colabo事件に関するスクラップ(1) シェルター型主体の女性支援撤廃の必要性と、困難女性支援法

以下の文章は、米国シアトル在住のフェミニスト、macska氏によるものである。DVシェルターにおける支援者-被支援者の権力の不均衡について書かれている。

DVシェルターという閉鎖空間そのものが、暴力的なパートナー間の関係とよく似た「権力と支配の構図」−−支援者団体ではDVのことをよくこう表現する−−を再生産してしまっている。(中略) 規則や権力の濫用についていかに被害者が不満を持っても、声を挙げられるような制度的環境が存在しない。また、「管理する側」と「管理される側」のあいだに本来の意味でのカウンセリングが成り立たないことは明らかなのに、シェルターにおいてそれは普通に行なわれている。
マツウラマムコ氏が「『二次被害』は終わらない 『支援者』による被害者への暴力」(女性学年報 第二六号)で書いたような、支援者と被害者との権力的関係は、DVシェルターに限った話ではないし、どのような制度を作ったところで権力の不均衡を消し去ることはできない。

http://macska.org/article/235/

生活保護制度が比較的手厚い(予算を渋る自治体による水際対策という分厚い壁はあるが)日本では、macska氏の指摘の通り、ハウジング・ファーストの実践はより容易であるように思う。

しかし問題は、二千施設近くにまで増殖し、何万人もの人たちを雇用してしまっている現在のDVシェルター産業の既得権益を、どうやって破壊していくかという点だ。

http://macska.org/article/235/

タイトルに「撤廃」と書いたのは他に言葉が思いつかなかったからで、実際のところ、短期滞在のための施設、そして、自立支援移行施設的なものは必要であろうと思う。とはいえ、今の日本の女性シェルターが、被支援者の人権を尊重できる座組に転換できるかといえば、望みは薄いと考えざるを得ない。
ハウジング・ファーストな座組みの良さは、経験上、透明性が確保しやすいことであるように思う。例えば、最初の相談者、住居支援団体、行政のケースワーカー……等、連携はすれど別機関なので、どこかで虐待が生じたなら、別のどこかに相談すれば良い。これは、支援者が衣食住全ての生殺与奪を独占してしまう(=権力関係が強すぎる)シェルターでは難しい。

さて、日本では「困難女性支援法」が制定されようとしているが、これは、いまのところ、どうみたって”DVシェルター産業の既得権益の維持”のためのものなのである。神崎ゆき氏のツイートだが、以下の有識者会議の構成員を見てほしい。

この手の情報を追いかけている人々なら「あー、いつものひとたちじゃん」となる面々である。なお、当然というか、被支援者の政治への動員と不適切な会計でTwitterで連日話題となっているColaboの敏腕経営者、こと仁藤夢乃氏も含まれており、子団体「灯火」を助成対象として推薦している。

DVシェルター型の支援のパターナリズムは、支援対象の職業にまで及ぶ。少なくとも日本において、DVシェルターの運営にはキリスト教勢力の影響が強く、廃娼運動の時代から思想が一歩も進んでいない。結果的に支援から取りこぼされる女性が増える―――DVの相談数が増えているにも関わらず、女性シェルターの利用者は年々減少している―――のは必然といえる。

要友紀子氏は、旧来のシェルター型支援の、そのきわめてパターナリスティックな支援から疎外されてきた性労働当事者のひとりとして「SWASH」を主宰する方であり、中山美里氏は、類似の顔ぶれの人々が成立させたAV新法によって仕事を奪われた/奪われようとしている女優・男優・スタッフさんたちのための改正に働きかけているおひとりである。

AV産業やセックスワークの業界健全化や関係者の人権について、当事者を参加させた国政での議論がまったく行われていないのが現状だと思うのだが。「困難女性支援法」施行前のこのタイミングでColaboの不正会計が明るみに出たのは何かしらの采配としか言い様がなく、この機会に何とか白紙に戻せないものか(土台がダメなので、白紙に戻すくらいで良いと思う)、といったことを考えている。

Colabo事件は論点が多すぎて整理しづらいのだけれども、ある一面から考えたことのメモ。

追記: DVシェルターの利用が減ってるはずがない!という批判記事があったので、ソースを貼っておきますね。。

ちょっと古いけど、こちらのほうが(全文無料だし)読みやすいかもです。なぜ上記の状況が起きるかの説明でもあります。


――つまり、現状は「DV被害者保護の予算が足りない」というより、「ついている予算を有効に活用していない」ということでしょうか。

そのとおりです。婦人保護施設は本来、それを必要としている人を追い返してはいけないのです。医師やカウンセラー、通訳などの予算もきちんとついていますが、十分に使われていないのが現状です。

婦人相談所は、なぜ有効に機能しないのでしょうか。

婦人相談所はもともと売春防止法で検挙・保護された女性たちの更生を目的につくられた施設です。困難を抱えた女性たちの最後の支援組織として機能が拡充されてきたものの、「保護してやる」という意識が払拭されていません。

ということで、「DV相談数は爆増しているが、助成金などで民間シェルターを増やしても、機能させられていない」が現状です。

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