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小学校現場で本当に使えるExcelスキルを底上げすべく、夏休みに勉強会を行ったら、自分にも大きな学びが得られた話。
はじめに
この夏、私の勤務校において校務用PCの入れ替えという大きな出来事があり、ひょんなことから、Excelスキルを向上させるために勉強しようというポジティブな学びの流れができました。
日頃から職場全体のデジタルスキル向上の底上げを考えていた私は、その勉強会を担当させてもらうことになりました。
しかし、Excel勉強会って言っても何ができればいいのかゴールを設定する必要があり、いろいろと考えることもありました。
勉強会をやろうと決めた日から最後の勉強会が終わるまで四週間ほどの振り返りをこのnoteに記しておきたいと思います。Excel講師でもないイチ小学校の先生がExcelを伝えるというなかなかない経験を綴ります。
今回のnoteでお伝えすること
①小学校現場で、そもそもExcelが苦手な方とは?その背景にあること
②Excel勉強会でどんな内容を扱ったのか。具体的な内容。
③参加者の反応
④講師である私が得られた学び
きちんと学習した経験がない非エクセラー教員
まずは実態の把握が必須です。
いわゆるExcel苦手教員(通称:非エクセラー)に話を聞いていくと、なんとなく現場で配布されているテンプレファイルに入力して使用するくらいで、知っている関数はSUMとAVERAGEくらいでした。
コピペ自体はできるけど、「値貼り付け」を知らず、いつも書式ごと貼り付けてしまい、共用ファイルをアレンジしてしまうこともしばしば。数式を自分が壊してしまったことにすら気づかずなんてこともあります。ましてや数式バーすらじっくり見たことないよって方もいました。おそるべし小学校現場。
学習時間が確保できない学校現場という背景
だからといって非エクセラーが悪いということではなく、普段の通常業務の中で改めてExcelを勉強するには「時間」というリソースが足りないという現場の問題も含んでいるように感じます。
実際話を聞くと、「もっと勉強したい」「できるようになりたい」というモチベーションは結構あることがわかりました。
今回の勉強会の流れももっとできるようになりたいという願いと夏休みという時間的なゆとりがマッチして生まれた出来事だったのですから。
日々の行事や授業に追われ、系統的にまたは一連の作業ファイルをゼロベースで作り上げる経験をしたことがない非エクセラーにとって、Excelのスキル向上は学校現場での仕事をより効率的に行う手段となるはずです。
どんなステップで学習していけば学校現場の実務で使えるのかを模索しました。
「成績処理」を教材に
教員にとって必要感のある教材の設定として「成績処理」を作り上げることをテーマに設定しました。設定理由としては、校内サーバーのオールクラウド化により、これまで使用していたテスト会社から無償で配布されていた成績処理ソフトがインストール禁止になったため、多くの非エクセラーが「どうやって成績処理すればいいのか」という問題を抱えていたからです。
世の中に多くの成績処理用のエクセルシートはあります。しかし「他人からもらったシートは使いにくい」ということも往々にしてあります。実際、私自身もそうでした。
一連の勉強会を通して自分で作ったシートには価値があると考えました。
動画教材の選定
教材を準備するにあたっての条件
世の中にすでにある教材を使用すること
できれば動画教材
ターゲットが教員であること
以上の条件から次のyoutube動画をメイン教材にしました。
40分✖️4回で実施しました。お昼休みの後半を使い、業務に支障のない範囲で行いました。事前に動画を見て勉強をしてくる反転学習のスタイルで行いました。職員用のclassroomにURLをお知らせして一週間後にやります的な感じでアナウンスをしました。
「YouTube ≒娯楽」と捉えていた先生が多かったようで、先生自身の学びのプラットフォームにもなるということも伝えられたことは成果に挙げられますね。
勉強会の進め方
おおまかな流れとしては
①講師が内容を区切りながらデモンストレーションで演示
②行った作業を解説
③受講生は自分のペースで同じ作業をしていく。つまづきをキャッチして支援に入る。できた人はつまづき受講生のサポートに入る。(学び合い形式)
④講師から演習課題を提示
⑤演習課題を解決した受講生から終了。次回までに見てきてほしい部分を指定。
勉強会のメニュー1回目 基礎編
Excelは表計算ができるということ
セル、シート、ブックの概念
行と列
マウス以外の十字キーでのカーソル操作
shift キーを使った範囲選択
基本のショートカット
入力の種類(数字、文字列、数式、関数、日付)
セルの参照とは(=の使い方)
結構、基礎的なことでつまらないかなぁと考えていたのですが、後々この一回目を受けていただいたことが重要だったと感じました。やっぱり非エクセラーはよくわからないことがわからなかったというこでした。ほぼ知らない人もいたんですね。びっくりしました。やってよかった。
勉強会のメニュー2回目 演算子での計算・オートフィル・関数
主に四則演算子を使った計算について理解を深めました。
(時間:40分程度)
=12+6
=12-6
=12*6
=12/6
