マネジメント視点でのAI技術の活用について

最近、今後の働き方はどうなるのだろうとよく考えます。特に昨今のLLMなどのAI技術の発展はとても速く、今後の働き方に大きな影響を与えるように感じます。

結構前にこういうレポートを見ました。

ChatGPTなどのAI技術によって労働時間が減るという趣旨の内容です。
USでは10年以内に28%の労働者が週4日勤務になり、71%の労働者が少なくとも10%以上、労働時間が減るという予測です。UKでも、同じく10年以内に28%の労働者が週4日勤務になり、88%の労働者が少なくとも10%以上、労働時間が減る、とのこと。

私の親の世代では、日本では週6日勤務が当たり前でした。日本で週休2日が広まったのは1980年代後半かららしいです。もう40年以上も経っているので、AI技術の浸透と関係なくそろそろもう一日ぐらい減ってほしいなと思います。

先日、ChatGPTで私の働き方がどう変わったかという内容を書きました。

私の周りでも仕事の幅を広げている人、業務時間を減らしている人はそれなりにいます。特に、プログラミング的な思考をして物事を分解するのが好きな人は活用されている印象です。

ただ、今起きている変化はまだまだ個人レベルのように感じます。いくら個人の生産性を上げても、それを全体のパフォーマンスの向上に昇華させない限り、組織・チームとして大きなインパクトを生むことは難しいと思います。マネージャーの観点で考えると、AI技術による個人の働き方の変化を理解し、それをチームのパフォーマンスにどう昇華するか、そのためにどう組織設計をするを考える必要があります。これから起こる変化を正確に予測することは難しそうですが、私自身が自分の役割を試行錯誤した内容を元に考えてみます。

より小さなチームに

ChatGPTを使っていて強く思いますが、一人でできる量や範囲が広くなります。自分でやり方が全く分からないようなものについては、現時点ではAIはあまり助けになりません。一方で、自分で良し悪しが判断できる、やり方はわかっているが時間がかかるという類のタスクはお願いできることが多いです。

下記のGoogle Japanの調査によると、Bardでは日本では専門的なアドバイスを求める、調べもの、プログラミングに関するものが多いようです。

何か情報収集する場合にはその正しさを適切に判断できる、プログラミングであれば出力されたコードを自分で読んで確認できるのであれば、LLMはその作業効率に大きく貢献してくれます。

一人でできる範囲が増えれば、当然ながらより小さなチームで同じ成果を出すことができます。感覚的には少なくとも半分以下、場合によっては数分の一にはなるように思います。関係者が数分の一になれば、コミュニケーションコストは劇的に下がり、素早く何かを決めて実行できる柔軟なチームになります。

より流動的に

分業が進んでいると、できる範囲とできない範囲が、役割的にもスキル的にもはっきりとしてきます。その結果、範囲を超えた仕事が段々とできなくなり、自分の領域外のことはその範囲の専門の人にお願いすることになります。ただ、ある人にとっての領域外のことが、その領域の専門家にとって、本当にその専門性が必要なことはそう多くないと思います。

ちょっとしたデータ分析をするのに、データサイエンティストの最大限のスキルは全く必要はありませんし、小さな運用ツールを作るのにシニアエンジニアのスキルが必要なことも少ないです。このような、自分ではできないがプロの100%の力が必要という仕事は日々とてもよく目にします。

私自身、PMという役割から何かをお願いすることが多いのですが、専門性を必要としないことをお願いするのは毎回とても申し訳ない気持ちになります。必要とはいえ、大体はプロにとってやりがいのない仕事だったりします。

このような、"できないが必要"と"できるがやりがいがない"をAIが埋めることで、専門的なスキルを持つ人の時間を不必要に使う必要がなくなります。結果として、そのような専門性をより多くのプロジェクト・組織の本当に必要な場面で活かすことができます。これにより、全体最適の観点でAI技術を活用する組織においては、チームの在り方がより流動的になると思います。

マネジメントの役割がより重要に

単に個人レベルでAI技術を活用しても、全体最適化された、より小さなチーム、より流動的なチームには自然にはならないと思います。当然ですが、その変化を推進するためにはマネジメントの役割がより重要になります。

まずは、マネージャー自身も変化に適用していく必要があります。それぞれのメンバーができる範囲を理解する際、その人が自分自身でできることだけではなく、AIの助けを借りて最大限できる範囲を理解する必要があります。このためには、日々進化し続けるAIでできること・できないことを理解し続けることが前提になります。

さらに、より少ない人数で成果を上げようとすると、自分自身もできる範囲を広げる必要があります。マネジメントは自分で作業しない方がよい、マネジメント業務に徹するべきという考えもありますが、生成AIの浸透によって、その程度は変わると思っています。簡単に使えるAIで簡単にできることを誰かにお願いするのは、メールを送信するのを誰かにお願いするのと同じ程度のことになっていくように感じます。

つまり、メンバーだけでなく自分自身もAIを活用し、AI活用を前提にしてそれぞれの人の能力を見極める。その上で本当に人の専門性が必要なところを理解し、高い専門性を持つ人たちの貴重な時間を無駄にしない。そのようなマネジメントが求められるのではないかなと思います。

そして、自分のチームだけではなくより大きな視点で考えた時、マネージャーがAIを活用した新たな全体最適の視点を持てるか、ということはマネージャーをアサインする際にもとても重要になってくるのではと感じます。

まとめ

マネジメントの観点で、LLMなどのAI技術をどう活用していくかを考えてみました。

  1. より小さなチームに

  2. より流動的に

  3. マネジメントの役割がより重要に

技術の進化を個人の最適化に役立てるのは個人のスキルですが、チームや組織の観点で役立てられるかは、マネジメント次第です。いずれの変化も全くこれまでと異なるような非連続的な変化ではないと思います。ただ、ChatGPTなどの性能を考えると、その変化のスピードが今までよりもとても速く感じます。私はスタートアップで働いていて、望む望まざるに関わらずに仕事の量とスピードを上げる必要がありました。結果として、1年前に比べてやっている仕事の量や範囲は少なくとも2倍以上なりましたし、チームのそれぞれの人の役割も大きく広がりました。

この一年で起きた私と今の会社で起きたポジティブな変化は、そうせざるを得なかったという外的要因によるものです。今後は内的要因から再現性を持って変化を推進できるようにしていきたいです。そして、週4日勤務、もしくはそれ以上に向けて少しでも貢献できるといいなと思います。

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