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『風の唄 ( Wind's Song )』について ( Hiroko's Monthly Tune Project #3 )

大学生のとき、björkやSigur Rós、múmをはじめアイスランドの様々なアーティスト・音楽シーンにスポットを当てた“Screaming Masterpiece”というドキュメンタリー映画が早稲田松竹で上映されていて、もともと彼らの音楽が好きだったので観に行ったところ、アイスランドという場所自体にすっかり心奪われてしまいました。
劇中、björkの“All is Full of Love”のライブ映像が流れるのだけど、イントロの「ドゥゥン」という低音が鳴ったとき涙が滝のように流れ出して、なんとなく「私はいつかアイスランドに行く」と思ったのでした。

最初に行ったのは2009年(この旅行記はけっこうドラマティックなんだけど長くなるので省きます)。帰国後は、定期的にアイスランドに行きたくなる病にかかってしまい、とはいえそんな頻繁に行けるわけでもなかったので、ああ行きたい。もう一度行きたい。あの圧倒的な自然はすごかったな。美しかったな。あの場所が恋しいな。そして前回は行かなかったあの場所は実際歩くときっとこうだろうな。などと、ずっとぼんやり夢想しており、行きたさのあまり曲も書きました。それがこの『風の唄』です。

noteではこちらの記事からダウンロード可能です↓

2013年の秋、2度目に訪れると、まさにこの曲で思い描いていた景色がそこにあり、本当にこれじゃん!と感動して夢でも見ているような気分でした(この旅行記もけっこうドラマティックなんだけど長くなるので省きます)。

アイスランドでは、踏ん張って立っているだけで後ろにズズズと下がって行くぐらいの強い風がよく吹いています。日本の日常から飛び込むと、指定速度が基本90km/hの舗装道路を走行していてあの風にあおられると肝が冷えます。それに、ハイシーズンを過ぎると道路がすぐ凍るので4WDが必須。無知すぎるナビでオフロードに導いてしまい、ただただ苔と雪だけの人ひとりいない広大なツンドラの大地で車が雪にハマったり、これまた交通量が極小の真っ暗な海岸道路で落石を踏みタイヤがパンクしたりするたびに、「自然を甘く見てはいけない」という言葉の意味を噛み締めました。
アイスランドは言わずと知れた火山国でもあります。1996年にVatnajökull火山が噴火し氷河の一部を溶かし起こった大洪水の凄まじさを物語る、壊れ流された橋の一部「Skeiðará Bridge Monument」の近くで2013年に撮影した写真が、今回ジャケットになっています(photo by Yuri Ishikawa)。

アイスランドで触れる自然の姿は荒々しく力強く、ただただ圧倒されるのです。そして、自然が自然のまま在ること、人間がその自然に合わせて生活する状況に、心のどこかでホッと、言い知れない安心感を抱いている自分に気づきます。

私が出会ったアイスランドの人たちは、困っている私たちを見ると、息をするようにさらっと、とても親切に助けてくれました。パンクで立ち往生した時も、通りがかった数少ない車はみな停車してくれて、タイヤを交換してくれる家族連れ、「アイスランド語でレンタカー会社に取り次いであげるから、うまく事が運ばなかったら私に電話してね」と自分の電話番号を書いた紙を渡してくれる女性、まるで家族のようです。それはたぶん、不用心に自然の中に取り残されると命ひとつなど簡単に飲み込まれてしまうその威力を知っているからなのだと思います。でも、自然に怯えているわけでもない。アイスランドの人たちにとってはそれが当たり前の自然なんだろうな、愛し、敬意を払っているように感じました。自然は「打ち勝つもの」ではなく、その振る舞いを受け入れ、そのもとで調和して生きていくもの、という感じ。肝が座っていて、あたたかくて、かっこよかった。私も生き物としてそう在りたい!と思ったし、自然災害の多い日本に住む人たちにとっても、あの在り方は大きなヒントになるのではないかな。

『風の唄』は、私にとってはアイスランドと自然へのラブレターであり、このうえなく大好きな景色を閉じ込めたものであり、そしてこのうたを歌うとき「人としてこんなふうに生きていたい」という理想の感覚と「私は生かされて前にすすませてもらっている」という感謝を思い出させてもらえる、そんな大切な曲なのです。

もともとは日本語の曲ですが、今回英訳してリアレンジして『Wind's Song』になり、何らかの楽曲を月イチで発表する現在進行中の私のプロジェクト" HMTP"(Hiroko's Monthly Tune Project)の2020年1月度の曲として思い切ってリリースしました。
『ナライブサン』のMVの英語字幕を担当してくれたVickyが英語詞をチェックしてくれました。尊敬する大好きな友だち。Vicky、いつもありがとう!

私の好きなことを歌っているだけだけど、ご一聴いただけたら幸い。雄大な自然に包み込まれて圧倒されるときの喜びのような、安心のような、こんな気持ちが、世界のどこかの誰かと共有できたらもっと楽しいなと思いつつ。

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時間、生命、弥勒世果報(Peace)を軸に曲を紡ぐ沖縄の音楽家。ピアノ弾き歌うたい。大学の専攻は心理学。沖縄戦跡の学びにもコミット。Ninupha Music代表。首里まちづくり研究会事務局 ✉︎hirokoarakakimusic@gmail.com