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【経営】会社が破産したら代表者も破産しなければならないのか?

 以前に質問をいただいたことがあったこの点について取り上げます。

 経営者の中でも質問があるということは関心があるということであり、法的にどうなるのかということについて疑問を持つのは不思議ではありません。

 まず結論から伝えると、破産しなければならない、つまり破産の申立てをすることが義務となるということは法的にありません。

 あくまでも破産の申立てというのは権利であり、義務ではありません。

 義務ではないということは、破産の申し立てをしないと賠償義務を負うとか刑罰を科せられるとか、そういったことはないということです。

 しかし質問者の方が聞きたいのはこういったことにとどまるわけではないと思いますので、義務ではないところ、権利として申し立てをした方が良いのかどうか、ということについて伝えたいと思います。

 前提として、代表となっている会社がある場合で、その会社については債務超過の状態であることとします。そして会社についてはその代表者も破産の申し立てをしたいと思っているとします。

 この場合、会社の破産の申し立てをするでしょう。

 代表者個人についてはどうでしょうか。
  
 質問者は代表者個人は破産申立てしたくないと考えています。

 冒頭に述べた通り破産申立ては義務ではないとすると、別にしなくてもよい、ということになりそうです。

 では破産申立てをしない場合にはどうなるのか、ということを考慮し、破産申立てした方が良いかどうかということを伝えます。

 重要な点は代表者個人が会社の保証をしているかどうかです。以下場合分けします。

1 代表者個人が会社の保証をしていない場合

 この場合、代表者個人としては会社という法人格とは異なる存在ですので、会社が債務超過に陥っていたとしても、代表者個人は何ら債務を負っていないわけです。

 この場合、仮に代表者個人が破産したくてもできません。

 破産の要件である支払不能に当たらないからです。

 支払不能というのは法人でいう債務超過と同じと思っていただいて大丈夫です。

2 代表者個人が会社の保証をしている場合

 この場合、実務上単なる保証ではなく連帯保証しかないと思って良いので、連帯保証であることを前提とします。

 連帯保証というのは主債務者と同列の立場ということですので、会社と全く同じように債務を負っているということになります。

 会社が破産申立てするなら当然代表者も破産申立てすることになります。
  
 今回の質問の真意は、この場合であっても代表者個人は破産申立てしなくて良いか、というものです。

 破産申し立てをしない場合、債権者からの請求がひっきりなしにあります。

 書面、電話、訪問はありえます。

 そしてそれでも回収できなければ訴訟提起してきます。
 
 その意味は、強制執行するためと、いわゆる不良債権の処理をするためです。

 強制執行というのは、不動産を競売にかけたり、預貯金を回収したりするために実施します。

 強制執行の要件として法律上は債務名義、つまり判決が必要となるのです。

 判決は訴訟提起した結論として出されるものです。

 このために訴訟提起してくるということです。

 また、いわゆる不良債権の処理というのは、会計上税務上の話です。
  
 貸倒損失という費用の計上をして損金処理して、債権回収の業務を終わりにしたいのと費用の計上をして節税したいわけです。あるいは債権者である会社が上場企業等であれば株主からの責任追及のリスクも一応負っていますから、何もしない訳には行かないわけです。

 こうした事情があることから、代表者個人が破産したくないのであれば義務ではないという意味ではそれでも良いのかもしれませんが、平穏に暮らすことができるということはなく、いろんな督促なり裁判なりの対応を迫られてしまうわけです。強制執行を受けることもあります。

 普通は破産申立てしてこうしたことが起こらないようにします。

 裁判所も、会社について破産申立てすれば代表者個人については破産申立てしないのですか?しますよね?してくださいね?と、破産申し立ててを促してくるでしょう。

 会社については少なくても破産申し立てしているわけですから、完全に無視するというのも不自然だし、会社の破産手続も通常よりは厳しい態度で臨まれることが予想されます。通常では説明を求められないようなことでも説明を求められたりもあり得ます。

 以上より、代表者個人についても破産しなくても良いということはなく、した方がいいということになります。

 代表者個人のためでもあります。前述したような強制執行を受けたりするような状態をよしとするのは健全な精神状態ではないでしょう。

 なので代表者個人が破産したくないという意思がある場合は今まで述べてきたようなことを説明して、破産した方がいいことを理解してもらうことになりそうです。

 今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。

 

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