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「新しい資本主義」ってなんぞや!?解説してみました!

川崎ひろき

岸田内閣が掲げる「新しい資本主義」
この内容がまだまだ浸透、理解進んでいないように思います。

政策内容から読み解くと多岐にわたるため、よけいに狙いや世界的な構図が分かりにくいでしょうから、
今回はその根本理念から、また世界情勢からの「時代の要望」と言った側面から解説したいと思います。

「資本主義の行き詰まり論」と岸田総理の国際感覚

近年世界でいろいろな識者が現状の資本主義が限界にきており、アップデートが必要という提言をしており、その流れの中に岸田総理の「新しい資本主義」というワードがあるものと思われます。

岸田総理は長年外相を務めた外交分野のエキスパートで、国際情勢に明るい事情があるのでしょう。このような海外の潮流を抑えており、その上で「新しい資本主義」という切り口を率先して切り込んだものと思えます。

岸田文雄総裁は、総理大臣兼任ではない外務大臣としては戦後最長の在任期間と務めた人物です。
(参考→ 自民党広島県連機関誌 「翔」72号 https://kishida.gr.jp/wp-content/uploads/2018/03/shou72.pdf

昨今のウクライナ情勢などでの過去の政権に無い早い動き見ても分かりますが、岸田総裁は国際情勢に相当詳しいです。
TBSのサンジャポでデーブス・ペクター氏が「過去の政権でこんなに外交で先手先手打ってるのは見たことが無い」と岸田政権を評しているのを見かけましたが、その通りで、岸田総裁=元外相は世界情勢をよく見て理解しています。
このような岸田総裁ですから、「新しい資本主義」論も相当海外の論者の見解を比較検討しているのではないかと考えられます。


トマ・ピケティの格差論


国内でトマ・ピケティ「21世紀の資本論」が大ヒットしたことは記憶に新しく、ピケティの番組までNHKでやるようなブームに。
ピケティは資本主義が過剰に行き過ぎた結果、一部に富が集中し、中間層が破壊されることをデータで示したわけですが、
この手の議論は欧米で数多く近年提示され議論の的となっています。



NHKクローズアップ現代 21世紀の資本主義はどこへ ~トマ・ピケティに問う~
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3608/




「21世紀の資本」ピケティ教授の講義を独占収録 NHK Eテレ「パリ白熱教室」スタート
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1501/07/news133.html



株主資本主義からの脱却と、ステークホルダー資本主義



行き過ぎた株主資本主義をいう指摘から「ステークホルダー資本主義」というワードも昨今たびたびメディアで頻出します。

世界で脚光「ステークホルダー資本主義」、企業経営の潮流になるか
https://newswitch.jp/p/23911

[FT]「脱・株主第一主義」は本物か
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48843360S9A820C1000000/


[FT]脱・株主第一主義宣言から1年、「企業の目的」定義課題に
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62831000Q0A820C2000000/




この「ステークホルダー資本主義」とは、会社は株主のもの…から、会社は株主だけでなく社員もだし、社会もだし、公共財であるという視点です。
日本風に言えば近江商人の商売哲学である「三方よし」の精神と言えばいいでしょうか。


まさに近江商人の伊藤忠兵衛が創業者である大手商社の伊藤忠商事の「三方よし」の解説ページに詳しく解説があります。

伊藤忠商事 近江商人と三方よし
https://www.itochu.co.jp/ja/about/history/oumi.html
「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる」という考え方


日本人は元来、「ステークホルダー資本主義」的精神を持っていたとも言えます。






政府のこれら新潮流への向き合い


政府がピケティの思想ままとは思いませんが、少なくともピケティの示した格差の拡大による「豊かな中間層」の喪失という問題意識は、岸田総理の発言のはしばしから感じられ、ピケティの視点を認識しているのではないかと思われます。

「ステークホルダー資本主義」にいたっては、明確に政府「新しい資本主義」議論で名称が具体的に登場しています。

新しい資本主義(ステークホルダー論)を巡る識者の議論の整理 令和3年10月26日
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai1/shiryou4.pdf


ジャン・ティロル 、ラジャン、ジンガルス、レベッカ・ヘンダーソン 、ランコ・ミラノヴィッチ、田中亘、ラリー・フィンク…といった国内外のこの分野の議論を並べる上記PDFはぜひ目を通していただければ幸いであります。
このような議論が昨今世界で盛り上がっている構図があるのです。




野村総研の以下の文章も興味深いものでしょう。

「資本主義の正当性」と「世の役に立つ会社」野村證券金融経済研究所 所長 許斐 潤
https://www.nomuraholdings.com/jp/services/zaikai/journal/w_201906_02.html

英米を代表する経済二紙が、時を同じくしてアメリカ型の資本主義の正当性を問う記事を掲載したことを取り上げているのですが、格差拡大が個人だけでなく経済全体としても損失となっているという視点があることをピックアップしています。

これらの記事をよく読むと、資本主義の勝ち組が義憤にかられて半ば自己否定をしているだけではないことが分かる。根底では、格差拡大の政治的・経済的帰結が彼らのビジネスに良からぬ影響を及ぼしかねないことを強く懸念しているのである。

https://www.nomuraholdings.com/jp/services/zaikai/journal/w_201906_02.html

この発想は岸田政権のかかげる「豊かな中間層の復活」の必要性という理念そのものです。
ここの復活こそが、日本経済に資するとの信念に基づくものが、岸田総裁のかかげる「新しい資本主義」の狙いなのです



岸田政権「新しい資本主義」で掲げる具体的理念


前段では主に国際的な状況を取り上げましたが、政策的には細かくいろいろなものが盛り込まれておりますが、そこは後に回し、まずは全体的理念。岸田・新しい資本主義の理念を説明していこうと思います。


政府広報 新しい資本主義の実現に向けて
https://www.gov-online.go.jp/tokusyu/newcapitalism/


「成長分配の好循環」というスローガンが第一にかかげられてますが、ちょっとわかりにくいですよね?


