ここから原油は急騰か急落か?~ドル円は円キャリー再開の可能性
イラン、イスラエルへ大規模爆撃
昨晩noteに「イラン、イスラエルに爆撃準備」と書きましたが、直後爆撃が開始されました。弾道ミサイル約180発をがイスラエルに向けて発射されたとイスラエル軍が発表しています。7月にはハマスの最高指導者ハニヤ氏が暗殺され、9月にイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ナスララ師が空爆で殺害されており、一連の報復と見られますが、落下片でイスラエル人2人が負傷、パレスチナ人1人が死亡と報じられており、映像の派手さから鑑みると被害は限定的との印象です。軍事、地政学に詳しいわけではありませんが、メンツを保つためのパフォーマンス的な意味合いが強く全面戦争を望んでの攻撃ではないように見えますが、イスラエルの反撃がどのようなものになるかですね。イスラエルが好戦的な報復に出ると泥沼化しそうではあります。
原油は事実売りが出るも高止まり?
俯瞰してみればレンジ内の値動き
やはり、爆撃準備といった有事勃発直前の原油急伸は事実確認とともに利食い売りに押され長い上ヒゲがつきました。今日10/2(水)も原油は続伸の様相ですが俯瞰してみれば上昇トレンド化しているわけではなく、レンジ内の取引に収まっています。この後のイスラエルの報復、さらなるイランの報復と戦況悪化となり実際にイラン原油供給への不安が具体化すれば、原油は上昇していくと考えれれますが、現状ではイスラエル攻撃の被害も限定的、原油供給に影響が出ているわけでもないということで、マーケットはまだ冷静です。
OPECプラス、12月から増産の計画に変更なし
OPECの協調減産、常にその遵守率が問題視されるのですがまたもロシアが生産枠を守らず問題となっています。ロシアが協調減産に非協力的であることが原油価格の低迷につながっている~サウジがその分自主減産枠を拡大して原油価格を支えているという構図ですが、これ、前にも見た光景です。とうとうサウジの堪忍袋の緒が切れるかも?!
サウジアラビア、原油が50ドルに下落すると警告
サウジ、原油50ドルに下落と警告 OPECプラスが協定軽視なら
10月3日 01:14 WSJ紙
これが脅しにとどまればいいのですが、サウジはOPECプラスとの協議で他の産油国との協議が難航するとブチギレて増産表明し原油価格を暴落させた実績があります。実績と言って良いのかわかりませんが、原油価格暴落は産油国にとって財政悪化リスクです。そうなってもいいのか?と減産枠遵守を求めているのですが、守らない国がある、と。
下記チャートは2012年~2021年の原油価格推移、赤い吹き出しがサウジが関与し、原油を暴落させた事例ですが、特に2020年はパンデミック勃発の中、OPEC協議が決裂してサウジが怒りの増産表明をしたことで、原油価格はなんと▼40ドルまで落ちていきました。マイナス40ドルですよ?市場をパニックに陥れたのです。この時たしか米トランプ政権に抗議され慌てて増産撤回を表明したことで原油価格は持ち直したという経緯があったかと記憶しています。この時もやはりロシアへの怒りからでした。
原油価格が果たしてどちらに動くか、現時点での予想は困難ですが、原油上昇はインフレ再燃につながり、景気刺激策としての利下げを困難にし、米国はじめ世界のリセッションリスクを高めますので、原油価格は安定して推移してくれることが望ましいですね。
ドル円急伸、円安圧力の高まりに加えドル金利上昇で
結局ドル円騰がるんですか…昨日の地政学リスク警戒での円高はノイズでした。今日144.21円で買いなおしています。理由は日米双方から出てきました。利上げ、引き締め、緊縮の印象が強く、総裁選勝利の瞬間に3円の円高をもたらした石破総裁ですが、石破内閣発足で閣僚等の発言も出てきましたね。まずは赤澤経済再生担当相。これは昨日10/1の発言です。
そして加藤財務大臣。
そして、石破首相。今日日銀植田総裁と面会。
あれ?首相になったらずいぶんトーンが変わりましたね。著書で日銀による異次元金融緩和下で「国家財政と日銀財政が悪化した」等と言って批判していたのですが、マーケットの洗礼がよほど堪えたのか?
これで、日銀の拙速な追加利上げはないとの思惑が市場に広がったものと考えられます。足元で日本の市場金利は低下バイアスが強まっています。
加えて、ドル金利は上昇基調に回帰しています。昨日は地政学リスクの緊張を背景に債券買いが旺盛となり金利が低下していたのですが、有事勃発で事実売りとなっている側面もあろうかと思いますが、今夜の経済指標が主因。
9月ADP雇用統計:+14.3万人
(予想:+12.5万人、8月:+10.3万人←+9.9万人)
伸びは8月から予想以上に拡大し6月来で最大。8月分も+10.3万人と+9.9万人から上方修正されています。
労働市場が良好なら、パウエル議長が言うように利下げを急ぐ必要はないわけです。市場は11月FOMCでも0.5%の利下げがあるだろうと織り込んでいましたが、9/30のパウエルFRB議長講演での「利下げを急がない」発言から急速に11月FOMCでは0.25%の利下げに留まるとの見方が台頭、今日のADP雇用統計で更にその確信を強めたようです。黄色のラインが日米金利差、ADPがでた直後金利差が拡大(ドル金利上昇)ドル円も上昇を加速させています。
地政学イベントが想定より金融市場に影響がないとなれば、市場は再び米景気動向と米利下げ速度に関心が戻ります。今週の雇用統計がADPが示唆するように強い数字となるなら、ドル金利はさらに上昇する可能性がります。また日本の利上げリスクも遠のいた、と市場が受け止めるならドル円相場は今度こそ200SMAに向かって上昇するかもしれません。日本の金融政策がタカ派でなくなるというなら、円ロングの手仕舞いによる円安が加速する可能性も高いですね。最新のIMM通貨先物ポジション、投機筋は6.6万枚ものネット円ロング状態。スワップコストも大きいポジションですが、巻き返されれば相応のドル円上昇が見られそうです。
欧州、ECBは利下げを急ぐ可能性?
下げを急げばインフレの再燃リスクということですが、インフレが2%を下回りそのリスクを警戒するよりあまりに悪い欧州景気をなんとかしましょうよ、という話になっているようです。今月も利下げしそうですね。
主要国では最も金利が低い欧州(日本BOJとスイスSNB除く)
これを眺めているとユーロは売りだよなぁと思いますね。
ECB政策金利は現在3.65%。
ユーロドルチャート、Wトップ完成で下落なら下げ幅を拡大する可能性。