DXの中で顧客体験をどう設計していくか

LINE AI Dayという法人向けのイベントで、ヤマトホールディングでデジタルシフトをリードされている執行役員 データ戦略担当の中林さんとセッションさせていただきましたので、フォローアップ的にその内容を書いてみます。

セッションの概要はこちらです。

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まずリアルタイムでみていただいた方はありがとうございます。もしご興味のある方は、上記サイトにてアーカイブ動画が用意されるので、ご視聴いただけるとうれしいです。7/30中にはアップされる予定です。(冒頭、自分でもびびるほどに私自身が硬いのは目をつぶってくださいw)

さて、DXという言葉は最近特によく聞くワードですが、デジタルトランスフィーメーションの略で、企業がデータやデジタル技術を活用して、事業や組織を抜本的にアップデートしていく一連の活動のことです(詳しい定義はwikipediaにお任せします)。toC向けのインターネットサービスをずっとやっている身としては、サービスそのものがデジタルでデータの塊なので、改めてその重要性を叫ぶこと自体に違和感を覚えていたりしましたが、大部分の非インターネットサービスでは、まだまだアナログが残っていて、かつ効率化することで化ける(効果の高い)宝の山がまだまだ多く眠っています。

デジタル化の対象は、サプライチェーンマネジメントをどう最適化するか、などの基幹系から始まり、顧客接点・インターフェースなどの情報系まで含めて基本的に企業活動のあらゆるところが対象ですが、今回のセッションでは顧客接点の部分にフォーカスをして、その顧客体験をどう設計していくのかについて、主にデータを軸にしてお話をさせていただきました。

(セッションの枠として、音声応対AIサービスLINE AiCallのトラックでの議論であったため、このソリューションに照らし合わせた内容になっていることはご了承くださいませ)

1. 企業戦略とエンドユーザーの両方の視点を持って顧客体験を設計する

顧客体験の設計においては、企業戦略とエンドユーザーの2つの視点が必ず必要であると。toBサービスばかりやっている人はエンドユーザーの視点を忘れがち、私みたいなtoCサービスばかりやっている人は企業戦略の視点を疎かにしがちな印象です (個人的な印象です)

どちらが欠けてもダメで、ヤマトさんの例ですと、全体の経営戦略の中でデータドリブン経営という方針が掲げられていて、その中で必要なデータ構造が設計をされ、そのデータ構造・パイプラインに実データが流れるように顧客体験を設計されていると。そして、それは統一的なアカウントマネジメントの元で整理され、ユーザー理解、そして最適なサービスの提案に活用されているということでした。

一方で、エンドユーザー視点でペルソナを設定して、カスタマージャーニーを作ってエンドユーザーの視点で顧客体験を設計をしていく。ヤマトさんのLINE公式アカウントで実現されているねこ語は、まさにその最たる例だと思いますが、このような温かみのある体験は、企業戦略からブレークダウンしても具体化には中々至りにくそうですよね。なので、エンドユーザーの視点でも顧客体験を考えることはとても重要だと思います。

したがって、企業戦略の視点とエンドユーザーの視点、この両方の視点を持って顧客体験を設計することがとても重要になってくる、というのが1つ目です。

2. デジタルインターフェースはマルチに、データはワンソースに

まさに、言うは易し行うは難し、ですが、実際に行ってらっしゃる方から言われると重みがあります。

ちょっと横道にそれますが、LINEのAI技術は、エンドユーザーによりそうインターフェースを提供するサービスが多くあります。例えば、LINE AiCallはまさにそのカテゴリに属するソリューションで、アナログな電話応対をAI応答でデジタル化をするためのものです。普段、電話でお問い合わせをいただいているのであれば、それを無理に"これからはアプリでやってください"というのではなく、電話は今まで通りしていただき、その受け答えをデジタル化する。いわば、ユーザーがコンピューターに合わせるのではなく、コンピューターがユーザーに合わせるためのソリューションですね。

これまでのデジタル化では、インターフェースはアプリやWebなどタッチ・クリックを中心にしたものでしたが、音声認識や自然言語処理の精度向上により、よりヒューマンライクな受け答えをデジタル化できるようになってきました。これに伴って、これからデジタルインターフェースのバリエーションがさらにマルチになっていくのは自然な流れかと思います。

その際に、インターフェースはマルチになりエンドユーザーには便利になったけど、データはフォーマットもバラバラ、保管場所もバラバラでは意味が薄いですよね。まさに前項で書いた、企業戦略の視点が欠けている状態です。

