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レッズが示した不屈の闘志 優勝候補は俺たちだ!

凄まじい試合だった。

9月30日に行われた、トッテナムホットスパースタジアムでのスパーズ戦。

ファイナルスコアは2−1とホームチームの勝利。

同日ランチタイムの試合でシティが敗れていたため、唯一の無敗対決となった試合はスパーズに軍配が上がった。これでスパーズは同日終了時点で2位に浮上。対するリヴァプールは勝ち点を積みませず、4位に後退した。

ところが、である。試合後に抱いた印象は結果と180度異なり、昨季5位でCL圏を逃し、夏には不動のキャプテンをはじめとした中盤の主力たちが揃ってチームを去ったリヴァプールが、今季のプレミアの優勝候補に名乗りを上げたことを示した試合となったのではないだろうか。

それほどまでに、この試合におけるレッズの選手たちの闘志は凄まじかった。

試合は序盤から、スピード感溢れる展開の連続。攻守が目まぐるしく入れ替わり、守備者にとっては1つのミスも許されないような、ヒリヒリした展開が続く。互いに高度な守備陣のスキルをもって、迫りくるハイプレスをかわし、スパーズはマディソン、リヴァプールはマクアリスターの両10番を経由しチャンスを作り出す。

そんな中、より効率的にゴールを脅かすのはリヴァプール。特にサラーに質的な優位性のある右サイドを中心に、ロングフィードを駆使しつつ、ゴールに迫っていく。一方のスパーズはリヴァプールの組織されたハイプレスに苦しむも、カウンターで時折アリソンを脅かす、お得意の形を披露。アウェイチームが主導権を握りながも、決して楽にはプレーさせない、白熱したゲームとなった。

そんな展開を変えたのが、前半26分のレッドカード。リヴァプールのインサイドハーフにポジションし、プレスのスイッチ役にもなっていたカーティス・ジョーンズが退場となってしまう。
このシーン、確かにジョーンズの足裏が相手MFビスマの足首に入ったものの、故意性は感じられず、むしろボールの上に足が乗ってしまい、転がった結果相手の足を踏んでしまった、という印象を受けた。オンフィールドレビューが足裏で踏んでいるシーンから始まる等、VAR側に意図があったようにすら伺えるのは穿った見方か。とにもかくにも、やや厳しいと言わざるを得ないジャッジで、リヴァプールは今季3度目となる10人での戦いを強いられる結果となった。

その後、ガクポを右に出し、サラーを中央にもってくることで、ジョーンズの穴を埋める選択をしたリヴァプール。
ただこの変更で右サイドの質的優位性を失い、また1人足りない中盤での主導権争いも劣勢となり、マディソンが前を向くシーンが急増。ボールが回るようになり、スパーズが押し込み始めた。

ところがゴールネットを揺らしたのは、もはや10人の戦いに慣れつつあるリヴァプール。
34分、ゴメスのスローインをサラーが粘り、相手DFを背負いながらもスルーパス。そこに走り込んだルイス・ディアスがDF1枚を振り切りシュート。完璧にコントロールされた鋭いシュートはゴール右隅に吸い込まれ、リヴァプールが先制したかに見えた。
ところがここで事件が起こる。VAR担当と主審とで、伝達ミスがあり、判定はオフサイド。オンサイドと伝えたVAR担当の声を、主審がオフサイドと解釈し、そのまま判定は動かず、ゴールが取り消された。このシーンは直後から論争が勃発する等、大騒動に発展しており、成り行きを見守る意味でもこれ以上の言及は避けたいが、10人ながらも先制点を叩き込んだ、気迫のこもったスーパーゴールを、記録から抹消する結果になったことだけは事実だろう。

そして直後の36分、今度はマディソンのパスから「にっくき」リシャルリソンに仕事をされ、ソンフンミンが先制点をゲット。ニューカッスル戦同様、10人で1点を追う苦しい展開となった。

不可解な判定での数的不利、誤審での先制点の取り消し、さらに直後に1点を失い、となるとモチベーション管理が困難なところだが、ここで崩れないのが今季のリヴァプール。いつの間にやら中盤のスペースを確保し始め、カウンターでしっかり応戦。そしてなんと前半のうちに、同点弾を決めてしまう。

起点となったのは、ソボスライ。敵陣それほど深くないところからだったが、セットプレーの流れで残っていたファン・ダイクとマティプのツインタワーめがけてロングボールを供給。キャプテンが狙い通り競い勝ち、エリア内にいたガクポが反転しながら右足一閃。ゴール中央に叩き込み、スコアをタイに戻した。このプレーでガクポは負傷し後半からはジョタに交代。試合後には松葉杖姿が見られたなどの情報もあったが、怪我と引き替えに大きな大きな同点弾を残してくれた。


試合が後半に入ると、運動量を上げてきたスパーズにやや押し込まれる展開に。ところがキーパーアリソンが幾度となく気迫のスーパーセーブを披露。また特にソボスライが、時折攻撃をスローダウンさせたりと、時計の針を進めるのも意識した立ち回りを行う等、徐々に膠着した時間が増えはじめ、1-1のまま時間が経過していく。

