日常すぎて気づかなかったこと
地元の幼なじみに誘われて、水天宮前の博多もつ鍋屋「たかしょう」へ。
引き戸の扉をガラガラ〜っと開けた瞬間、
少ない席数のこじんまりとしたお店に、
思わず「ただいま〜」と言いたくなった。
瞬間で「あ、いい店だな」と感じた。
片手で数えられるほどのサラリーマンたちが、
騒がずしっぽりと飲んでいる。
どんな人生を送ってきて、この店は彼らにとってどんな存在なのだろうか。
そんなことを考えながら、友達の前では「なんかいいね〜」とだけ言ってメニューを見ていた。
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お店の定番メニュー、もつ鍋(醤油味)は必須。
友達の遠慮がちな「カキフライ食べたいな〜」という言葉に、
「え、わたしもカキフライ食べたい!」と食い気味になり、カキフライを選択。
あとは、フライものには口直しが欲しくなるのを見越して、漬物の盛り合わせを注文した。
先に運ばれてきたカキフライと漬物。
今年初のカキフライ。高鳴る鼓動。いざ。
サクッ!ジュワ〜ッ!
牡蠣を纏う油、内臓?を噛むと広がる磯の香り、、。
うわあ〜〜これこれ〜〜!😭
はあ、幸せ。ありがとう海の幸ぃぃ。
すると、感動するのも束の間、
友達が「セロリの漬物美味しい」と言ってきた。
セロリの漬物?初かも。
というかセロリなんて久しぶり。
いざ!
うわ、美味しい。シャキシャキ。
漬物だからか、少しクセのあるセロリの味もなんだか抑えられている気がする。
セロリ嫌い側の人間じゃなくてよかった
と思った瞬間。
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そうこうしていると、もつ鍋が運ばれてきて、コンロの上に設置された。
実は醤油味のもつ鍋は初めて(な気がする)。
お店のメニューには味噌味もあったけれど、
友達によると「通常は醤油味じゃない?」
ということだった。
そこで初めて気がついた。
「あれ、私今まで味噌味だったかも?」
当たり前すぎて気づかなかったのかもしれない。
もしくは、
もつ鍋よりもつ煮込みの方が食べた経験値が高くて、
もつ煮込みは味噌味だったからか?とも考えた。
ん〜。
なんか難しくなったので考えるのをやめた。
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食べ頃になったもつ鍋。
こういうとき、じっくり食べ物を見つめすぎて、取り分けてくれるのはいつも友達の方。
醤油味のもつ鍋、いざ実食!!
わ〜沁みるぅ〜。あっさりで優しいお味。
(味に"お"をつけたくなる)
味噌のもつ鍋が、
「ふくよかで冗談大好き系おばあちゃん」
の優しさだとすれば、
醤油のもつ鍋は、
「しっとりとした笑顔で微笑む穏やか系おばあちゃん」
の優しさ。
味噌味のもつ鍋しか食べたことのなかった私は、もつ鍋を食べても胃もたれしなかったことに驚き、
あれ?わたしって本当にもつ鍋食べたよね?
と疑った。
それほど、「しっとりした笑顔で微笑む系おばあちゃん」は優しかった。
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「芋焼酎のお湯割り」友達が2杯目を頼んだ。
お酒が飲めない私は、芋焼酎がどんな味か気になり、匂いを嗅がせてもらった。
友達いわく、「九州以外の人からは、芋焼酎は臭いって言われる」らしい。
「くさいか?焼酎ってこの匂いじゃないのか?」と思った私は、
「そうかな〜?」とだけ濁していると、
「普通にじいちゃんとか家で飲んでるからさ」と友達が言った。
「え、そう!!!じいちゃんの匂い!!!」
わたしは目を大きく見開いて頷いた。
2人の中で巻き起こる共感の渦。
これも、芋焼酎が日常的すぎて気づけなかったこと。世紀の大発見!!
(そういえば、他の地元の友達2人も、「いつも何飲む?」と聞いたら、「芋焼酎のお湯割り」と言っていたな。私もいつかお酒に強くなって「芋焼酎のお湯割りください」と言いたい。)
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地元トークに花を咲かせる中、
ずっと気になっていた裏起毛のニットを着た70代くらいの店主のおじいさん。
もつ鍋のグツグツ具合や、締めのおじやの作り方を、
「分かってはいるだろうけど」という感じで優しく教えてくれた。
おじいさんも九州出身ですか??
これだけのことが聞きたくても聞けなかった私、情けない。
だけど、九州出身だと期待して、もし違った時がショックなのでこれでいいのだと、
帰り道、遠くを見つめながら、胸を撫で下ろした。
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