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【定番UXリサーチ手法】活用Tipsをまとめました ~調査編~

こんにちは。atama plusというAI×教育のスタートアップでUXリサーチャー/UXデザイナーをしています野澤です。
atama plusではユーザーにとって価値のある機能や改善施策を提供できるよう、現場では日々様々なUXリサーチ手法を活用しています。先日弊社UXデザイナーの林田が本などでよく紹介されている定番UXリサーチ手法の使い方・気をつける点をまとめてくれたので、加筆して共有します!

UXリサーチには様々な手法がありますが、大きく3つのカテゴリに分けて紹介します。

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本記事では情報を得るための「調査」カテゴリの手法の概要とatama plusでの使い方・実践の際に気をつけていることをご紹介します。



【調査】デスクリサーチ・サーベイ

概要
web上の情報や、論文、文献、書籍など既存の調査結果を収集・分析して、知りたい領域やトピックについてざっくりと現状把握したり、仮説設定の際に参考情報を得る手法です。

使い方・ポイント
atama plusでは課題整理等に取り組む際のアプローチの一つとして実施しています。例えば、インタビューで何を聞くべきかわからない場合や、ペルソナ作る時の予備調査などでデスクリサーチを行っています。くだけた言い方をすると、取り組む対象についてよくわからなかったらまずググる、さらに専門書を読んでみる、ということをしています。それによりベースとなる知識のインプット、インサイト獲得、仮説構築を行います。実践の際には、情報ソースの信憑性に留意する必要がありますが、正式な統計資料だけでなく個人ブログでも、Twitterの投稿でも参考になりそうなものは調べています。教育関連では、コーチングなどの専門的な本を読むこともしています。

【調査】一次資料調査・文書調査

概要
社内で過去に行われたアンケートなどに当たる手法です。

使い方・ポイント
ビジネス部門が顧客に対して行ったアンケートの結果などを見てペインの根拠となるものを探したり、眺めてヒントを得たりしています。

【調査】ベンチマーキング

概要
競合など他のサービスを調査する手法です。

使い方・ポイント
新しい機能や大きめの改善を行うとき、コンセプト設計など方向性を見定めるために使っています。UIデザインの参考にするために行うこともあります。まとめ方としては、複数のサービスを雑多に見ていきながら徐々に観点ごとに特徴をまとめるようにしています。表面的な機能や内容をなぞるのではなく、その裏にある意図まで読み取る努力が必要だと考えています。
競合に当たるだけでなく、全く違う業界で似たようなサービスを見ても新しい視点が得られます。例えば、資産管理サービスを観察して生徒の管理ページの事を考えることもあります。

【調査】認知的ウォークスルー

概要
あるタスクに対してユーザがどのような行動をとるかということに着目し、想定される操作手順を専門家が辿ってユーザービリティを評価する手法です。

使い方・ポイント
主に、ある機能やサービス全体を包括的に評価し、ユーザビリティの観点で問題がないかどうかを評価するために行っています。アジャイルの開発プロセスでは日々小さな改善を積み重ねることが多いですが、一旦立ち止まり全体を俯瞰して課題を洗い出す場合や、しばらく手を付けてなかったものにしっかり取り組んでいくタイミングで行うことが多いです。ユースケースや目的が不明確なまま作られた画面や機能を見つけた場合には、以前の担当者、カスタマーサクセス部門やユーザーにヒアリングを行い不明点を解消するようにしています。


【調査】ドッグフーディング

概要
自社サービスを自分たちで使ってみてインサイトを得る手法です。

使い方・ポイント
かなりライトにインサイトを得ることを目的として使っています。この手法単体で行うよりも、課題整理のアプローチの1つとして実践しています。特に課題がなくても、日頃から自分たちのプロダクトを触るように心がけています。ユーザーを憑依させるイタコになるイメージですが、実際には難しいのでここで得たインサイトは本当にそうなのか別の手段で試すようにしています。前述の認知的ウォークスルー調査との違いですが、タスクを事前に定義してその中の一連の流れを点検するのが認知的ウォークスルー、実装されたサービスを自分たち自身で自由に使い倒して課題把握やインサイトを得る手法もしくは姿勢がドッグフーディングと考えています。