一方で同時にレッズ目線での不可解なジャッジは増え続けた。

ゴメスがエリア内でファン・デ・フェンに蹴られるもノーファール。サラーが敵陣深くで相手からボールを奪うも、腕すら使っていないにも関わらずファール判定、抗議した途端にイエローカード。わずかな接触でジョタにもイエローが提示され、レッズファンのストレスは最高潮に。

そして溜まったストレスによるものなのか、直後のタックルが遅れて入ってしまい、ジョタに2枚目のカードが出てしまった。

後半から出場も少し試合に入れていなかった点が気になったジョタだったが、フレッシュな選手がまさかの退場処分となり、いよいよもって戦意を失わせる、2人目の退場劇となった。

クロップはここでこれ以上の失点を防ぐべく、攻撃陣をベンチに下げ、遠藤、コナテ、アーノルドを投入。そしてこの投入されたレッズ自慢の守備陣が、勝ち点1をもぎ取るべく、気迫溢れるプレーを披露してくれた。

前線2枚を削り、5-3-0のフォーメーションで、遠藤、ソボスライ、マクアリスター(フラーフェンブルグ)が、プレッシング兼スペースケアにひた走れば、左のロバートソンは時にゴールキックのターゲットになり、時に最終ディフェンダーとなる等、豊富な運動量で上下動を連発。さらにスタメンCBコンビに、コナテを加えたレッズ最強のCBトリオが、スパーズの精度の高いロングボールを次々跳ね返し、ゴールに鍵をかける。
また特にここから、良いプレーやボールがタッチに逃れるたびに互いを鼓舞し合い、称えあい、ハードワークを続け、サポーターを煽り、とみているだけでも胸が熱くなってくるようなシーンが何度も何度もみられた。

だからこそ、報われて欲しかった。
十分でないにせよ、勝ち点1を持ち帰らせてあげたかった。
また敗れるにせよ、せめて相手に決められる結末でありたかった。
だが、サッカーの神様が用意したシナリオはあまりにも無情。

最後の最後、右からのクロスが引き起こしたスクランブル。
ボールに当たったマティプの足、ゴールに吸い込まれるボール。
歓喜のスパーズサポーター。マティプを擁護するアリソン。

この一連の全てをどこか現実離れした世界の中で、みていたような気がした。

誰がマティプを責めることができようか。ピッチ上の9人に責任を求めることができようか。ベンチワークも含め、落ち度を模索することができようか。

97分、レッズボールでプレーは再開されるも、時すでに遅し。
再開後すぐにホイッスルが吹かれ、壮絶な一戦はスパーズの2-1勝利で幕を閉じた。

試合後、クロップ監督は選手の健闘を讃えつつ、判定への不満を露わに。

SNS上にはマティプを擁護するコメントと、判定をめぐる大論争コメントが溢れ返り、また試合後サポーターに挨拶をした際のヌニェスの、ファンを鼓舞するジェスチャーが切り出される等、次に向けての議論が活発に。

中には、レッズの今後の躍進を期待する声も多くみられた。

それもそうだろう、この日リヴァプールがみせたのは、9人になっても、無敗のスパーズ相手に堂々と渡り合う姿で、1人少ない10人の時には、スコアで上回りつつあったことも事実。

もちろんディアスのオフサイド判定が覆れば勝ち点を確保できた、というのはあまりにも雑な予想ではあるが、10人になっても9人になっても、自信溢れる振る舞いは、このまま終わらず何かやってくれるんじゃないか、という雰囲気を大いに感じさせてくれた。

また今日の敗戦を通じて、チームに強烈な一体感が醸成された気がしてならない。
ファン・ダイク新キャプテンの下、マティプやジョタといった仲間をかばう気持ち、レッズの選手としてプレーする誇り、サポーターへの信頼、審判団への、彼らを見返してやるという強い思い….。

チームメンバーのみならず、スタッフ、サポーターまでがここまで同じ方向を向けたことが今まであっただろうか。

ここまでの6試合は、どこか新戦力のお手並み拝見、というムードもあり、連勝を続けていたが、この強さが本物なのか、サポーターも含めて見極めようとしていた印象すら抱く。

しかしながら、この試合が示したものは、冒頭にも触れた通り、
「俺たちは強い!」という強烈なメッセージであり、
一体感が生まれた今、優勝を目論むライバルチームにとって、
強大な対抗馬が誕生したことを宣言したようなものだろう。

事実SNS上の中立サポーターの心を掴んだのも、無敗継続のホームチームではなく、赤い9人の戦士達だったように思う。

それほど強烈な闘志を見せてくれた選手達の今日のプレーを誇りに思うし、この試合を起点とした、伝説の幕開けを期待してしまう自分がいる。

眠れる獅子を目覚めさせてしまった審判団よ、プレミアリーグ・ヨーロッパリーグのライバル達よ、首を洗って待っていろ。

優勝するのは俺たちだ!


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