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孜忽書院 〜 シシコツコツと歩むために自己と向き合う3日間

2023年2月18日に、長野市にて「シシコツコツ」というイベントが開催されます。
シシコツコツについては、ぜひこちらをご覧いただければと思いますが…

今年から始まった、「孜忽書院」という取り組みに、ファシリテーターとして参画させていただいておりました。参加者の皆さんの発表を前に、改めてどんなことをやってきたのか、どんな想いを込めたのか、皆さんに紹介できればと思います。


孜忽書院とは?

長野県を舞台にDXなどの次の社会に向けた変化を起こす人を増やす・集めるためのプロジェクト「シシコツコツ」。他を顧みないぐらいに、目の前にあることに熱心に打ち込むことを意味する「孜孜忽忽(ししこつこつ)」が由来です。
山に囲まれた環境で、自分の暮らしややりたいことと向き合い、社会を巻き込んでいく「孜孜忽忽」な人を増やしていきたい。
そこで、長野から「孜孜忽忽」と取り組む若手を増やす連続講座「孜忽書院」を開催することになりました。
大学のゼミ活動やスモールビジネスなど、地方で何か取り組む人は増えてきました。何か取り組みはじめた若年層が、次の一歩・ステージに上がるために切磋琢磨する学びの場を一緒につくります。

シシコツコツウェブサイトより

僕もまだまだ若手であらねばと思いつつ、もっと若い世代の人たちは、僕らの世代以上に自らお店をやったり、新しいプロジェクトを立ち上げたりする人が増えているように感じます。

特に地方でそうした活動を立ち上げる人は年々増えているようにも感じており、実際長野でも、様々な新しい取り組みが芽吹いています。

実際こうした活動は注目も集まりやすく、特に若手を増やしたい自治体にとっては、願ったりかなったりな動きです。ある種若い人が何かをするだけで、もてはやされてしまう状況があるのも事実でしょう。

一方で、新しいことには抵抗も起きがち。実際そう簡単に形になっていくものでもありません。その地域ならではの関係性やこだわりに馴染むことができず、本当の意味での理解者を増やしていくことも簡単ではありません。


実際、こうした取り組みが新たな文化として根付いていく場所には、本当の意味での批判性を持って、その取り組みの主体となる人に向き合ってくれる存在が必ずいるように思います。人間誰しも、ちやほやされたり、そっぽを向かれているだけでは、本当の意味で成長していくことは難しいでしょう。

切磋琢磨していく関係をどう構築していくのか。これはシシコツコツと歩んでいく上で欠かせない姿勢のはずですが、コロナ禍も相まって、なかなかそうした関係を築くことができずに、伸び悩んでいる人も多くいます。


こうした中で、今回始まったのが「孜忽書院」です。

シシコツコツの運営の中心をになってきた、徳谷柿次郎さん、藤原正賢さん、井上拓美くんの3人と、塾長として望月重太朗さん、そして小田の5人で、昨年の7月の終わりから検討を始め、11月、12月、1月と3日間のプログラムを展開してきました。


どんなことをしたのか

Day1|自分の型と向き合う

1日目は、望月さんによる塾長講義から。
この日はまず、不確実な時代だからこそ、自らの「型」を自分自身で構築していくことの重要性を理解するとともに、その型を築き始める一歩目として、意識的に自分のバイアスに気がつき、それをアップデートしていくことの重要性を学んでいきました。

具体的には、「INPUTまたはOUTPUTしていること」と「していないこと」、それらを「意識的に行なっている」か「無意識でやっているか」、という2つの軸で4つのエリアを形成し、自分の中にどんなバイアスがあるかを言語化していくワークを行いました。

4つのバイアスを捉える

意識的なバイアスに、その人のこだわりが現れている場合もあれば、ある種の囚われになっている場合もあります。

無意識のバイアスによって、知らぬ間に思い込んでしまっていることもあれば、それがその人らしさや心理的余裕を生み出していることもあるでしょう。

私たちは、決してバイアスから逃れることはできません。例え何かしらのバイアスから逃れたとしても、そこに形成されるものもまたバイアスでしかありません。だからこそ、シシコツコツと歩んでいくためには、自らそのバイアスを俯瞰的に捉え、アップデートしていくことが重要だと考え、こうしたワークをまず行いました。

ワーク中の様子


お焚き上げしている様子

1日目の終わりには、ワークを通して見えてきた、捨て去りたい自分が何かを紙に書き出してもらい、それをお焚き上げするというワークを行いました。
(結果的に孜忽書院のハイライトともいうべきひとときになったように思います)


Day2|批判を力に変える

2日目は、前回のワークを通じて自分自身と向き合ってみた中で、日々の中にどんな景色の変化があったかを対話することから始めていきました。
バイアスに気がつき、アップデートしたことで、新しい想いやこだわりに気がついたり、新しい葛藤が生まれていたりと、各々に自身との向き合い方に少しずつ変化が生まれていたように思います。

