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【税務】給与の差押禁止

 今回取り上げますのは、税務署が給料を差し押さえる場合に、無制限にできるのか、という問題です。

 答えとしては、無制限にはできません。

 国税徴収法の根拠規定を最後に引用していますが、要するにわかりやすく言えば、滞納者とその生計が同じ家族の生活保護基準に相当する金額は差し押さえできません。

 憲法で保障された健康で文化的な最低限度の生活を送る権利である生存権を侵害してしまうからですね。

 流石に税金の滞納をしたというだけで生存権を侵害して良いことにはなりません。

 他、通常は天引きされる社会保険料の金額に相当する部分も差し押さえできません。

 また、滞納者の給料が生活保護基準の金額の2倍を超える金額である場合は、超える金額も差し押さえできません。

 これは生活保護基準の例えば2.5倍の給料がある場合に、生活保護基準の1.5倍は差し押さえることができないということです。

 差し押さえできるのは生活保護基準の金額に相当する1.0の部分だけです。

 給料を国が差し押さえるということはかなり制限されているというように思います。

 なお、今回のはあくまでも国が差し押さえる場合なので、国ではなく一般人が給料を差押える場合は今回の国税徴収法は適用されませんので、別の民事執行法の定めによることになりますので混乱しないようにしていただければと思います。

 今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。

(給与の差押禁止)

第七十六条 給料、賃金、俸給、歳費、退職年金及びこれらの性質を有する給与に係る債権(以下「給料等」という。)については、次に掲げる金額の合計額に達するまでの部分の金額は、差し押えることができない。この場合において、滞納者が同一の期間につき二以上の給料等の支払を受けるときは、その合計額につき、第四号又は第五号に掲げる金額に係る限度を計算するものとする。
 所得税法第百八十三条(給与所得に係る源泉徴収義務)、第百九十条(年末調整)、第百九十二条(年末調整に係る不足額の徴収)又は第二百十二条(非居住者等の所得に係る源泉徴収義務)の規定によりその給料等につき徴収される所得税に相当する金額
 地方税法第三百二十一条の三(個人の市町村民税の特別徴収)その他の規定によりその給料等につき特別徴収の方法によつて徴収される道府県民税及び市町村民税に相当する金額
 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第百六十七条第一項(報酬からの保険料の控除)その他の法令の規定によりその給料等から控除される社会保険料(所得税法第七十四条第二項(社会保険料控除)に規定する社会保険料をいう。)に相当する金額
 滞納者(その者と生計を一にする親族を含む。)に対し、これらの者が所得を有しないものとして、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第十二条(生活扶助)に規定する生活扶助の給付を行うこととした場合におけるその扶助の基準となる金額で給料等の支給の基礎となつた期間に応ずるものを勘案して政令で定める金額
 その給料等の金額から前各号に掲げる金額の合計額を控除した金額の百分の二十に相当する金額(その金額が前号に掲げる金額の二倍に相当する金額をこえるときは、当該金額)

 給料等に基き支払を受けた金銭は、前項第四号及び第五号に掲げる金額の合計額に、その給料等の支給の基礎となつた期間の日数のうちに差押の日から次の支払日までの日数の占める割合を乗じて計算した金額を限度として、差し押えることができない。

 賞与及びその性質を有する給与に係る債権については、その支払を受けるべき時における給料等とみなして、第一項の規定を適用する。この場合において、同項第四号又は第五号に掲げる金額に係る限度の計算については、その支給の基礎となつた期間が一月であるものとみなす。

 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権(以下「退職手当等」という。)については、次に掲げる金額の合計額に達するまでの部分の金額は、差し押えることができない。

 所得税法第百九十九条(退職所得に係る源泉徴収義務)又は第二百十二条の規定によりその退職手当等につき徴収される所得税に相当する金額

 第一項第二号及び第三号中「給料等」とあるのを「退職手当等」として、これらの規定を適用して算定した金額

 第一項第四号に掲げる金額で同号に規定する期間を一月として算定したものの三倍に相当する金額

 退職手当等の支給の基礎となつた期間が五年をこえる場合には、そのこえる年数一年につき前号に掲げる金額の百分の二十に相当する金額

 第一項、第二項及び前項の規定は、滞納者の承諾があるときは適用しない。

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