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摂食・嚥下チームアシスタントレポートVol.15 「舌と嚥下」〜基礎編〜 

はじめに

摂食嚥下チームアシスタントレポートにお越しいただき誠にありがとうございます。
前回までは『姿勢と嚥下』の関係についてお話ししてきました。今回からは、『舌と嚥下』という新しい分野の内容をお伝えしていきます!みなさまは臨床で嚥下障害のある方の舌を評価していますか?なぜ舌を評価する必要があるのでしょうか?嚥下と舌はどのような関係があり、どのように評価していくことができるのかをお話ししていきます。

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1.なぜ舌を評価するのか?

なぜ嚥下障害のある方の舌を評価する必要があるのでしょうか?
嚥下における舌機能を嚥下5期モデルで説明すると・・・
先行期では、食物を認知し受け皿のように、無意識に舌をスプーン状に形成しその食物を取り込めるようにします。
口腔準備期では、食物を取り込んだあと咀嚼しながら舌で唾液と食物を混ぜながら食塊形成を行います。
口腔期(送り込み)には、舌尖から舌根と手前から奥に向かって順に挙上して口蓋につくことで舌圧を高め嚥下に必要な嚥下圧をつくっていきます。               このように舌と嚥下は強い関係があります。

2.舌の評価のポイント

では、舌はどのように評価していけば良いでしょうか?                前回までお伝えしていた姿勢と一緒で、正中線を意識して評価していきます。姿勢では、鼻筋・オトガイ・頸切骨(胸骨のくぼみ)・臍(へそ)・恥骨結合・両膝の間を結ぶ線が正中線になります。一方、舌の表面の正中線は正中溝と呼ばれ、舌筋内では舌中隔と呼ばれる結合組織で左右に分けられています。                              評価の手順:①姿勢を正中線を全体的に評価します。①と比較して②の正中線がどのようになっているかを評価していきます。                       ①②の順番で評価することで舌の正中線が真っ直ぐに見えても頭部の側屈や肩甲骨の下制などで舌が真っ直ぐに見えるなどの代償姿勢を評価できるようになります。

3.舌の解剖と神経支配

舌は、舌尖舌体舌根に分けられます。挺舌した場合、舌尖と舌体までは評価できますが、舌根は見えません。舌根は、咽頭部分まで覗かないと評価できませんが、ぜひ見える範囲の舌根がどのようになっているかも評価してみてください。
また、体性感覚の支配領域は、舌尖〜舌体までは三叉神経ですが、舌根部は舌咽神経の領域になります。舌の奥に介入することで、絞扼反射(嘔吐を伴わないえずくような反射)が起こることがあるので注意してください。絞扼反射の有無も大切な評価になります。
さらに、舌の縁を舌縁と呼ばれ、舌縁の形も評価していきます。舌が常に口蓋につかずに下がっている低位舌の方は、歯形がついて舌縁がギザギザになっている場合があります。

上記で述べた、舌尖・舌体・舌根は内舌筋と呼ばれ、舌の形を変える働きをしています。 内舌筋の下には視診では評価できない外舌筋があり、舌の位置を変える働きをしています。

4.舌の評価例

まず、姿勢を評価しその後に舌の正中線を評価します。舌の正中線の偏位の有無や舌の正中線から左右の舌の幅や高さの左右差はないか?また舌の萎縮や舌縁の形はどうか?舌苔はどこにあるか?などを視診で評価していきます。ぜひまずは健常人で評価してみてください。慣れてくれば、触診で舌の筋緊張(筋の張り)や抵抗感なども評価できます。

まとめ

嚥下機能と舌は嚥下5期モデルでもお話ししたように強く関係しています。舌が評価・治療できるようになると嚥下機能の改善に繋がります。                  舌の評価ポイントは、姿勢と同様に正中線の評価が大切です。姿勢の正中線と比較して舌がどうなっているのかを評価していきます。舌の解剖を意識しながら、ぜひご自身の舌から評価してみてください。

おわりに

これからも解剖学や運動学、実技だけではなく、臨床で必要な思考過程も含めて共有させていただきます。同じ嚥下障害に悩む患者様を担当されているセラピストの皆さんに一人でも多く知っていただき、一緒に嚥下障害を治療していく仲間が増えることを私達摂食嚥下チーム一同願っております。また一人でも多くの皆さんに知っていただけるよう、私達の活動を応援していただけると幸いです。今後も摂食・嚥下アシスタントレポートを宜しくお願い致します。

ごあんない

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