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小説【博物少女 ヒロメリエ!】#1-05

第1話 SCENE 2-③

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 「お目覚めになられてほっといたしました。どうぞ」
  少女は私にペットボトルのお茶を渡してくれた。
  受け取りはしたが……とても飲む気にはなれない。
  彼女の非現実的な容貌で忘れていたが、そもそも私は
  謎の全身黒尽くめの人物に拉致られるという、
  より非現実的な事件に遭いここにいるのだった。
   
  (まさかこの少女が…?)と 一瞬思案したが、
  まだ同一人物と断定するにはあまりにも情報が不足している。
  が、何かしらあの謎の人物に関連性があると見て間違いないだろう。

 「あの、キミは…?」

 「ハッ はわわわ……、た、たいへん申し遅れました!」

 (はわわわってうろたえる人本当にいるんだ……)
  はわわわした少女は息を整え姿勢を直し、私に一礼して


 「わたくしは、名前をすずりと申します。
  どうぞお見知り置きのほどよろしくお願いします」
 

  ずいぶん丁寧な自己紹介をしてくれた。
 
 「えっと、すずりさん、ですね」

 「……! はいっ すずりでございます!」
  丁寧な言葉使いとは対照的にころころ変わる表情は
  見た目相応というか子供らしくて見ていて飽きない。

  しかしこのすずりと名乗った少女、私が返答するだけでニコニコして
  一体なにがそんなに楽しいのかまったく理解できない。
  もしかしてこれは、学校で女子生徒数人のグループが先生と
  会話をかわすだけで1人が必ず「マジうけるw」と
  口走る現象に近いのだろうか。

 
 「それで……私はなぜここにいるのでしょうか?」
 「えっ?」

  私からすれば当然の問いかけなのだが、
  すずりはどうしてそんな事を聞くのかと
  すこし困惑している様子だった。
  これまでのやり取りから彼女は私がここに
  運び込まれた理由をある程度知っていると思ったのだが。

 「……あ、えっと。それはですね───」
 「その疑問に関してはボクがお答えするわ。」

  突如ホールの2階から聞き覚えのある声が鳴り響いた。
  

 <SCENE3に続く>

 <前回>


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