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新NISA<人を幸福にする投資


このところ、新NISAの導入がテコになっているのでしょうか、株価が高騰しています。そして株式投資や投資信託への関心が高まっているようです。もしかしたら、あなたもそのような人の一人かもしれません。でも熱狂から距離を置いて、ちょっと冷静になって、投資というものを考えてみたいと思います。


ここでカギとなる本質的な質問をシェアしましょう。

キークエスチョン:そもそも、人は、なんのために投資をするのか?

お金を得ることができれば、好きなことを好きな時にできるようになる。高い車を買う。マンションや戸建住宅を買う。高価な衣服を高級店で買い込む。投資で得たお金をさらに投資につぎ込んで、もっともっとお金持ちになる。でも、投資する動機はいろいろありますが、共通することは投資によって幸せや幸福になろうとすることではないのでしょうか。

幸せの要素


さて、近年の研究によると、幸福をもたらす要素について重要なことが明らかになっています。所得、学歴、健康、人間関係、自己決定。これらの5つの要素のうち、人の幸福を決めるのは一体どれでしょうか。

自分で決定してマッチョな人生を歩み、高学歴でいい会社に入り高い給与をゲットしている人から見れば、自己決定→学歴→所得というようになるかもしれません。

また、大切な人との関係性を重視している人は、人間関係→健康→所得なのかもしれません。

お金が大好きな人のなかには、所得→所得→所得という極端な人もいるかもしれませんね(笑)。

ここで面白い研究を見てみましょう。2万人もの日本人の幸福度を調査した興味深い研究結果があります。その研究結果によると、主観的幸福感、つまりそれぞれの人が「自分はシアワセだなぁ」と実感することに影響するものは、高い順から①健康、②人間関係、③自己決定、④所得、⑤学歴であるということが明らかになっています(西村ら, 2018)。

所得と学歴は統計学的に主観的幸福感とほとんど関係がないということが明らかになっています。したがって、いくら投資によって自分の所得が上がっても残念ながら、それは幸福感にはあまり繋がらないという結果です。何に投資したら人は幸福になるのでしょうか。

健康、人間関係、自己決定


その答えは、健康、人間関係、自分で自分の生き方を決めるということです。ここでは健康についてシステムのレンズを用いて考えてみましょう。

病気になったり大きな怪我をすると私たちは治療を受けるために診療所や病院へ行きます。治療には大金がかかり、日本全体で国民医療費は45兆円を超えているほどです。まして、年を取って老人になるほど、病気にかかったり怪我をしたりすることが増えるので、将来的に国民医療費は下がることはまずないであろうと政府は推測しています。

だから、病気を治療するよりも、病気にならないこと、そして自らの健康を増進することが重要であるというのは火を見るより明らかなことです。これらのことを予防、そしてヘルスプロモーションと言います。

お金をかけずに実行できる予防とヘルスプロモーションを

誰にでもできる予防やヘルスプロモーションがあります。睡眠、運動、食事です。ここで注意したいことは、熟睡するために高額な多機能ベッドや睡眠剤を飲んだり、色々なお金をかけることをやるというわけではありません。

また、高級で高額なスポーツクラブに入って優秀なパーソナルトレーナーを雇って、お金がかかる運動をしようというわけでもありません。また、高いフランス料理や海外の高い食べ物を積極的に食べればいいというものでも決してありません。いや、むしろ多くの日本人は食べ過ぎによって健康を害しているというのが事実です。

シンプルで高コスパな健康法

1日最低7~8時間は眠る。6時間以下はNGです。朝、通勤前にちょっと早起きをして20分から40分ぐらいの散歩やジョギングなどの有酸素運動をする。体の暖め、食べ過ぎ、飲みすぎることなく摂食、小食につとめる。生活システムの改善によって健康を増進することができるのです。これらによって確実に病気を予防してヘルスプロモーションに繋がるということは、膨大な数の科学研究が明らかにしています。

このような生活システムの改善は特に高額なお金がかかるというわけではありません。せいぜい枕、布団、遮光カーテン、ジョギングシューズくらいでしょうか。摂食や小食はむしろ食費の出費を減らしてくれます。

だから商業的な目線から見ると、生活システムの改善はあまり魅力がない。旧態依然の資本主義的なビジネスや産業を勃興させようという視点から見れば、予防やヘルスプロモーションはあまりマネタイズの対象として魅力的ではないのです。

賢い新NISAとのつき合いかた

それでも新しいNISAを活用して投資をしたい人は、以下のことを心がけたいものです。投資をして儲けようと思い立った瞬間にドーパミンという報酬系を刺激する脳内伝達物質がたくさん出ます。

これはこれで、幸福と関係なくはありません。でもドーパミンは過度にですぎると、依存症にもなるので要注意です。むしろ重要なのは、よく自分のアタマで考えて投資額や方法を自分で決め切るということです。さきに述べたように、主観的幸福感を高める3番目の要素として自己決定があることに留意しましょう。

そして、できれば、投資を配偶者やパートナーと仲良く相談して、いっしょに将来のことを思い描き、いっしょに決めてゆく。そうすると、オキシトシンという脳内神経伝達物質がたくさん分泌されて、絆、つながりが増して良い関係性へとつながっていきます。

投資をドーパミン中心の報酬系だけでとらえるのではなく、関係から生まれるオキシトシンや健康によって得ることができるセロトニンとうまくまゼ合わせるようにとらえることが案外大切です。

新しいNISAの導入で、ついついお金に欲望がもっていかれやすい昨今ですが、だからこそ、ちょっと立ちどまって、人を幸福にする投資について考えてみることも必要なのではないでしょうか。

参考文献:西村和雄, 八木匡(2018). 幸福感と自己決定―日本における実証研究(改訂版)https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/18j026.pdf

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