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匂いの記憶 〜私を麹マスターに導いたもの〜


私の祖父と父は 健康食品屋でした。

祖父は 若い頃の事故で感覚がない指があり
その為 戦時中は戦場ではなく 戦場に出向く兵士の方々の食事係に任命されたそうです。
その際に 安値でも 栄養満点で兵士の力になる納豆の力に魅了され 戦後も人の体に良い食品を作ることを生業にしたと 子供の頃に聞きました。

納豆はもちろん ヒエ、粟、テンペ、もやし
そして 麦麹の製麹から始まり 麦麹の天然酵母を使用した酒饅頭なども作っており、
これらを製造し 卸すだけではなく、これらの食品を使用した定食屋に弁当屋も運営してました。
今 考えてもどれだけ大変な作業だっただろうと思うし 実は健康食品ブームの走りだったのではとも思います。

子供の頃に良く遊びに行った工場(こうば)は
いつも独特の匂いが充満していました。

大人になった私はというと その自営を継ぐ勇気などはなく
一般企業に就職し、結婚と2回の出産を経て 今に至るまで 所謂 ワーママライフを奔走して来ました。

家族の食事を担って10年。
丁寧な食事には憧れを持ちつつも 日々の食事は時間に追われるがままにやっつけ作業。

そんな折 友人の誘いで 味噌造りワークショップに参加します。
そこで出された 茹でた大豆と麹の温もり そして何より その【匂い】に 私の記憶が一気にあの工場(こうば)に引き戻されることになります。
あー、私はこの匂いの中で育ったと。
そして 何故か この匂いを私は忘れてはいけないと そう強く感じました。

五感の中で 1番敏感なのも
記憶として1番しっかりと残るのも 嗅覚なんだそうですね。

こうして 嗅覚を頼りに 私は再び麹にたどり着き
祖父と父とはまた違った形で
麹マスターとして
「家庭の台所で自家製麹を極め またそのバトンをつないで行く」を一生のライフワークにする!と 思うに至りました。

思えば随分と遠回りしてしまった気もしますが
色々な経験をした今だからこそ 麹と向き合える。 そんな風に思います。

麹マスターと麹とその周辺
楽しく綴っていけたらと思います。


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