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シュート毎に算出されるゴール期待値


シュートが行われるたびに、ゴール期待値は算出されます。
したがって、ハーフウェイラインからシュートを放った場合でも、そのシュートのゴール期待値は算出されます。


第一回では、ゴール期待値は、「平均的な選手がシュートを打った場合のゴールになる確率を表した指標」つまり、「チャンスの質表す指標」ということを記載しました。


その中で、最近では、以下のようなゴール期待値の推移が試合後に公表されています。
なんとなくでも、見たことがあるのではないでしょうか。

(SPORTERIAより)


今までは、1本のシュートに対して、ゴール期待値がどれくらいかをみてきました。

・そのシュートって簡単だったの?難しかったの?
・どれくらいゴールになりそうだったの?
・それってどうやって算出されているの?
ということでしたよね。

しかし、この画像では、シュート一本のゴール期待値ではなく、1試合における各チームの合計のゴール期待値が記載されています。


そこで、こんな疑問が湧いてきます。。



Q.チーム毎のゴール期待値ってなにを表すの?なんの意味があるの?


・・・果たして、なんのために、公表しているのでしょうか。

それでは、まず、どのように見るのかを解説していくことにします。


画像は、SPORTERIAで公開されている、「1試合のゴール期待値の推移」を表しています。

・右側のxGOALSと表示されているのは、ゴール期待値の値(鹿島:1.28/湘南:2.15)
・縦軸はゴール期待値、横軸は時間経過を表す
・●はシュートが行われたことを示す
・●の数を数えると、その試合におけるシュート数となる
・線でシュートの●を結び、ゴール期待値と時系列を比較できるようにしている
・●に時間が書いてあるものがゴール(後5分や後17分など)


(SPORTERIAより)



この試合の得点者は、鈴木選手(2ゴール)とチャヴィリッチ選手(1ゴール)、福田選手(1ゴール)となっています。


では、この試合の最初のゴールを見てみましょう。


◆各シュートのゴール期待値を読み取る


後半5分の鈴木選手の得点についてです。
ゴール期待値を、縦軸の数値で見ると、0.4ぐらいかなと思います。
(縦軸のゴール期待値の約0.1から約0.5まで縦に線が伸びているように見えるので。)


ゴール期待値は1に近づくほど、シュートの成功確率が高いというのを考えると、鈴木選手は平均的な選手が同じ状況からシュートした場合に40%ほどの成功確率のシュートをゴールに結びつけたということになります。


一方、この試合の湘南の唯一のゴールである福田選手のゴールを見てみます。
後半40分にゴールが生まれたわけですが、、
このゴール期待値を見ると、大体0.8ぐらいでしょうか。
つまり、平均的な選手だと、80%ほどの成功率のシュートだったということがわかります。
(PKのゴール期待値が0.7から0.8ぐらいということを考えると、難易度がイメージしやすいかもしれません)


このようにタイムラインを見ると、どのシュートの難易度が高かったのかが、なんとなく理解できそうですね。。

※注意事項※
なお、SPOTERIAのゴール期待値は簡易版ということもあり、特殊な条件が加味されていないという記載があるため、精度としてはとても高いとは言えないでしょう。

SPORTERIAのゴール期待値は速報値かつトラッキングデータ(選手の位置情報)を含まない簡易版となっています。

例えば、ゴールキーパーがゴール前にいない等の特殊な条件は加味されません。​​

一般的にサッカーのシュートがゴールになる確率は10%程度のため、1試合単位では感覚値と大きくズレるケースがあります。

SPORTERIAより

実際にFOOTBALL LABで公表されているゴール期待値は下記の数値となっており、違いがあることがわかります。
(どちらの精度高いとは言い切れませんが)

