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グランドピアノをオーバーホールするの巻
まえおき
声楽家・作曲家の故・城間繁先生。
父は、同郷・同窓のなのもあってか繁先生と在京時代から親交がありました。組踊を金武良章先生に師事していたのですが、それも繁先生のお誘いがきっかけだったようです。
繁先生は、私が5歳ぐらいの頃(だったかな?)ピアノを始めると聞いて、お持ちだったカワイのグランドピアノをくださったのでした(!)。そのピアノを弾いた時間が、私のいまの音楽人生を支えております。
そのピアノを私は「カワイさん」と呼んでいます(ひねりはない)。
カワイさんは2000年頃には既に、ときどき突然内部から「バチーン!ジャーーンンン…(弦切れ+不協和音のサスティン)」と聴こえる程度には、全体的に弦が劣化していました。
当然調律の最中にも毎回弦は切れるので、当時の調律師の石嶺弘實さんが「こわい、こわい」と怯えながら作業をされていて申し訳なかったのを思い出します(これはつまり、経年劣化した弦なのでどこで切れるかわからず、ゆえにどこに跳ね返るか、飛ぶかもわからない。そして1本で100kg近い重量がかかっているので、まかり間違えば切れた瞬間凶器になりかねない、ということです)。
その後私が東京に居を移すと、弾き手を失ったカワイさんは約12年もの間実家で沈黙し続け、ますます弦が切れ音も狂い、惨憺たる状態になりました。2017年に沖縄に戻ったものの、弦の張り替え費を思うとなんとなく腰が引け、カワイさんには申し訳ないながらしばらくメンテを先延ばしし続けていました。
その頃知り合ったとあるウチナー・シャーマン的な方に「ピアノをすぐなおした方がいい」と釘を刺されたりなんかして、それでもなお保留していたら、数ヶ月後再びお会いした際に「まだ直してないでしょ!」となぜか即見破られ冷汗をかく、などという出来事も背中を押し、ようやく一念発起し修理を依頼したのでした。
その時から、カワイさんの調律は島ピアノセンターの石垣晃さんにお世話になっています。切れた弦だけ張り替えてミニマムの調整を繰り返してもらっていたものの、この夏、新しい作業スペースへの引っ越しに伴いピアノの運搬をお願いすることになり、そのタイミングでオーバーホールもすることにしました。
というわけで、前置きが長くなりましたがここからが本題。
石垣さんが、カワイさんがオーバーホールで生まれ変わる様子を写真で逐一レポートしてくださっていたので、せっかくだからご紹介しようと思います。
▼オーバーホール前のカワイさん
▼搬出
足やペダルやアクションなどを取り外し、横に倒して台車に乗せて運び出し、クレーンで吊って、トラックに積載。うちは少し搬出しにくい現場だったと思いますがさすがの連携プレーで運んでくださいました。
旅立つカワイさん。行ってらっしゃい。
よろしくお願いします〜。
カワイさんをオーバーホールしていただく間、同じカワイのアップライトピアノが代ピアノとしてやってきました。
▼解体と掃除
翌日から、さっそく弦をバラし、他のパーツもひとつひとつ、きれいにしていただく作業が開始。
チューニングピンとクッションも。
5日後ぐらいからは、鍵盤のお掃除風景が登場。
鍵盤の金属パーツも磨いていただいたようです(輝いてる!)
▼フロント・ペーパーパンチング(鍵盤深さ調整)
ピアノはカワイなのですが、特別にスタインウェイ・ピアノの純正のパンチングを使っていただきました…!紙質が良いとのこと。
石垣さん「これから、張弦、ハンマー整形、整音、アクション調整、と、ピアノの音に関わる、さらにシビアな作業になっていきます」
▼ハンマーファイリング(整形)
ピアノは、鍵盤を叩くとこのハンマーが弦を打つことで音が鳴る仕組みです。このハンマーを削って調整する作業。
なんだか、髪を切ってもらってさっぱりした感じ…?
▼張弦
赤いフェルトがどれもピカピカです!
チューニングピンとクッションもピカピカ!
アグラフもピカピカ!
そして弦が張られていきます。
▼調弦終了
美しい!!!
調弦完了、といっても、その後も何度も調弦していただいたとのこと。
そして、ついにカワイさんが帰ってくる日が。
▼搬入
おかえりなさい!!
とってもピカピカになって(脚の金属部分も金色に輝いている…!)、まさに生まれ変わって帰ってきてくれました。
石垣さんから、「こんな気持ちでお仕事をしています」とお送りいただいた調律師の師、伊藤正男さんの記事。
カワイさんは1966年1月〜2月頃の製造で55歳、この時代のものはボディがしっかりしているのでメンテしながらまだまだ使えるとのこと。まさに「持てるだけの労力を注ぎ込んで、さらに20~30年活躍できるような」ピアノにしていただいたのだな……、と嬉しく思いました。
「城間繁先生のピアノ、ぜひ大事にされてください」と島ピアノセンターさん。大事にします!さっそく室内の湿度コントロールのため除湿機を導入。
カワイさんは、兄弟のいない私にとって、幼少期から家でそばにいて相手をしてくれていた家族のような存在。半生お世話になっておきながらこれまでがっつりメンテする機会がほとんどなかったので、少し恩返しができたかな、と思います。
代ピアノさんは入れ替わりで帰っていきました。
今、おろしたてのすべての弦を馴染ませているところです。また調律をしていただかなくては。
オーバーホール、思い切りましたが、お願いして本当によかったです。
石垣さん、島ピアノセンターさん、ありがとうございました。
今回お世話になった島ピアノセンターさんのサイトはこちら↓
以上、グランドピアノをオーバーホールするの巻、でした。
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