むしろ若者向け座談会で、若者向けに「新しい資本主義」について解説した村井議員の説明が岸田総理の狙うこれの本質を示しているのではないでしょうか。

自民党ホームページ 「新しい資本主義って?」
https://www.jimin.jp/18voice/vol8/interview/04.html

一言で言えば、新自由主義的な資本主義によって、行き過ぎた部分を是正していくということです。
資本主義の形は、産業革命以降、何度か転換点がありました。

例えば、20世紀初頭には、行き過ぎた貧富の格差が問題となり、多くの資本主義国は、年金や医療などの社会保障を重視した福祉国家モデルを採用しました。
その結果、多くの先進国では、社会の中核を担う中間層が生まれてきたわけですが、その一方で1980年代頃になると、政府の役割が大きくなり過ぎたことの弊害として、経済成長のパワーが落ちてきた。

そこで、アメリカのレーガン大統領・イギリスのサッチャー首相などが「市場重視」「株主重視」「官から民へ」といった言葉に象徴される新自由主義的な政策を推進しました。
そうした新自由主義的な政策の流れが、わが国も含めて30年間続いてきたわけですが、ここにきて、その弊害として、中間層の没落や中長期的投資の不足、気候変動問題などにみられる持続可能性の喪失、都市と地方の格差といったものが顕在化してきました。

岸田政権としては、歴史的転換点にあって、新しい資本主義を掲げて、世界に先駆けて課題解決をリードしていきたいと考えています。

https://www.jimin.jp/18voice/vol8/interview/04.html

岸田総理は総裁選で新自由主義路線の見直しをかかげておりましたが、これの見直しに取り組んでいる途上というのが実態なのでしょう。


つまり、「管から民へ」「小さな政府」といった新自由主義路線でなく、国家主導で強力に経済を引っ張ろうという方向性へ見直しをしていこうとしています。

これは中国が強力に国家予算投入で技術開発を進め、アメリカなどでも国家主導で強力に技術開発を押すようなことが行われる時代です。
そんな時代に「民間に任せっぱなしでいい」とやっていては後れを取る時代にあると言えます。

21世紀ですから今後宇宙産業も国家間競争が激化するでしょう。新型コロナウイルスで露呈したように、創薬技術における日本の地盤沈下も顕著。
あらゆる日本の基盤が長らく続く攻めの国家投資不足により劣化してしまいました。
水道管の劣化でたびたび大都市で水道管破裂して、橋は崩れ、こんな日本のまま「小さな政府」で放任でいいと思いますでしょうか?



そういった国富のための中長期投資の積極推進により、結果として「豊かな中間層」を取り戻そうと言う思想こそが、岸田内閣が現在進めている施策です。

もちろんその中には、教育への積極投資により、子育て世帯の負担軽減もあるし、学びなおし機会の推進により日本人全体の技能レベルのアップといったこともあります。

長らくそういった「日本国民への投資」が新自由主義による「小さな政府」思想により絞られてきた結果、不況も相まって、日本国民は学びの機会、技術獲得の機会をを逸してきたのです。
その遅れを取り戻すことは容易なことではありませんが、国の主導で本気で取り組むしかありません。



具体的な取り組み項目を見てみよう!

「新しい資本主義」がかなり意欲的な日本における思想転換、ありかた転換を狙っていることは分かっていだけたかと思います。
これは数年で完結するような課題ではないことは明らかで、これが全てではないはずですが、まずはやるべき取り組み計画案がまとめられ発表されております。




新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画
~人・技術・スタートアップへの投資の実現~ 令和4年6月7日

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/ap2022.pdf

新しい資本主義実行計画工程表  令和4年6月7日
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/apkouteihyou2022.pdf

上記は詳細ですが、多岐にわたり分かりにくいというかたが多いだろうと思います。
こちらの概要がざっと全体像が見え、分かりやすいのでは?

経済財政運営と改革の基本方針2022(案)概要
新しい資本主義へ〜課題解決を成⻑のエンジンに変え、持続可能な経済を実現〜

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai9/shiryou4-2.pdf


賛否両論ある内容もあるでしょうし、「案」ですから今後議論を経て実際には内容が変わりうるものですが
おおまかな方向性は見えてくるでしょう。

持続的な経済成⻑に向けて、官⺠連携による計画的な重点投資を推進する。危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期す。
経済あっての財政であり、経済をしっかり立て直す。そして、財政健全化に向けて取り組む。

理念はいいと思います。
あとは実行できるかです。岸田総理には国民を守り、国民を助ける、その実行力を期待したいと思います。

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