そして、セル参照を用いての演算を行いました。ちなみに下の数式を自分で入力してEnterボタン押して計算結果が出たら会場が沸いたんですよ!!「すごーい!!」って。
=A2*B2
どんだけ表計算使ったことがないんだろうと心の中でツッコンでしまいました。ただの掛け算なのに。
その後、数式のオートフィルを活用して同じ計算式を簡単に連動させる方法を学びました。ここでもすごい歓声があがったのは記憶に残っています。
約20年前、自分もオートフィル機能のスゴさにビックリしただよなぁーって。
誰だって最初に見たら驚きますよね。よかった。教えて。
さらに成績処理でよく出る関数について引数と戻り値について理解を深めました。具体的な関数として次の関数を練習しました。
範囲の最大値を返すMAX関数
最小値を返すMIN関数
平均を返すAVERAGE関数
合計を返すSUM関数
このあたりになると受講者はだんだん頭がついてこれなくなったようなので終了としました。とある先生からはは「念の為参加したけれど、思ったより自分がエクセルわかっていなかった。参加してよかった」というフィードバックをいただきました。
勉強会のメニュー3回目 相対参照と絶対参照 VLOOKUP関数の近似一致
今回がメインになってきます。実際に素点から評価を返す動きになります。現行の小学校ではABCの3つに分類することが求められます。
VLOOKUP関数の近似一致を利用してテストの点数に対して評価基準点を設定しておき、「90点以上ならA、70点以上ならB、それ未満ならC」と判定する部分を学習しました。第3回の学習ポイントは以下の通り。
相対参照と絶対参照の違い
絶対参照には「$」を使うこと
「F4」キーで簡単に絶対参照に切り替わること
近似一致と完全一致の違い
第4引数で「TRUE」と「FALSE」を切り替えることで検索方法が切り替わること
評価基準マスタの数値を変えると評価が変わること
テンプレートシートをコピーすれば単元ごとや観点ごと教科ごとなど転用が可能になること
VLOOKUP関数の使用用途としては「FALSE」を使う完全一致の方が一般的だとは思います。しかし今回の勉強会では、素点から評価を返す使用方法であることから「TRUE」を使用することを伝えました。完全一致もどこかの機会でくわしく伝えなたいなと思います。
受講生の反応としては「キツネにつままれた」ような反応で、「どうして?こうなるの?」的な反応が多かったようです。演習問題をクリアするころには仕組みは理解でしたようでした。ただ「引数が多すぎて何が何だか・・・」という感想をもった方もいました。そういった声が聞こえてきたため、「=Fx」で関数を選択する画面で数式バーに引数のサジェストが出るので正確に覚える必要がないことも補足説明を行いました。
勉強会のメニュー4回目 文字列の結合方法 IF関数を使った空白値の対応
各単元シートに返された評価を総括して観点別の評価を出すという実務の場面を想定した内容になります。
「A」「A」「B」「A」の評価なら「AABA」と反映されるようにしていきます。
「&」を使った文字列の結合方法
CONCAT関数を使った文字列の結合方法
シートを串刺しにして同じセルを結合する方法
もう一つの内容は、実務で起きそうな事例としてテスト未受験の児童の評価が「C」になってしまう問題を解決するというもの。
IF関数を使うことでセルの中が未入力なら評価は返さないという仕組みをつくるやり方を学習しました。
IF関数とは
判別式とは
空白セルを""と表すこと
関数のネストについて
IF関数の引数にVLOOKUPをネストする方法
動画教材にはこの部分はなかったのですが、どうしても学校という場所にはテストを受けない児童がいるという事例が珍しくなく、その児童の評価をCとしてしまいうと総括評価に影響してしまうため「テスト受けない子は未評価」ということを反映できるシートにしたかったのです。
そこで私自身が愛読している吉田拳さんの書籍を参考図書として教材化しました。
勉強会を行って参加者のふりかえり
このExcel研修を通じて、私たちは同僚たちが学校現場での仕事を効率的に行うためのExcelスキルを向上させる手助けをすることができました。受講生たちの成果と感想については以下の通りです。
・数式バーの中を見ると何となく書いてあることがよめるようになった。
・関数のつくりは何となく覚えておけばあとは関数を検索したり、詳しい使い方はその場で確認すれば何とかなりそう。
・ネストは正直難しいが、今回の関数は理解できた
・絶対参照を「F4キー」で使うとラクだと知った。
・VLOOKUPすごい。神様。
・勉強会は楽しかったが、ゼロから作れる自信はない。
勉強会を行った私の学びをふりかえる
・実務で使えるレベルの成績処理シートをゼロベースでつくること、そしてそのシートをつくることができるスキルを洗い出すことができたこと。
・つまりコンテンツ(内容)とコンピテンシー(資質能力)両面からゴールを定めることで、学習計画が出来上がったこと。
・この一連の勉強会の計画・進め方のスキームは児童を対象にした授業作りとほぼほぼ共通しているという気づきが得られたこと。
・何より、伝えるというアウトプットがあったからこそ、丁寧にインプットを行うことができ、結果自分にとっての学びが深まったこと。
・この4日間の学習計画・教材・進め方のノウハウをワンパッケージとして手に入れることができたこと。
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