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なぜ海外大生の就活情報不足が起きているのか【600名の声から解説】

こんにちは。ひろまさと申します!

私は台湾を拠点に海外大生コミュニティを創業・運営しており、現在は600名を超えたコミュニティメンバーが在籍して下さっていますが、

私が発足した3年半以上前からずっとある、海外大生にとって永遠のテーマとなるであろう課題。

それは、「日本での就活における圧倒的就活情報不足」です。

私が台湾の大学に進学する前、つまり4年半前から現在まで1,000名を超える海外大生と実際にお話ししてきた中で、日本での就活が本当に苦しく、自分の前で泣き崩れる方も少なくありませんでした。

ここ2,3年で我々の事業を通し、全く情報がない状態から実際にインターン機会の獲得や内定をいただいた海外大生を見ていく中で、私も当事者として常に感じていた圧倒的就活情報不足は、極めて顕著なものです。

今回はこのテーマについて、なぜこの問題が起きているのか、「海外大生」と「企業側」の両プレイヤーにおいて、実際のヒアリングやコミュニケーションの内容を元に解説してみます。


海外大生から見る就活の課題

まずは海外大生から見た、就活の課題を書き出してみます。特に実際の海外大生数百名とお話ししてきた中で見えてきた、大きな課題を紹介していきます。


①縦や横の繋がりが不足している

これは物理的な距離が大きな要因です。各国各地域、日本人留学生が点在していることによって縦や横の繋がりが起きにくく、結果情報が出回らないといった問題があります。

そこで私は、まずは情報交換が起きなければ海外大生の就活リテラシーは向上しないだろうと考え、コミュニティを発足しました。オフライン交流会やご飯会で海外大生が集まり、留学相談や大学生活の悩み、就活状況の共有が行われ広まっていきました。その他様々な施策を打ち、結果現在は600名を超えたと捉えております。

また、現在各国(特にUS)でも学生団体やコミュニティは増え、新卒人材エージェントや企業が運営している学生団体もあり、徐々に「繋がれる」チャンスは増えてきていますが、特にエージェントや企業が運営しているコミュニティは「何か裏があるのではないか・・・」と考えてしまう海外大生がいることも事実です。それは元々、そういった環境がない中で急にコミュニティの話が出てきても比較対象がないため怪しんでしまうかもしれません。「どうやったら彼らの信頼を勝ち取ることができるのか」が非常に重要なキーワードとなってくるでしょう。

台湾やアメリカなど日系企業の現地法人が多くある国ですと、駐在員がよく居る場所や居酒屋、バーなどに海外大生は通い、そこで駐在員と交流し就活や企業、業界の話を聞かせていただいたり、その居酒屋やバーでアルバイトを始める海外大生も少なくありません。結果駐在員の影響を受け将来駐在がしやすいような業界や企業を選択肢として重視する海外大生も多いです。


②自分に合うインターン時期やフルリモートインターンの機会が少ない

海外大生の卒業時期は基本的には9月入学6月(or 1月)卒業です。(韓国だと3月入学2月卒業)日本の大学生は4月入学3月卒業、そして4月に就職していきます。そのため、海外大生はテスト期間が被っているにも関わらず、半強制的に日本での就活をしなければいけない状況となっているのが現状です。

私の周りですと、夏休みの7-8月で日本に帰国し、オンラインかオフラインの1-3daysインターンに参加している方もちらほらいますが、夏休みは留学先の現地で授業の単位を取るために残って活動している方や、①の理由で夏休みに入るまでインターンの情報が全く無く、帰国時期に「どうやらインターンをする必要があるかも」と焦り、一から自分の力で探しインターンを申し込むが選考から落ちてしまう、のような方は少なくありません。

ここで補足させていただきたいのが、アメリカやカナダなどの大学に通っている海外大生は、海外大生の中でも比較的就活リテラシーは高いと言えるでしょう。近年はボストンキャリアフォーラムを中心に、北米の海外大生のための就活サービスや就活イベント、就活コミュニティは近年増加傾向にあり、また、アメリカの大学出身の社会人の方々も増えているため、彼らは外コンや外銀、メガベンチャーと言われるIT企業で夏休みに1-3daysインターンをしている方は多いです。

ただ、フルリモートインターンの機会はほぼ無いと言っても過言ではないでしょう。日本国内でのフルリモートインターンの機会は近年多くなってきましたが、海外在住の海外大生が「フルリモート大歓迎!」という求人を見て応募し、カジュアル面談をしてみると、最初の5分で「海外からのリモートは不可です」と言われるケースがほぼです。

