30秒で人の心を掴む

ヒロコブギーです。

noteは週一回ぐらいのペースで書きたいなと思っていたのですが、少し間隔が開いてしまいました。調子がいい時はスラスラ言葉が出てきてあっという間に書けるのですが、なかなかそのモードに行くまでが難しいですね。
『初対面の人の「ストリートダンスって頭でくるくる回るやつですか?」への対処法』というわけわからん記事を600字ほど書いたところで諦めてこちらの記事を書いています。

前回は、ストリートダンス世界大会Juste Deboutに挑戦した経験から気づいた事などを書かせて頂きました。やはり何か大会に挑戦するということは、色々な気づきを得られますし、たった一回だとしてもめちゃくちゃ成長できるなあと書きながら自分も再確認することができました。

前回は挑戦者側の立場での記事だったのですが、私も、いっちょまえにダンスバトルのジャッジを任せていただくことがあり、今回は審査側の立場に立った時に気づいた事などを述べていこうかなと思います。

最初に断っておくと、単に「人のダンスを評価する」という経験において感じたことを記録したいだけなので、「ジャッジとはこうあるべきだ!」とか「こうすればダンスバトルで勝てる!」というようなことを言いたいわけではありません。文中で特定のイベントについて触れていますが、別にそのイベントに出てた人へのアドバイスというわけでもないです。ぜひ美容院で占いのページ見てる時くらいの気持ちで読んで頂ければと思います。


ダンスバトルのジャッジという仕事

そもそもダンスバトルのジャッジというのは、フィギュアスケートのように明確に審査基準が設けられているわけではなく、どのように審査するかは各ジャッジに委ねられています。(コンテストなどでは大会側で審査基準が設けられている場合もありますが、バトルではほとんどそういったものがありません)

「どちらが勝ったか」を決めるのがジャッジの仕事ですが、「何を”勝ち”とするか」というのは個人の価値観によって様々です。正しいも間違っているもありません。別に「私はこういう基準で審査してまっせー!」とわざわざ公表する必要もありません。

音楽性を最も重視する人がいたり、スキルを重視する人がいたり。はたまた場の空気を掌握できているかを大事にしている人がいたり。

もちろんその時の「直感」だけで決めるのもアリです。「直感」は「適当」とも思われそうですが、その人の経験や知識などが「直感」を産んでいるので、それはそれでその人にしかできない仕事だと思います。(この辺りの話は水野学さんの『センスは知識からはじまる』が大変勉強になるのでオススメです。)

ともかくダンスバトルにおいて何が勝ちで何が負けなのかは、共通のルールなどは存在せずジャッジ個人の価値観に委ねられています。

先日、ロックダンスバトルのジャッジをさせて頂きました。『Lil LOCK CITY』というイベントで、大学生もしくは22歳以下のみ出場可能のロックダンスのバトルです。

総エントリー数は153名。ロックダンスのバトルで、年齢制限があるにも関わらずこのエントリー数はめちゃくちゃ多いと思います。

ダンスバトルのルールというのは大会によって様々なのですが、今回のイベントは、1人30秒のオーディションによって選出された24名がトーナメントに進み、1対1のダンスバトルで優勝者が決まるというものでした。

オーディションの予選は、150人超のダンサーが30秒毎に次々と踊るのを一瞬で点数をつけていかなければならない作業。文字だったらゲシュタルト崩壊してます。

「踊り始めた時の歓声の多さで、サークルの人気者わかりがち」という大学生限定バトルあるあるも久々に体験しつつ、150名のダンサーの踊りを一気に見るわけですから、それはそれは非常に学ぶことが多かったです。


30秒で人の心を掴む

オーディション予選のジャッジは、大きな美術館で作品を見て回っている時の感覚に似ているなーと度々思います。

たくさん作品が並んでいて、順番に見ていくんだけど、たまに「お!」と思う作品の前で立ち止まり、この作者はなんて名前なんだろう、この作品のコンセプトはなんなんだろう、と興味が湧く。それは必ずしもとても写実的な上手い作品ではなく、なんかよくわかんない代物だったりする。でも、よくわかんないんだけど、なんだかすごく魅力やパワーを感じて、もっとこの人の作品が見てみたい、と思う。みたいな経験はないでしょうか。

たくさんの作品の中から購入して家に飾りたいと思うのは、「一番技術が高い作品」ではなく自分が「一番魅力的に感じた作品」じゃないでしょうか。

このように記述すると「上手い作品=魅力がない」「魅力がある作品=下手」ってこと??と思われかねないのですが、そういうわけではなく、作品の評価を決めるのは必ずしも技術の高さだけではないんじゃね。っていう話です。

大学生限定のバトルでしたが、みんな本当に上手いです。音を外している人はほとんどいませんし、即興で踊ることに慣れてる人がかなり多かったです。

でも、やっぱり上手さの隙間からこぼれ落ちてくる魅力がある人というのは数えるほどで、うまいんだけど、なんか心に伝わってこない、すごく近い距離でみているはずなのにテレビのモニターをみているかのように遠くに感じるという人も多いなあと思いました。

オーディションで選出されたダンサーはトーナメントバトルに進むことができますが、「この人のダンスをトーナメントでもみてみたい!」と感じることは必ずしも「上手いから」という理由だけではありません。(もっとも、「上手すぎる」ということも魅力の一つではありますが。)