FOOTBALL LABより

FOOTBALL LAB:鹿島:1.539 / 湘南:2.265
SPORTERIA:鹿島:1.28 / 湘南:2.15


◆チームのゴール期待値から読み取る

前半は、全体的に堅いというか、お互いに大きなチャンスを作れなかったという言い方、もしくは、お互いのディフェンスが効いていたという言い方ができそうです。
・鹿島は、最初のシュートを放ってから、次のシュートが放たれるまで約30分ほどかかっています。
・湘南は前半にゴール期待値が0.4ほどのシュートシーンがあり、それがこの試合の前半における最大のチャンスだったということになります。

後半は、どちらかというと、お互いにシュートまで行く回数が増えていることが読み取れます。
後半最初のシュートがゴールにつながったことも両チームのシュートが増えた要因になるかもしれません。

試合全体を通して見ると、最終的にゴール期待値が高かった湘南が、勝ち点を落としたのは意外と言えそうですね。


さて、ここまでは、大まかなタイムラインの見方について見てきました。
なんとなくでも理解できたところで、本題に入ります。


なぜ、チームのゴール期待値を出したのという疑問に迫っていきましょう。



Q.チーム毎のゴール期待値ってなにを表すの?なんの意味があるの?


・チームとしてこの試合で、どれくらいのゴール期待値があったかを示す
・この試合で、どちらがより何ゴールに近かったかがわかる
(この試合でチャンスの質が高かったチームを表す)
・試合の流れを読み取れる


この試合で、ゴール期待値が示している数字は、

・鹿島アントラーズ:1.28
・湘南ベルマーレ:2.15


これを見ると、試合に負けてしまった湘南ベルマーレの方が、ゴール期待値が高かったということがわかります。


ゴール期待値が高かったのに負けてるじゃん。

なんの意味があるの?


そんな声も聞こえてきそうです。


この値の意味は、「チームとして、どれだけのゴールが期待できたか」を示しています。



xGというのは、決して、何ゴール生まれるかを示してくれるわけではありません。
そして、優勢だからといって試合に勝つわけでもありません。
(実際にこの試合は、ゴール期待値が高いにも関わらず試合に負けています。)


ゴール期待値は勝敗を分ける要因(その日の調子や運など)をできる限り排除して、各チームのパフォーマンスを評価しようとします。

つまり、よりたくさんのゴールが期待できたのはどっちかを示しているということです。


サッカーは、相手よりも多くのゴールを奪った方が勝ちというスポーツです。

そのため、相手よりも多くのゴールが期待できたチームが勝つ確率は高いだろうということですね。


こう考えると、チームのゴール期待値は、パフォーマンスを評価しているという表現がしっくりくるのではないでしょうか。



これまで見てきたように、試合後に、その試合における両チームのゴール期待値を公表することは、その試合のチームのパフォーマンスが良かったかどうかを客観的に確認できる指標が公開されているということになります。


ファンサポーターの方々にとっては、
例えば、勝てていない中でも常にゴール期待値が相手よりも圧倒的に高い場合、そのチームの未来は、思っているよりも少し明るいかもしれないと考えることもできそうです。


ただ試合に負けて、相手のシュートが素晴らしかったなどと捉えることは簡単ですが、このような数字で捉えてみると、もっと踏み込んだ視点から振り返ることもできるのではないでしょうか。


例えば…

相手に対して、チームの戦術は機能したのか?
前半チャンスが作れていなかったようだが、なぜなのか?
チームとしてゴール期待値の高いシュートを増やすにはどうしたらいいのか?

など、、

このように、その試合のチームのゴール期待値をみることは、1本のシュートのゴール期待値をみることとは違った使用用途があることがわかります。


そのため、サッカーをより深く理解する1つの手段として、チームのゴール期待値も公表されているということが、おわかりいただけるのではないでしょうか。


ゴール期待値の理解が深まってきたところで、次回は、こんな疑問について考えていきます。

「両チームのゴール期待値が全く同じだった場合はどうなるの?」

すでにこの疑問を持っている方がいたかもしれませんね。。
それでは次回もお楽しみに。


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