患者からみた緑内障治療・線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)

緑内障になりまして。

40歳以上の有病率5%。回復概念がなく進行・悪化をくい止めるだけ。正常値でも進行する人が多い。多くの人は自覚症状がない。最悪の帰結は失明。
そのような厄介な病気が緑内障です。
僕は両眼0.03~0.05程度の強度近視(さしあたり裸眼0.1未満と思うとよさそうです)で、緑内障の高リスク群に当たります。術眼は別の眼の病気の手術後高眼圧が続き、これまで点眼、内服、線維柱体切開術(トラベクロトミー)、SLT(レーザー治療)などを受けましたが、方策がつきたため、今回しっかりと眼圧を下げる第一選択となる線維柱体切除術(トラベクレクトミー)を受けました。
病態や手術の一般的説明は一般向け書籍や眼科のウェブページで多く紹介されているので、ここでは患者目線からみたトラベクレクトミーと、それ以外の緑内障治療について書きたいと思います。

患者目線からみたトラベクレクトミー

トラベクレクトミーの一般的知識


トラベクレクトミー(以下レクトミーといいます)は50年以上の歴史がある、眼圧を下げるための手術です。白目部分に濾過胞(ブレブ)という房水のプールを作り、眼の下に一部穴を開けて、房水の本来の通り道であるシュレム管以外の流出経路を確保する、バイパス手術です。
レクトミーの特殊性は、切除部分の傷を修復させないという考え方にあります。傷口には自然治癒力が働きますが、傷口がふさがるとバイパスが確保できないので、抗がん剤のマイトマイシンを使用してこれを抑制します。
また、手術したら終わりということではなく、術後管理が大事で難しい手術です。ブレブからの房水の流れは個人差があるので、縫合糸を術後2週間ほどでレーザーで切りますし、術後低眼圧による合併症の恐れもあります。低眼圧の要因はバイパスの確保によるものですが、濾過胞からの過(剰)濾過や房水の産出抑制など一つとは限らず、個別に対応します。傷口を温存するので、術後長期にわたり感染症に注意する必要もあります。なので、手術ははじまりにすぎないという印象です。

手術の痛み


レクトミーは古典的な術式であるため、基本的には切って縫うアナログな手術です。そのため、術者や術式にもよりますが、結構痛いです。眼科手術では駆出(駆血)性出血というリスクがあり、失明の恐れもあるため痛みは我慢しないで術者に伝えるように言われるのですが、はたしてこれは我慢すべき痛みなのか悩むレベルでした。手術自体は30~60分程度で終わり、術後の安静は洗顔・洗髪の制限が主たるものですが、痛かった。もう片目もと言われるとかなり身構えます。。。

患者目線からみた術後管理

ステロイドレスポンダー

レクトミーの難しさは事前知識である程度知っていましたが、入院時に点眼でステロイドを投与することを確認してへこみました。以前の入院で恐らくステロイドを理由とする激しい高眼圧に見舞われたからです。
ステロイドは使用により高眼圧を引き起こす場合があり、そのような体質を持つ人をステロイドレスポンダーと呼びます。レスポンダーかどうかは実際に投与しなければわからないので、症状が出たら投与を止めるという対応しかできません。
他方で術後の炎症を抑えるために避けることもできず、現在もこのリスクにさらされつづけている状態です。

ブレブからの漏出

房水を溜める濾過胞(ブレブ)が安定的にできるかはレクトミーの鍵ですが、僕の場合は眼の構造がデリケートなため、一部から房水が漏れ出しました。この場合、該当箇所を再度縫合する処置が必要になります。術後6日目に処置していただきました。
眼圧は低すぎても合併症の原因になり、最悪の場合眼球癆というしぼんだ状態になって失明します。また、低眼圧だと視力も戻らないため、再縫合は不可欠でした。他にも過濾過の場合にも同様の処置が必要になるなど、術後管理は大変です。入院日数は標準では術後1週間程度ですが、もっと余裕をみておく必要があると思います。

術眼以外の対応

緑内障は病態の性質上(片目だけのステロイド高眼圧など例外はありますが)、両眼に症状が出ることが一般的です。通常自覚症状が少ないのは両眼で補い合って見るためなので、片目の治療で終わりにはなりません。僕は術眼以外の眼についても既に眼圧が正常値上限(正常値は10~21mmHg)に達しており、今後点眼か白内障手術からスタートすることになります。緑内障の場合、生まれつき持っていた水晶体を人工眼内レンズに置き換えると、人工眼内レンズは薄いため、房水の経路となる隅角を広く確保できます。そのため、緑内障の早い段階で白内障手術を施行することは広く行われています。

おわりに


ということで、全く余談を許さない状態ですが、僕の術眼も漏出が止まり、ようやく眼圧・視力が回復し始めました。
緑内障は相当メンタルにもきつい病気です。レクトミーは眼の構造を変えるので、ブレブに触れる可能性のあるコンタクトレンズの使用もできなくなります。近時はMIGSと呼ばれる低侵襲の緑内障手術も多く開発され(レクトミーの痛さを知って、開発がどんどん進むことを深く願います)、治療の選択肢も増えました。まずは十分な知識を持って、主治医と治療方針を共に考える姿勢が大事だと思います。
正しく恐れ、うまく病気と付き合っていきましょう。



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