北欧、北極圏と気候危機
地球全体の気温上昇レベルと比べて、スウェーデンでは気候変動の影響が2倍強くなっている。北極圏の海の氷は1979年と比べて41%も減少しており、今週からストックホルムの北方民族博物館では「氷が溶けていく時」という大型企画展示も始まった。
日本の超大型台風に気候問題の危機を感じる人もいるだろうが、北欧に住む私がじわじわと感じる気候の変化と脅威に関してまとめてみようと思う。
「ただ今の地球」を正しく把握しよう
スウェーデンの大手ニュースメディア、ダーゲンズ・ニュヘテルが「気候問題の判断基準となる「今この瞬間の気候に関する数字」特別サイト「Klimatet just nu(ただ今の気候)」を開設した。(タイトル画像はサイトからの転載)
気候変動など起こっていないと主張する学説やフェイクニュースに対応するため、まずは誰もがファクトで現状を正しく把握することを可能にする試みで、気候危機にまつわる重要な指標はこのサイトで刻一刻と更新される。
サイトは購読者以外にもオープンになっているので、興味があればページを覗いてみてほしい(今、日本からもアクセスできることも確認した)。わかりやすいインフォグラフィックスで私たちが一番気にするべき大切な指標がまとめられている。(サイトはスウェーデン語だが、最近またスウェーデン語→日本語のグーグル翻訳がよくなったので、概要はわかると思う)
ちなみにダーゲンズ・ニュヘテルは元々は新聞社なのだが、この先も新聞社と呼ぶには無理がありそうだ。現にこの企画もネットで展開することに意味があり、紙面で表すのは難しいと思う。
気候の変化は北極圏で強く現れる
ここで指標として取り上げられているのは以下の7つの指標だ。
二酸化炭素排出量 (10年前と比べて7%増加)
気温の変化 (産業革命以前と比べて1.2度上昇)
海水レベル (1880年と比べて25センチ上昇)
北極圏の海の氷の量 (1979年以来41%減少)
エネルギー発電全体における化石燃料を使った発電の割合 (87.1%)
次の国連気候会議までの残りの日数 (52日)
最大1.5度の気温の変動に抑えるために、気候変動ガスの排出を完全に止めるまでに残された時間(8年81日12時間58分44秒・執筆時)
それぞれ非常に重要だが、スウェーデンに住んでいる私が特に反応するのは、地球全体で1.2度上昇した気温の変化に比べてスウェーデンでは同時期に2.16度上昇していることに加え、北極圏での氷の溶け方の速さである。
スウェーデンのニュースを毎日紹介している私のブログでも、溶け続ける地表を覆う氷の影響で、今年に入って氷河のお葬式が行われたことやスウェーデン一高い山の順位が変わってしまったことを取り上げた。
地球の端にいるからこそ、なにかが大きく変わろうとしているのをひしひしと肌身で感じるのかもしれない。
それなのに、この変化は日本を襲う大型台風のように暴力的な感じはなく、なんとなく窯で茹でられているカエルの話を連想してしまう。天気もよくて暖かい日がふえたねー、と喜んでいたら世界中がとんでもない事態になってしまっていた、というような……
氷とともに溶ける北方民族のアイデンディディ?
そんな現実的な気候危機問題を、氷の世界で生きてきた民族のアイディンディと共に紹介する「北極で氷が溶けていく時(Arktis - medan isen smälter)」というタイトルの特別展示も10月10日からストックホルムの北方民族博物館で始まった。
3年の年月をかけて準備されたこの展示では、長らく雪と氷の世界である北極圏で暮らしてきた人々の日常や、氷河がどんどん溶けてい生存が脅かされる生き物のこと、さらに北極圏の環境が大きく変わっていくことでこの地で暮らす人たちのアイデンティティがどう変わっていくのか? にも言及しているそうだ。
展示は来年(2020年)の5月末まで開催されているそうなので、私もストックホルムを訪れる機会をぜひとも作って見に行きたいと思っている。日本から北欧方面にこられる方も機会があればぜひこの博物館に立ち寄って、気候危機を北極からも考えてみてはいかがでしょう。
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