【調査】ロールプレイング

概要
使われる状況を設定し、シナリオに沿ってユーザーに使われる状況をシミュレーションしていきながら、気付きや改善ポイントを把握していく手法です。

使い方・ポイント
ユーザビリティテストとの違いとして、ユーザビリティテストはターゲットユーザーに対して行う前提、ロールプレイングは社内で事情に明るい方などに演劇的なシミュレーションとして行い気づきを得ることが可能と考えています(ターゲットユーザーに対してロールプレイングをお願いすることもあります)。


【調査】インタビュー

概要
人に会って話を聞く手法です。

使い方・ポイント
基本的には何らか確かめたいことがあって行い、仮説の確かめと課題発見、どちらの場合にも有効だと考えています。ユーザビリティテストなどユーザーが関与する手法の中でインタビューは実施時間も短く、準備も少なく済むので比較的ライトな手法としてよく活用しています。インタビューとヒアリングは似ていますが、インタビューはしっかり準備して行い、ヒアリングはもっとライトに行うものと捉えています。また、ユーザーに聞かなくても社内で事情を知っている人に聞くだけで十分の場合も多々あります。毛色は違いますが、有識者にインタビューする場合もあります。基本的にインタビューは半構造化インタビュー(事前に大まかな質問リストを作成し、ユーザーの回答に応じて深掘りするインタビューの形式)で行うことが多いです。
しっかりとしたインタビューを行う際は、インタビュアーと書記の二人一組で行うようにしています。録音や録画の書き起こしは作業として負荷が高いのであまりやっていません。
実施のポイントとして、インタビューを聞いた後に、参加者同士でデブリーフィングを行う事も重要視しています。記憶が新鮮なうちに、お互いの解釈を伝えて齟齬が無いか確かめるようにしています。ご飯を食べながらすることもあります。インタビューする人数ですが、仮説の確かめでインタビューする場合、1つのことを確かめるのに最低3人、理想的には5人に聞くようにしています。ただ現実には難しいことも多いので、とりあえず2人やって、もっと違う話が出てきそうということであれば1人ずつ増やして行く場合もあります。


【調査】サーベイ(アンケート)

概要
質問表に対して多くの人に答えてもらい分析を行う手法です。

使い方・ポイント
実行するのは時間的にも金銭的にもかなりコストがかかるので、かなり大きい検討で、量的にしっかり裏を取りたいときに使っています。実施する場合は予備調査としてインタビューをすることが多いです。

【調査】現場観察(フィールドワーク)

概要
実際の現場に行って、何が起きているのかを観察する手法です。

使い方・ポイント
主に課題発見のために行っています。リリースしたてでよくわからないものや、漠然と課題認識はあるが具体化出来ないときや、プロダクトの提供価値を拡げるために、まだ顕在化していない課題やニーズの発見が必要なときに使っています。現場に行く際は、予めあたりをつけて行った方が有意義になる可能性が高いので、デスクリサーチ、サーベイ、ベンチマーキング、ドッグフーディングを先に行っておくようにしています。現場によって何かが異なる可能性があるため、極力3箇所以上行くよう心がけています。


【調査】データによる現状分析

概要
Web解析ツールやプロダクトデータベースのデータから分析する手法です。

使い方・ポイント
あるペインに取り組む際に、それはどの程度課題なのか?という量的な把握や、課題に対する理解度を上げて見たときにどのあたりが一番課題なのか?を比較して見たりする際に役立ちます。学習体験に関するものだと(許諾を得た上で)学習行動データを見ることもあります。



以上、atama plusで実践している定番UXリサーチ手法(調査編)の使い方・ポイントをご紹介しました。ケーススタディとして、少しでも現場での実践のヒントになれば幸いです!

(整理・検証編も公開しました)



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