『翡翠城市』感想

『翡翠城市』フォンダ・リー 新ハヤカワSFシリーズ 2/23読了

世界幻想文学大賞を受賞したSFアジアン・ノワール。早川書房のサイトによると、21世紀版ゴッドファーザー×魔術と謳われているとのこと。

舞台はケコン島。シチリア島のようにマフィア(本書では組織と表される)に支配される島で、中国……おそらくは香港をイメージしていると思われます。

組織はもともとはケコン島を支配していた帝国から独立するための抵抗組織で、組織の戦士たちは翡翠を身に着けて戦っていた。ケコン島産出の翡翠は不思議な力を秘めており、訓練も何も受けずに持つとその魔力に侵されていしまう。翡翠を手なずけ、その力を利用できるのはケコン島の住人のみ。帝国からの独立を果たした後、組織は分裂し、現在は名家コール家の無峰会とアイト家の山岳会が勢力を二分している。

翡翠城市は無峰会を中心に描いていて、21世紀版ゴッドファーザーと言われているとおり、抗争、陰謀に彩られた血なまぐさいお話です。

翡翠を使っているとはいえ異能力者の戦いなんて私の大好物だし、そして翡翠自体も好きだったからと手に取りましたが、思った以上に血なまぐさかった。
作中では翡翠を持つ戦士はグリーンボーンと呼ばれていますが、このお話はシリーズ化されていて、シリーズ名は「グリーンボーン・サーガ」。グリーンボーンたちの大河ドラマといったところかな。
私の好みよりはずいぶんと硬派なお話ですが、キャラクターがとても魅了的です。

実は作者名は見ずに手に取って、読んでいくうちに女性についての描写がとても女性的だなあと思っていたら、やっぱり作者は女性でした。抗争のシーンとかは特にそういうのは感じなかったんだけど、なんでそんなこと思ったんだろう。

ともあれ、コール家のヒロ、シェイ、アンデン、ウェイ、彼らの行く末もケコン島の行く末もとても気になるお話でした。


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