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空の色

空を眺めるのが好きです。
同じようでいて毎日色を変える空も、風に流され、刻一刻と形を変えていく雲も好き。
雲一つない空の写真を撮ったときにも、画面の端と端では色も光も違う。
昨日と同じ場所で昨日と同じ時間に、昨日と同じような天気の日に見上げたとしても、空の色はまるで違う。
同じように見えて、でも同じじゃない空。

中学、高校とバスケ部だったんですが、体育館はほかの部と共同で使っていたので、体育館の使えない日には外で筋トレや走り込みをやっていました。
中学の頃はただきついばかりで他を見る余裕がなかったんですが、高校になってから、走り込みをしているときに周りを見る余裕が出てきたんですよね。
中学の頃のマラソンのコースは平坦な道だったけど、高校は山の中腹だったから、山あり谷(?)ありのコースだったこともあるのかな。坂の多いきついコースから気をそらすには、空を見上げるのが一番手っ取り早かった、というのがたぶん最初。

そうしてある日空を見上げたら、深い真っ青な空、ぽっかりと浮かぶ白い雲。まるで絵の具で描いたかのような鮮やかなコントラスト。
その雲が風で流れて形を変えていくのを見るのが好きでした。

ボールを追いかけて走るのは好きだったけどただ走るのは好きではなかったので、そういう意味でも気をそらすのに空を見上げるのが良かったのかもしれない。

旅行をしているときに、その土地土地で空を見上げるのも好きです。
夜空を、星を見上げるのも楽しいし、夕焼け空も楽しい。
ああ、この場所は山に陽が沈むんだ、ここは海に沈むんだ、なんて思いながら少しずつ色を変える空を見るのもとても好き。
新幹線に乗っていたらたった数時間のうちに、同じ晴れでも場所によってこんなに空の色が違うのか、と驚くほど、いろんな空を見ることが得切るのも楽しい。

飛行機で空を見るのも大好きです。例えば台風なんかのときはともかくとして、たいていの場合、雲の上に出てしまうから上空ではとても綺麗な空が見える。
だから、私は飛行機に乗るときにはなるべく窓際を選びます。できるだけ翼の真上ではないところを。
そして空の上で青い青い空と眼下の雲の写真を撮るのです。何枚も何枚も撮っちゃうので、たぶんこの人は変な人だって周りからは思われてると思う。

空ばかりではなくて、飛行機から見る雲もとても楽しい。
うすーいベールのような雲を透かしてはるか下の地面が見えるときもあれば、雲の形の影が地面に落ちているのを見ることもある。まるでそこに降り立つことができるかのようなもこもこの厚い雲を見ると、子供のころに雲に乗ってみたいなんて思ったことを思い出します。
読みかけの本だったり、飛行機のなかで流れる洋ドラだったり、気をそらされることもたくさんあるんだけど、陽が当たって暑くてしかたがないとき以外は結構な時間、空を見ているような気がします。

そしてずっと忘れられないのが、学生のころに見た夕焼け空です。
夏休みに仲のいい友達と九重にキャンプに行きました。キャンプ場に泊まり、翌日は九重の一番上のところまで登り、そこで見た空もとても素敵だったけれど、今でもはっきりと思い出だせるのは、その帰りに阿蘇で見た空の方。
山登りなんてなれないことをしたからきっと明日は筋肉痛だ、だったら帰りに温泉に入ろう、と黒川温泉に行き、それでもまだ帰りたくないって言いながら阿蘇の大観峰に行ったとき。

大観峰に着いたときにはもう夕方で、でも九州は陽が暮れるのが遅いからその時点ではまだ空は青かったんですよね。爽やかな夏の空。
けれど陽が落ち始めてからはあっという間だった。
空に残るスカイブルー。それより少し色の薄れた水色。徐々に染まり始めた淡やかな黄色、薄く色づいた桜の花びらのような色、茜色、橙、ラベンダー、紅色、朱色、他にも名前もわからない色が鮮やかに空を染め上げて。
夏の青い空から夕焼け空、そしてもうすぐ星が輝きだす藍色や紺色までのさまざまな色。

あのとき一緒に行った友達とはもう連絡は取っていないんだけど、あの空を思い出すと一気にあの頃がよみがえってきます。
彼らは、彼女は、あの空を覚えているでしょうか。

私にとっては、永遠の空なのです。

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