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#ライトノベル

小説【博物少女 ヒロメリエ!】#1-06

第1話 SCENE 3-① --------------------------------  「久しぶりね? 時間にしたら一時間も経ってないけれど。」   先ほど道端で私の帰宅を妨げた黒コートの人物が二階部分の   階段の手すりに軽く手を掛け、こちらに声をかけた。  「それに、ここにくる前にもちゃんと伝えた気がするのだけど」  「“博物館の館長になった!”………とね」」   再び大声を出され、耳がキーンとなった。   しかもここは大理石で囲われた広く閉鎖的な空間。

小説【博物少女 ヒロメリエ!】#1-05

第1話 SCENE 2-③  --------------------------------     「お目覚めになられてほっといたしました。どうぞ」   少女は私にペットボトルのお茶を渡してくれた。   受け取りはしたが……とても飲む気にはなれない。   彼女の非現実的な容貌で忘れていたが、そもそも私は   謎の全身黒尽くめの人物に拉致られるという、   より非現実的な事件に遭いここにいるのだった。       (まさかこの少女が…?)と 一瞬思案したが、   まだ同一

小説【博物少女 ヒロメリエ!】#1-04

第1話 SCENE 2-② --------------------------------  少女は振袖を着ていたのである。 しかも子供が着るには若干不釣り合いな真っ黒な振袖だ。 厳密にいえば生地や帯部分にところどころ金色や銀色の模様が 施されてるが、それでも圧倒的に黒い部分が衣服全体の面積を占めている。   少女の金色の髪の毛と白く透明感のある肌が 漆黒の振袖で一層際立って見えた。    カラン コロン……   小気味よい下駄の音が大理石に反響する。 その長い髪の毛を

小説【博物少女 ヒロメリエ!】#1-03

 第1話 SCENE 2-① --------------------------------    気がつくとそこは、どこかの建物のロビーのようだった。   天井の高い開放的な空間の脇に置かれたベンチに私は寝かされていた。     ゆっくり体を起こしたところ、幸い体に痛みなどはなかった。   自分の身に何が起きたのか理解が追いつかないまま、ひとまず   周囲を見渡してみたものの、目に入ってくる景色に   私はまったく見覚えがない。   おそらく、ここはどこかのエントラ

小説【博物少女 ヒロメリエ!】#1-02

 第1話 SCENE 1-② --------------------------------    謎の人物と黒服のイケメン達は帰路につく私の行く手をも阻んでいた。   こんなに横に広がって、私以外の人が通りたいときはどうするのか。   いや、もしかしたらすでに後ろから歩いてきた人たちはこの異質な   状況を目の当たりにして咄嗟に迂回しているかもしれない。     できることなら私も今すぐ踵を返して別ルートから帰宅し   ガッチリ施錠をして警察に通報したいところだが、

小説【博物少女 ヒロメリエ!】#1-01

 第1話『異業種転職したら【館長】だった件』 SCENE 1-① --------------------------------   「それじゃあ、明日から早速働いてもらうから」   その人物は私に向かって採用の通達をした。     しかし、私はまったく嬉しくなかった。なぜなら    私は決して中途採用の面接を受けていたわけではないからだ。  『ありがとうございます! 御社のため精一杯がんばります!』   などの生真面目なリアクションをするわけでもなく  (よかった