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行政デジタル化の本質は何か

政府のデジタル化についても今回のコロナ対応の中で待った無しのアジェンダとなってきた。自分自身もここ3年経産省の中でその取組を進めてきたが、デジタル化の本質はただデータを中心とした行政を実現することだけではないと強く思っている。
本質は、これまでの政府のあり方自体を、社会の構造自体をデジタル化というテーマを通じて見直すことなのだ。具体的に政府の何を変えなければいけないのか述べていきたい。

サービスプロバイダーとしての政府

中央官庁は特に「お上」と呼ばれるように、自分たちが作った制度を実施すれば皆使ってくれるという、「上から目線」でしか国民と向き合ってこなかった。だからこそどんなに手間がかかっても紙や押印が残存し、ユーザー視点でオペレーションを見直すことをしてこなかった。しかし、今回の給付金でも明らかになったようにデジタルサービスになれば、ユーザーの視点に立ち使いやすさを考えなければ、誰も手続きができないといった状況に陥りかねない。行政官自体がサービスプロバイダーとしてユーザーと向き合い、どうしたら利用しやすいサービスになるのか、マインドセット自体をユーザー視点に変えなければいけないのだ。

行政組織の縦割構造打破

ユーザー視点に立った場合、各官庁は国民にとっては「政府」という1つの主体でしかない。どの省だろうが関係ないのだ。この立場に立てばそもそも縦割りで役所の省益なるものに拘っていること自体がナンセンスだ。政府全体としてどんなサービスを提供したら良いのか、横串を通して共通化すべきサービスや関連するサービスを各省が連携して提供するということが必要になる。その中で自分の省庁がどう言った役割を担うのか客体化しなければいけない。官僚は各省庁に所属するという帰属意識の前に日本国政府に帰属していることを意識しなければいけない。

行政は全能でないことの自覚とエコシステムの醸成

特にデジタル分野のケイパビリティを持つ行政官が少ないがゆえに、これまで様々なデジタルサービスが十分機能して来なかったことを直視する必要がある。これは泳げない人に泳げと言っているようなものなのだ。知識のない行政官によるベンダーへの丸投げは泳ぎ方を知らない人が、こう泳いでくださいと指示しているようなもので、全く的外れになってしまう。まず、行政内部にエキスパートを取り込み、ケイパビリティを高めることがやらなければいけないことであり、さらに固定的なベンダーだけではない、シビックテック、ITスタートアップなどとコミュニケーションしながら一緒に作っていくことが必要なのだ。これはITに限らず、官僚組織が新卒中心の純粋培養な組織構造を見直し、開かれた組織になることを意味している。行政組織のあり方、人事の仕組みを今こそアップデートする必要がある。

Government as a Platform 、Government as a Serviceへ

国民にとって行政サービスは面倒なものであってはならず、民間サービスと同じように使いやすいものでないといけない。(Government as a Service)そして、行政機関は国民のニーズに対してクイックに対応するプラットフォームでなければならない。(Government as a Platform)原点に立ち返れば、これが政府の実現すべき本質であり、実現するには政府のあり方自体を変革しなければいけないのだ。その手段としてのデジタルテクノロジーであり、これをはき違えれば、また行政のデジタル化は失敗に終わるという危機感を強く持つ必要がある。器に入る魂、志こそが重要なのだ。

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