じゃあ「魅力」って、なんやねん。て話なんですが。。

人によって魅力の感じ方は様々なので、正解も不正解もありませんが、私は、「魅力」は「"経験値"からなる人間の奥行き」を表しているんじゃないかなと思います。

「経験」とはバトルやコンテストの場数を踏んでいることだけを意味するのではなく、色々な感情を抱くことも「経験」なんちゃうかと私は思っています。

本気で怒ったり、めちゃくちゃ気まずかったり、この世の終わりぐらい悲しかったり、このまま死んでもいいわと思うくらい最高に楽しい気分になったり、花を見てただ綺麗だなと思うそんな小さなことでも。

だから単にダンス歴が短い・長いということは、「"経験値"からなる人間の奥行き」とは直接的にはあまり関係がないと思います。(もちろんダンス歴が長くてたくさんバトルに出ている人はその分悔しい気持ちも嬉しい気持ちも色々な感情を体験している。でも、ダンス歴が短くても他の分野で何かに打ち込んでいたり、たくさん本を読んでいたり、語学留学するなどいろんな経験をしていたらそれもその人の魅力の一部になる。)

感受性が豊かな人は魅力的な人だと思います。24時間365日、ただめちゃくちゃ明るいだけのやつはそれはそれで楽しそうですが、基本的に明るいけどたまにセクシーな一面があって、時にはシリアスにもなるし冷淡な一面もある。みたいな人の方がもっと会話してみたいなと思う気がします。(それは単に、表向きの表情が豊かであるという事ではなく、ポーカーフェイスだけど心は目まぐるしく動いているということもあると思います。)

そのような人間としての奥行きが、「垣間見える魅力」として、踊りにも現れると思います。


「技術」と「魅力」

このように書くと、魅力さえあれば技術がなくても良いのか!と思われてしまいそうですが、ダンスバトルという評価の場においては、私は個人的にはそういう評価の仕方はしたくありません。「ロックダンスのバトル」と銘打っているからにはロックダンスのスキルの有無を完全に無視することはできません。

魅力というのは、それを十分表現するだけの技術があってはじめて力を発揮すると思うからです。「技術を追求できる」ということも素晴らしい魅力のうちの一つです。

英語のスピーチコンテストで、単語も文法も発音も超完璧だけど話の内容はまじで薄っぺらい事しか言ってない人と、めちゃくちゃいいこと言ってるけど言葉遣い悪い上に発音も滑舌も最悪な人、どっちも微妙みたいな感じです。

私の中での理想は、言葉選びも素晴らしく発音もクリア、話の内容もとても面白い。でも堅苦しくなくて、遊び心がある人です。

全てがコントロールされすぎてても魅力的に感じないし、逆にコントロールされてなさすぎてもそれはそれで見てられないです。(これはあくまで私の感覚。この理想のバランスは人によって異なります。)

今回ジャッジしたリルロックでも、とても素晴らしい魅力をもっているけど、技術が無い人という人は多く、やはり技術も魅力も備えた人がたくさん出場する中ではそういう人は予選落ちしてしまいます。(逆も然り・・・)

魅力とか個性とかは、元々その人に備わっているもので、「はい!!今から魅力だすぞーー!!個性的にやるぞー!!」といって出すものではなく、ついつい滲み出てしまうものなので、大前提に技術というものが必要になると思います。

なのでオーディションにおいて私は、まずは最低限の技術があるかどうか。さらに技術に説得力があるかどうか。そしてさらにプラスαの魅力を感じたかどうかで、自分で段階をつくって点数をつけました。


学び続ける意味

と、ここまで自分のことは棚に上げて偉そうに書きましたが、私の経験値が浅いが故に理解できない魅力とか技術も、もちろん存在します。

ダンスを始めたばかりの頃はLOCKERS(ロックダンスのオリジネーター)のかっこよさなんて全く理解できなかったけど、ロックダンスを学べば学ぶほど格好良さや凄さがわかってくるみたいな感じで。

ということは技術を磨き、人間的に成長することで、魅力的に感じるものがこの世に増えていくということだと思います。

そう思うと、めっちゃワクワクしませんか??
技術を高め、極めていくことで感じる喜びも増していくわけです。

逆に、成長することで「世界一いい!!!」と昔は思っていたことが「なんでこれがいいと思ってたんだろう・・・」と、全然良くみえなくなることもあると思います。(恋愛でよくあるやつ。笑)

こんな感じで成長とともに人の感性は変化していくもんなので、自分の考え方や感じ方が絶対正しい!と思ってしまうことは損な気がします。なぜなら、今までの自分の考えを否定しなければならない瞬間が訪れた時に、それを受け止められないことは成長を止めてしまうことだからです。

「今の自分はこれが正しいと思ってるけど、まあ、時の流れとともに色々変わっていくやろなあ。」くらいのスタンスがいいなと思います。

ダンスバトルのジャッジに関しても、そのぐらい流動的なものなので「負けたから私はもう全然ダメ」とか「あのジャッジの評価はおかしい!」と思うのではなく「このジャッジの人の基準では私は評価されないんだな〜フムフム」ぐらいの気持ちでいる方が有意義だと思います。

いつもはジャッジされる側の方が多い私ですが、久しぶりにジャッジする側に回って考えることが色々ありました。これも一つの経験です。前述した通り人間の考え方は変化するので、数年後には全然違う基準でジャッジしてるかもしれません。笑

今回Lil LOCK CITYを開催してくださったオーガナイズ陣・また参加者の皆様、(そしてここまで読んでくれた強者たちよ)有難う御座いました。

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