その上でメインワークとして、批判と向き合い、自身の想いや活動を磨く力に変えるための、「批判のワーク」を行いました。

批判のワーク

具体的には、3人1組になり、1人が自身の想いやこだわりを語り、他の二人が誰かになりきってその人に対して批判を向け続けるというワークです。
ポイントは、批判する側はしっかりとその人を演じること、そして批判しかしては行けないこと。

実際やってみると、批判する側の方が難しいワークです。たとえ共感できたとしても、批判しかしては行けないため、苦し紛れに出てきた批判に笑いが起きたりします。

このワークの狙いは、3つあります。
ひとつは、批判を受ける側の構え方の構築です。本来否定と批判は違うもの。しかしながら、たとえ否定的コメントであっても、自分の想いを磨くための力に変えることは可能です。ワークを通した体験を通じて、批判を力に変えるための姿勢を学ぶことができます。批判しかしてこないとわかっていると案外楽なものですし、笑いが起きてしまうので、批判という状況と対峙する上で、その状況を俯瞰的に捉える視座も生まれていきます。

2つ目の狙いは、批判されにいくという関係を構築することにつながること。批判してもらう場を自らつくれば、よりその批判を力に変えやすくなります。意識的にそうした場を作る力を身につけておくことが、多様な考えを持つ人たちとの関係構築にもつながっていくはずです。

そして3つ目の狙いは、批判する側の視点を獲得することです。案外、批判しかしてはけないと言われると、なかなか難しいものです。もっと言えば、本来の「批判」とは、批判する側にこそプレッシャーがかかるべきなのです。批判する側の力を身につけていくことは、批判を力に変えていく視点にもつながっていきます。

批判のワーク中の様子

2日目の批判のワークによって、参加者の間にも、なんだか心地よい関係が生まれていったような感覚がありました。ある意味このタイミングで、孜忽書院の目的の一つである、関係構築は実現されていたようにも思えます。


Day3|想いを多層的に捉える

3日目には、すでに参加者の中に変化が生まれていました。自ら参加者を募り、朝食を一緒に食べながら語らう場作りをする人もいれば、自身の活動の中で、顧客に対してただ意見を聞くだけではなく、自分の想いも伝えるようにしてみた、という人もいました。明確にひとりひとりの話し方が変わってきた感覚が感じられたことがとても嬉しい瞬間でした。

3日目のワークは、少しずつ磨かれてきた自身の想いを、より多層的な視点で捉えるワークを行っていきました。

このワークを考える上でベースにしたのが、イームズ夫妻が製作した有名な動画「Power of Ten」です。

それぞれの参加者の想い自体は深まってきていましたが、単に独りよがりな想いになってしまっては、地域の文化を創っていくような営みにはなりません。

さまざまな視点から、その想いについて思考を深め、具体的な姿勢や活動を自ら言語化していく必要があると考え、複層的に想いと向き合うためのワークシートを作成しました。

製作したワークシート

個人の想いの先に、それらと共に向き合う仲間がいて、それらを取り巻く組織が存在し、地域や社会と接続していきます。
同時に、自身の想いを形づくっていくための身体性や日常の営み、そして自らを取り巻く環境や社会が存在しています。

これらを複層的に捉えていき、またその間を眺める中で、自らが取り組むべき具体的な行動や、誰かと共に向き合っていくべき問いを言語化していくというワークを行いました。

互いに切磋琢磨している様子

正直ちょっとワークを難しく設定しすぎたかな?とも思いましたが、ここまで自己と向き合ってきた人たちが、その複層的な様相の解像度を上げようと、共に切磋琢磨してくれました。

ここで生まれた関係性が、きっと今後の活動の力強い根になっていってくれるのではないかと思えたことが、個人的にも孜忽書院と向き合えてよかったなと思えた瞬間でした。


発表に向けて

18日の発表では、参加者ひとりひとりが、自身の取り組みについて、今後どのようにシシコツコツと歩んでいきたいかを発表してもらうことになっています。

たった3日間のプログラムでしたし、どんな発表をすれば聞いてくれる人の共感を呼ぶか、なんてことは1ミリも伝えられていません。発表自体は、まだまだ葛藤にあふれたものも多くなされるのではないかと思います。

それでも彼らは自己と向き合って、自分なりにその想いを言葉にしようとしてくれていることでしょう。たとえ荒削りでも、仲間と共に向き合いながら、自分で言葉を紡いでいる人の言葉には、きっと人々を巻き込む力が宿ってくるのではないかと思っています。

発表を聞いた人たちの中に、一人一人の想いに触発されたり、参加者と新たな関係が生まれていってくれれば、シシコツコツと歩んでいく生態系がより豊かになっていってくれるはずです。もちろんすぐに変化として何かが起きるわけではないでしょうが、この孜忽書院が、3年後5年後の文化の営みにつながっていってくれたら、とても嬉しいなと思っています。

ぜひ、彼らの紡ぐ想いを、当日聞きにきていただけたら嬉しいです。


みなさんからいただいた支援は、本の購入や思考のための場の形成(コーヒー)の用意に生かさせていただき、新しいアウトプットに繋げさせていただきます!