自分たちで行政、公共を変えよう(Govtech Conference Japan #5)
2月17日にGovtech Conference Japan #5を開催しました。今回も豪華なメンバーと充実の内容で、素晴らしい会でした。今回600名以上の方にイベントに登録していただき、本当にGovtechのコミュニティが拡大して来ているのを実感しています。
No One Left Behind
今回のテーマが「誰一人取り残さない」でしたが、そのためには改めて、ユーザーの視点にたったサービスが重要だということが確認されたと思います。印象的だった言葉として「ユーザーの使い勝手を配慮しないテクノロジーの導入は暴力だ」といったものがあります。「テクノロジーでいくら便利になっても、それが人間性を損なうような導入、無理を強いるようなものは正しいのか」という問いがあリました。スタートアップピッチにおいても「申請主義からの脱却」、「必要な時に必要な支援が見つかる」という点が重視されたサービスが多く挙げられていました。自分が担当した自治体ピッチでも鎌倉市、加古川市の取組などは、特にいかに市民に寄り添うことでその課題を見つけ、解決に導くかという視点が強かったと思います。「手段が目的になってはいけない」というのは何度確認しても十分すぎることはないと思います。
共通化・標準化
アフターデジタルの著者藤井さんからは中国の都市の事例を取り上げながら、アリババのスマートシティのパッケージを導入することで各都市で同じようなデジタルサービスの環境が提供されていることが紹介されたほか、Urban Innovation Japanの吉永さんからはスタートアップとの協業によるベストプラクティスを他自治体にも横展開していく仕組みについて説明がありました。また、関さんからはオープンソースによるソフトウェアのシェアの意義などが語られていました。豊岡市のMaaSのプロジェクトでも横串で異なる部署が連携して共通のプラットフォームを構築していくことが今後重要であると語られていました。共通化・標準化による効率化の一方で、藤井さんからは、都市やサービスの独自性をどうやって維持するのかも重要な課題であることが示されていました。この点については、どの部分を共通化することで効率化のメリットを得て、どの部分でよりそのコミュニティのアイデンティティを際立たせるのか、市民の帰属意識を生み出すのかについて整理が必要であるという問題提起だったように思います。
自ら立ち上がって変えていこう
今回のイベントでは、自分ごととしてデジタル化の取組に参画することの重要性も多く語られていたと思います。平井大臣からは「デジタル化の課題は我々自身の中にある」との発言があり、現状の課題に関する認識を我々自身が改めなければならないとコメントしていました。小林議員からは地元での市民によるスケボーパークの立上げの事例やご自身の自民党青年部での活動を振り返る中で「自分で参画して変えていこう、それは楽しいことだ」というメッセージがありました。また、株式会社abaの代表宇井さんは自分のプロダクト開発のために3年間土日に介護士として働かれた経験などから現場にコミットしていくことの大切さが伝わりました。松田副津市副市長からも幹部層だけでなく、係長級の熱意によって市役所全体でのデジタル化が推進されたことも語られていました。
特に、芦屋市の筒井さんからはデジタルツールを役所内に取り入れていったプロセスを語っていただき、自ら行動を起こすことの重要性を示していただいたと思います。
現状を批判・批評するだけではなく、自分には何ができるのか、行政職員、市民、企業それぞれの立場で一人一人が自分ごととして取組を進められるかが、社会を変えていく上で重要だと感じました。一方で1人ではできることが限られているため、意志ある個人が、同じ問題意識の下に協力していくコミュニティの中で課題を解決できる環境を実現することが重要だと思います。こうしたGovtechエコシステムが、さらに大きく拡大することを期待しています。
本カンファレンスも当初からシビックテック、自治体、スタートアップ等、行政をテクノロジーて変革していこうという意思を持つ人の集まる場を作れればとの思いから2019年に始めました。今はコロナ感染拡大でリアルでは集まれないですが、それでもオンラインで皆つながることはできる。この意思ある人の繋がりが、日本を大きく変えていくことに繋がると良いです。行政デジタル化はこれからが本番です。