こちらは実際に企業にヒアリングしてみた結果、理由がおよそ3つあることが分かりました。1つはセキュリティ面です。海外で社用PCを使うもしくはSlackや各ツールに招待し業務をしていただくとなっても、海外という目の届かないところでの盗難や紛失、また、フリーWi-Fiに繋げてしまうことによるハッキング被害など、対応コストが高くなってしまう恐れから海外からのリモートを推奨しない企業は多いです。

2つ目は、労務面です。労働契約や労働法の適用範囲の問題、税務面での居住地国と日本の二重課税の問題や、税務申告の複雑化など、管理コストが高くなってしまうという問題があります。

3つ目は、業務効率の問題です。海外にいるとリモートワーカーの進捗状況や成果の評価がより難しくなります。チームメンバーとの信頼関係の構築もより困難となり、やはりオンサイトでのコラボレーションが難しくなるため、業務の進行が遅れる可能性もあると考える企業も少なくないでしょう。


③企業説明会や就活イベントとの時間が合わず、参加できていない

理由は②と似ているのですが、海外大生の大学生活に合った企業説明会や就活イベントがあまりありません。ここはもう少し細かく説明させていただくと、海外大学を卒業するのは意外と困難でして、本当に勉強ばかりの大学生活となっています。first languageがそもそも違うかつ、カルチャーフィットや授業に慣れるまでの時間、授業内容を予習復習しないとついていけないという理由で日を跨いでも勉強し続けるなど、大学生活は非常に勉強漬けな毎日です。

時差も日本とギャップがあり、日本の大学生向けに作った内容と時間などの企業説明会は、かなり参加しづらいのが現実です。もちろん、就活の優先順位を上げて就活イベントに参加している方もいますが、体力的にもかなり削る中での参加となっているでしょう。

結果、企業の人事との接点が少なく、カジュアル面談さえできていません。YouTubeやテキストコンテンツで就活情報を集め就活を始めていきますが、実際にインターンや企業説明会、就活イベント、カジュアル面談の参加をあまり行なうことができず、「一次情報を持っていない状態」で就活をするため、自分の中の理想で就活を行い選考落ちをたくさんしてしまう海外大生が多い状況となっています。


企業から見た海外大生人材とは

先にお伝えさせていただくと、企業から見た海外大生はmustというより、nice to haveな人材であるということです。私がこれまでお話しさせていただいてきた限り、海外大生が喉から手が出るほど今すぐ欲しいといった企業はあまり見たことがありません。大手の外コンや外銀、商社などは一定数の英語力が求められたり、プロジェクトチームがグローバルメンバーだったりと、海外大生のニーズが表面的にあり分かりやすいですが、その他の業界はあまり海外大生の採用に熱心な企業はあまり見かけない印象です。


①”言語” は企業にとって最重要ニーズではない

これは海外大生あるあるなのですが、外国語を話せることが就活での強みになることはありません。というよりも、その人材が自社でしっかり活躍できる要素やポテンシャルがあるか、カルチャーフィットできるかどうかといった部分が見られます。

言語はあくまでも手段であり、その言語を使って仕事をするため、外国人で日本語を話せる方を雇うでしたり、実績やポテンシャルがある方を雇ってそこから外国語力を養う、もしくは近年AIの大きな進歩により、業務内容によってはAIで外国語はカバーできるようになるかもなど、少なくとも「外国語話せる→採用直結」となることは難しいでしょう。

海外大生は外国語を話せるというよりは、なぜその国だったのか、留学先でなぜそれを勉強したのか、どんなことに取り組んでいたのか、どのようにしてその国へのカルチャーフィットを達成できたのかなど、外国という異文化の中でどのように生活してきたのかの過程を評価いただくことがあります。

これ自体は私も身をもってどれも大変だったと痛感しており、誰もが苦労をしているだろうと思います。しかし、日本の大学生も日本で実績やガクチカと呼ばれるものに熱心に向き合ってきた方もたくさんいて、特にMARCH以上の大学になると、そのような実績をある程度積みやすいような環境がすでに整っているというのも事実です。

これらから、大学生活での過程から自社にフィットするかをどの人材もフラットに見るため、必ずしも言語が企業にとっての最重要ニーズではないということです。


②海外部署立ち上げのフェーズにあたる企業

分かりやすいのは、従業員100名規模までは経営者がほとんどの決裁権を持っており、海外進出も意識し始めるようなケースは少なくありません。そうなった時に海外大生の新卒人材が欲しいと思うのか。

