久子の書く文章が、わたしは好きなのだから、彼女が心地よいと感じる文章もきっと好きであろうと思う。
そこで、カート・ヴォネガットの本を検索してみた。検索結果一覧では、一目で訳者が誰なのかわからず、それならばと、わたしは浅倉久志で検索をした。
するとカート・ヴォネガットだけではなく、彼が翻訳した小説がずらずらと並んでいた。
その中に見覚えのある表紙を見つけて『おや?』と思った。
それはスティーブン・キングの『ゴールデンボーイ』だった。

『ゴールデンボーイ』はスティーブン・キングの恐怖の四季 春夏編で、映画『ショーシャンクの空に』の原作である『刑務所のリタ・ヘイワース』が収録されているので夏頃に買って読まずに積んでいた。
『ショーシャンクの空に』は名作と知りながらも、なかなか観る機会がなく、ようやく地上波で放送していたのを録画して観た。
驚いた。大好きな本『モンテ・クリスト伯』に通じるものがあったからだ。

『モンテ・クリスト伯』はかつて販売の仕事をしていた時に、懇意にしてもらっていたお客さまから薦められて手にした本だ。
長い長い物語の末に、最後の1ページをめくった先にあった一文に衝撃を受け、へこたれそうな時や、負け組だと絶望するような時の心の支えにしていた。

思いがけず、津村記久子の『苦手から始める作文教室』から本と映画がツルツルと頭のなかで繋がっていった。

自分を取り巻く好きなものや、心の支えになるようなものは、脈略がないものは1つもなく、実はあずかり知らぬような思考の地下で繋がっているのではないかと思う。

わたしは今、体調を崩し休職という選択をしなければならなくなった。現状は受け入れがたく、下を向く日々だったが希望という言葉を思い出した。

これからも、おそらくわたしは本や映画に助けられる。

それらはいつも、繋がりを持ちながら常にわたしの側にあるのだと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?