赤ちゃんを見くびるな

妊娠38週の胎児の力は想像をはるかに超えます。
出産予定日まであと2週間。
37週からは「正産期」といい、赤ちゃんはいつ外の世界に出ても生きていける準備が整っているので、あとはその日を待つばかりです。

胎動を感じるようになったのは20週ごろだったでしょうか。
自分の腸の動きと判別できないくらいの頼りない感触だったものが、「これは赤ちゃんの動きに違いない!」と確信できる強さになりました。
エコー検査のときにその姿を目にしてはいたものの、「本当にここに生きものがいるんだ」と体の中で初めて実感するうれしい瞬間です。

それからというもの、赤ちゃんが動くのを感じると、無意識的に同じあたりをポンポンと軽く叩き返したり、なでたりするようになりました。
すると、偶然なのか理解してなのか、時々けり返してくるように感じます。
うふふ、もしかしたら、おなかの壁越しにコミュニケーションを取れているのかも。

それと同時に、ふと一抹の不安がよぎります。
赤ちゃんは構ってもらうのがうれしくてけり返しているの?
それともうっとうしくて「やめて!」と言っているの?

インターネットで調べてみると、「赤ちゃんがけってきたら、同じところをタップして返事をしてあげましょう」といったアドバイスは出てきます。
でも、赤ちゃんがどう感じているかについて科学的に検証したような、確かな情報は出てきません。

24週ごろになり赤ちゃんがさらに成長してくると、おなかにものが触れるか触れないかの微細な刺激にも敏感に反応するようになりました。
体重1kgほどのまだまだ発達途上の赤ちゃんでも、すでに感覚が鋭くかしこいのです。
だからむやみに刺激を与えすぎず、なるべくそっとしておいてあげた方がいいのでは?

しかし、28週ごろにはそんな心配も薄れてきました。
なぜって、赤ちゃんの体は急激に大きくなって筋力もついてきます。
活発に動き回るのが気になって、他事が手につかなかったり、けられて痛みを感じることが増えていったからです。

わたしが腰を下ろしたり、食事したりすると、太ももや胃が子宮を圧迫して居場所がせまくなるのか、赤ちゃんはものすごい力でグーっと脚を伸ばして主張してきます。
三角の足形がくっきりと浮かびあがり、今にも突き破って出てくるのではないかと恐怖を覚えるほどです。
こうなるとさすがに痛すぎて、こっちも押し返さないとやってられません。
赤ちゃんは非力な存在なんかじゃないのです。

せまいせまいおなかをシェアする共同生活にも終わりが近づき、もうすぐ同居人はここを出て、自分の人生を歩みはじめます。
そう思うと少し寂しくもあり、また並んで歩く日々が楽しみでもあります。

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