この答えも難しいと言っていいでしょう。なぜならこの規模だと、まだ新卒人材を扱えるような社内の教育環境も整っていないですし、進出したい国に知見があったとしても、まずはコンサル会社にマーケット調査を依頼し、そこから海外部隊を作るために転職者の採用をするなど、属人性とスピード感がある程度求められるフェーズであるからです。

ただ、この海外進出フェーズでは今までのヒアリングの時点で、海外大生が求められなかったわけではありません。まずは検証段階のところで海外大生をインターン生として紹介させていただいた事例もいくつかありました。しかし正社員としては、社内の教育環境と教育コスト、スピード感を吟味すると、現地の人材を雇ってアクセルを踏むといったところでしょう。


③上場後すぐ-時価総額1,000億弱の企業

こちらは業界や企業によりますが、この規模の企業は社内教育も整ってきており、新卒人材も最近始めたといった企業が多いフェーズかと思います。まだこれからアクセル全開で圧倒的成長を見据えている時期です。このフェーズですと、まだ新卒人材に対するアセットが貯まっていないため、採用予算も大きく張ることは難しいです。よって海外大生にまで目をかけて採用活動をする、といったことは起こりづらいでしょう。現にこのフェーズの段階の企業とお話しさせていただいても、海外大生人材という部分でお断りされるケースが多いです。


④時価総額1兆円を超えている企業

このフェーズになると、事業のアセットや海外支社の展開、教育環境など潤っており、再現性を持った業務を行うことができます。新卒人材に対するアセットもしっかり持っており、人事部の拡大化や採用予算も大きく張ることができます。よって新卒人材は、その業界を代表する企業に日本の大学生も海外大生もエントリーを提出しています。

つまり特別凝った施策をしなくとも、自分たちが求めている新卒人材像に当てはまる人材の確保であったり、海外大生を採用しようと思えば外部と連携しなくとも資本を使って直接アプローチすることが可能です。実際に各国の大学に直接出向き採用活動をしている企業や、ボストンキャリアフォーラムなどに出展している企業も多いです。よって、ここで主に北米に留学している海外大生は就活をしています。


北米以外の海外大生はどうなのか

これまでを通して簡単にまとめると、ベンチャー企業は海外大生の採用をあまり行っておらず、非常に大きい規模となる企業は自社で直接海外大生を採用しに行っていることが分かりました。

しかし海外大生はボストンキャリアフォーラムに行くという方が多いですが、北米に留学している海外大生は参加している方は多く、他の地域であるアジア圏やオセアニア圏(中国や台湾、マレーシア、シンガポール、オーストラリアなど)に留学している海外大生は物理的な距離の関係、大学の授業の関係、金銭面の関係でボストンキャリアフォーラムに参加できる方は少ないです。

よってアジア圏・オセアニア圏・ヨーロッパ圏の海外大生のための就活サービスや就活イベントは特に無いといった状況です。特にアジア圏への留学は近年盛り上がってきている中で、卒業生の母数がまだ少ないためお手本となる先輩がいないかつ、企業側もアジアの海外大生にあまり気づいていないと言うのもあるでしょう。東京キャリアフォーラムもありますが、企業説明会やカジュアル面談もあまり参加することができていないですし、各業界や各企業の深掘りもまだ足りないと感じる中、いきなる大規模な就活イベントには参加しづらいという声も非常に多いです。


最後に

日本ですと、「優秀人材」と呼ばれる新卒人材の取り合いが起こっている中、海外大生はそもそもガクチカや大学外での活動、インターンや就活情報の収集が難しい環境のため、日本の大学生と共に就活をするとなった際、スタートラインからマイナスのような現象が起きてしまっています。

現在私は、海外大生のための就活環境構築を行っています。私が運営しているコミュニティではこれまでも、そしてこれからも彼らの就活環境をよりアップデートし、日本の大学生と変わりない就活環境を提供できればと日々取り組んでおります。

今回はざっくりお話しせていただいた部分もあるので、なぜそれが起きているのか?具体的な事例もテーマに、今後はより深掘る記事も出せていければと思います。

海外大生の就活環境をアップデートすることに協力していいただける企業様がいらっしゃいましたらご連絡いただけますと幸いです。また、海外大生で就活に困っている方も、ぜひご協力させていただけたらと思います。

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