したがって、デジタルインターフェースをマルチにし、その増えるデジタルインターフェースを見越したデータ設計をする、これが2つ目です。

3. 体験のパーソナライズ

情報をパーソナライズする、というのは当たり前で今更言う必要もないですが、今後は、一歩踏み込んで体験のパーソナライズが重要になってくる、というお話をお伺いしました。

上でも例にあげた、LINE AiCall (AI電話応対ソリューション)を例に挙げると、今まで、例えばアプリで集荷の依頼をすると何を入力したのかはわかりますが、どんな気持ちで入力したのかを理解するはほぼ不可能でした。一方で、電話の受け答えをデジタル化すると、エンドユーザーがどういう気持ちで話しているのか、会話の初めと終わりで声色にどんな変化があったのか、はたまたどういうスピードでしゃべっているのか、などがわかるようになってきます。

つまり、エンドユーザーにより近いインターフェースを提供することで、より深いユーザー理解ができるようになるということですね。その結果、エンドユーザーにとって最適な応対ができたのかを、アンケートやlike/dislikeでfeedbackをいただかなくてもわかるようになりますし、ユーザーの喋るスピードや"間"に合わせて、AIの喋るスピードや"間"も変えられます。

それによって、シンプルにミラーリング効果的にエンドユーザー毎に異なった、寄り添った体験を提供することもできますし、実際のやりとりの状況から自動で判断された満足度の情報を元に、より心地の良い話し方をチューニングしていくこともできます。

また、インターフェースがマルチ化する中で、最適なインターフェースを自動で選ぶという観点も重要になってくると考えられます。例えば、普通はアプリプッシュでお知らせしている情報でも、電話を好む方に対してであれば、緊急性の高いお知らせは電話でお知らせする、などです。

コンテンツ(情報)のパーソナライズを超えて、その情報をどう伝えるのか、どういう手段で伝えるのか、という体験自体のパーソナライズする、そしてそれが効率的に最適化される仕組みを設計する、これが3つ目です。

4. AIと人で学び合う

将棋や囲碁などでは、当たり前になってきていますが、業務においても一般的になってくるであろうというお話をお伺いしました。先の電話応答であれば、良い受け答えをLINE AiCallから学ぶ、という具合ですね。

LINE AiCallがその道のプロフェッショナルの方の応対を上回るのは、まだまだ先だと思います(ソリューションの進化を進めれば進めるほど、人のコミュニケーション力の奥深さを気づかされますw)。一方で、例えば電話応対をするチームが、ある瞬間において全員がスーパープロフェッショナルという可能性は低く、新人の方が入られたり、配置転換で一時的にその業務でのスキルがジュニアな方がいる状態もあると思います。

そのようなチーム全体でみた時のパフォーマンスのバラツキやデコボコを、LINE AiCallのサポートで埋めていく。まさに人の置き換えではなく、共存している状態で、人の進化を手助けするような状況が理想かなと思います。できないことをお互いで埋め合うのではなく、できることをさらに高次元にするために共存する状態にまでなれば、AIの応答も人での応答も次の次元の顧客体験になっていくのではないかなと思います。

ユーザーにより近い点でインターフェースをデジタル化する際には、そのインターフェースでの顧客接点のパフォーマンスを可視化し、人が学べる状態にするということなのですが、これは今までの3つと異なる次元のチャレンジですね。

人が学べるアウトプットとは何か、学んだことを逆にどう測定するか、など、実現に向けて頭をひねる要素は多くありますが、第一歩として応答のパフォーマンスを、2つの視点(企業戦略 & エンドユーザー)で測れるようにすること、これが重要だとと思います。

最後に

自分の登壇セッションに対して、セルフフォローアップの記事をかいてみました。30分の会話で、DXでの顧客体験のエッセンスを整理できたのではないかなと思います。

今回、ヤマトホールディングスの中林さんとセッションさせていただきました。LINEのユーザーベース、AI技術、そしてヤマトさんの膨大なフィジカルリソースを掛け合わせることで、DXにおける顧客体験の良い事例を作れるのではないかなと思っていますので、今後の展開をご期待くださいませ!

そして、最後にお仕事としての宣伝ですが、LINEのAI技術や、顧客体験を設計に対する考え方にご興味を持っていただいた方がいらっしゃいましたら、私のLinkedInにメッセージいただくか、LINE AIサイトから問い合わせくださいませ!



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