ADHDの人が長時間の集中を必要とする面倒な作業に取りかかる方法

ADHD(注意欠陥多動性障害)を持つ人は、長い時間のかかる作業になかなか集中できませんよね。

集中が続かないと余計に時間がかかるので、その作業が面倒に感じてしまい、取りかかることさえできず後回しにしがちです。

また、ADHDにはある状態から別の状態にスムーズに移行できないという特性もあるため、取りかかろうとしてもエンジンがかかるまでに時間が必要です。

やろうと思ったことができないとイライラしたり、自信がなくなったり、他の人に迷惑がかかって申し訳なく思ったりしますよね。

ADHDとASD(自閉症スペクトラム障害)を持つわたしもその傾向がかなりあります。

今回は、やるべき作業に取りかかれるように、わたしがいろいろと試行錯誤して、比較的上手くいっている方法をご紹介します。

人によって合う方法は違うので、合いそうなものから試してみてください。


1.邪魔になるものをシャットアウトする


人が通る、スマホに通知が来るといった、ちょっとしたことで気が散ってしまうADHD。

できる限り、取りかかる作業に必要なもの以外のものを排除して、集中しやすい環境を作るのが第一歩です。

音に気を取られるなら耳栓を利用したり、人の動きを目で追ってしまうなら視界をさえぎるものを置くなど、集中の妨げになるものを減らしていきましょう。


2.取りかかりの儀式を行う


毎日同じ行動を取ってから作業を始めるようにすることで、徐々に条件付けができ、葛藤することなく作業を始められるようになってきます。

毎日机を拭いて用具を並べる、コーヒーを淹れる、アロマを焚く、窓を開けるなど、自分の作業環境を快適にする行動や、やる気の出る曲を聞くというのもよいでしょう。


3.大きな作業を複数の小さな作業に分割する


大きな作業を前にすると、終わりが見えず面倒になって、取りかかれなくなってしまいます。

一見複雑そうな仕事でも、より細かいタスクに分割することができます。

たとえば、レポートを作成する場合、テーマを決める、大まかな構成を決める、各パートの内容を考える、必要なデータや素材を集める、レポートを書く、体裁を整える、という具合です。

その一つ一つを見れば短い時間でできそうなことなので、始めるためのハードルが低くなります。

それでも大変に感じる時は、分割した作業をさらに細かく分けます。

また、わからないことがあるためにむずかしそうに見えている場合もあるため、その時は先に疑問を解消して、見通しを立てられるようにします。


4.実際にやったらどれくらい時間や労力がかかるか冷静に考える


何かをやりたくない、面倒だと感じている時は、実際よりも作業の量や難易度を過大評価している場合があります。

一つの大きな作業を分割した小さな作業は、それぞれどれくらいの時間や労力がかかるものなのか見当がつきやすいので、冷静になって考えてみましょう。

すると、最初に思ったほど大変ではないことに気づくことが多いです。


5.まとまった時間を取り、いくつかに区切る


細かく分けた作業を細切れの時間を使って処理できればそれでよいのですが、ADHDの人の場合は集中するまでに時間がかかり、一度集中するとすぐに切り替えにくいという特性があります。

そのため、時間のかかる作業にはある程度まとまった時間を取った方が効率がよくなります。

ただ、たくさん時間があると、まだ大丈夫だと楽観的になってしまうのもまたADHDの特徴です。

そうならないように、たとえば1時間ごとに区切ったり、午前・午後に分けたりして、各コマの中でどこまで進めるか目標を設定しておくとよいでしょう。


6.その作業をやり遂げた時の効果をイメージする


その作業自体ではなく、それが何のためにあるのか、それをやり遂げるとどんないいことがあるのかに目を向けるのも、やる気を上げるのにいい方法です。

その作業をすることで新しい知識を身につけ、腕を磨くことができるとか、人が喜んでくれるといったことです。

また、やり終えた時の爽快感やほっとする気持ちをイメージするのも効果的です。


7.やった後のごほうびよりやり始めるごほうび


やった後のごほうびを作るとよいと言われますが、ADHDにその効果があるのはすぐに終わる作業の場合だけです。

時間のかかる作業では、その後にごほうびがあっても遠く感じてしまい、あまりやる気アップにつながりません。

かわりに、やり始めるごほうびを作ると、取りかかることがうれしいことになり、取りかかりやすくなります。

そして、一度取りかかればその後は集中しやすいので、続けることができます。

ごほうびは、好きな飲み物を飲む、飴をなめるなどの作業と同時にできることにするか、1ページだけ好きな本を読むなど作業の前に短い時間でできることにします。

ただし、自分が依存的に好きなものにしてしまうと逆効果になることがあります。

ごほうびに注意が向きすぎたり、常にそれがないと作業に取りかかれなくなることもあるため、ちょうどよいレベルのごほうびになるように工夫が必要です。


8.ちょっとした作業は後回しにしておく


メールを一通出す、電話をかける、資料を届けに行くなどのすぐに終わる作業は最初に片付けてしまいたくなりますが、あえて後回しにします。

一番エネルギーがあるときに時間のかかる作業に取り組んだ方がよいからです。

そして、時間のかかる作業への集中力が切れてきたときに、休憩がてらすぐに終わる作業を片付けます。


9.やりかけてから作業を終える


一つの作業が完了したとき、切りよくそこで終わりたくなりますが、他にも長時間かかる作業があるなら、少しだけやり始めてから終わる方がよいです。

ADHDの人は一つの状態から次の状態に移行するのが苦手なので、これを利用して作業モードになっているうちに新しい作業に取りかかってしまうのです。

そうすると、次にその作業の続きをやるときにはすでに途中までやってある状態なので、少し取りかかるのが楽になります。


とはいえ、そもそもやりたくないことには取りかかれない


集中力の必要な作業に取りかかるコツ、取り入れられそうなものはありましたか?

本やウェブなどで何度も調べている方には、目新しいことはなかったかもしれません。

わたしも魔法のように変わる方法を心のどこかで求めていましたが、結局このように基本的なことを押さえていくしかないんですよね。

劇的に集中できるようになる方法があるとしたら、それはやりたいことをやるという方法です。

どんなに工夫しても、やりたくないことや意味を感じられないことにはやはり取りかかる気が起きませんし、すぐに気が散ってしまいます。

最初は楽しくなかったり、やる意味がわからないようなことでも、続けるうちにできるようになって楽しくなってきたり、やる意味がわかってきてやる気が出ることもあります。

ですが、もし何ヶ月も何年も続けていて面白みを感じないのであれば、それは本当はやりたくないことなのではないでしょうか。

もしそうであれば、やりたくないことに集中する努力をするより、それをやらずに済む方法を見つけ、やりたいことをできるようにしていく。

自分の理想の状態に近づくには、その方が遠回りしているようで実は早いかもしれません。


(この記事は2018年に書かれたものです)

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