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明けない夜が明けるとき

いよいよ迎えた面接当日

はやる気持ちを抑え・・・

と言いたいところだが

そんな簡単に抑えられるわけもなく

はやる気持ちをそのままに引きずって

予定の時間より1時間前に最寄駅についてしまった

駅のプラットホームに降り立つと

まさに今日面接を受ける会社が目の前にそびえたっている

希望する会社が眼前に映り込む中で

一体どれだけの人が冷静でいられるのだろうか?

まあ無理だろう

少なくとも俺には無理

まあ一度は死んだ身だし

やれるだけのことをやってみるか

そう自分に言い聞かせ

ホームのベンチに座り最後の仕上げに移る

面接の想定問答をひたすらに繰り返し

志望理由、学生時代一番頑張ったこと、空白期間の説明など

考えられる質問に対する回答を改めて整理し

準備万端、意を決して面接へと向かった

会議室に通され、簡単な性格分析テストを受けた後

いよいよ対面での面接が始まった

目の前には社長と営業部の部長さん

見た目からしてもう偉そうだ(風格があるという意味)

そんな人を目の前にして緊張はピークに達した

そして面接が始まった

その面接とは

僕が想定していた面接とはかけ離れたものだった・・・

「君はホームページは作ったことはあるか?HTMLとか習わなかったか?」

「電子工作はしたことはあるか?配線とか半田とかはどうだ?」

・・・・・・・・・・・・

何を言われているのかちんぷんかんぷんだった

矢継ぎ早に技術的な内容の質問をされ

「俺、営業志望なんだけどな・・・・」

と心の中で思いながら

「俺が無知なだけで、世の中ってそういうものなのか・・・?」

と不安に駆られ、偉いところに来てしまったと思った

そんな質問が何個も続き、途方に暮れて

「いいえ・・・」「すみません・・・」「わかりません・・・」

この3パターンの返事だけでやり過ごすという地獄のような時間だった

社長が営業部長に

「こりゃ駄目だな・・・」

と苦笑いしながら話しかけ

営業部長が

「まあまあまあ・・・」

となだめるという

ドラマかよ!と思えるようなシーンを何度も見させられ

もう絶対に落ちたなと・・・

早く帰りたいなと・・・

ずっと思っていた

はあ・・・世の中って厳しいなと・・・

あと一体どれだけニート生活が続くのかと・・・

もしかしてもう二度と俺は這い上がれないのではないかと・・・

そう思ってどんよりとした気持ちが自分を覆った時だった

社長が

「そういえば君は履歴書で英語を勉強していると書いていたな!そうか!じゃあこの文章を和訳してみろ!」

そういって英語のビジネス文章問題をその場で即興で和訳した

日頃の勉強のおかげか、簡単に訳すことが出来た

ネガティブな返事しか出来ない質問の中で

このテストが唯一自分がポジティブに答えられる問題だった(笑)

そしてこのテストのおかげで少し面接の空気が緩んで

やっと営業の仕事がどんなことをやるのかという内容を話してくれた

営業だけでなく機械やソフトの知識も必要なこと

国内海外問わず出張があり、特に遠距離の出張が多いこと

社外だけでなく社内での営業も大切なこと

営業でもどちらかというと工場での現場仕事が多いこと等々

一つひとつ業務内容の説明があり

事あるごとに「大丈夫か?」と問われたが

こちらはもう後がない

口にする言葉はただひとつ

「はい!大丈夫です!頑張ります!」

何の根拠もなかったが、何の迷いもなかった

ハッタリと言えばそれまでだが

時には大嘘をついてでも喰らいついていく

その大切さをこのときの面接から学んだ

足りない部分はこの先必死になって身に着ければいい

嘘は真に変えればいい

まずは受からないと何も始まらない

この生活から早く抜け出したい

その一心だけだった

一連のやり取りを終えた後、社長から

「よし!じゃあいつから来れるんだ」

そう言われ、この言葉が採用を意味すると悟った瞬間

涙が出るほどうれしかった

まさか受かると思っていなかったから

途中まで絶対に二度とこの会社には来ないだろうと思っていたから(笑)

本当にうれしかった

その場で採用を告げられ

営業部のリーダー二人に挨拶をして会社を後にした

嬉しすぎて嬉しすぎて

思わずスキップになってしまう帰り道

電車に揺られながら仕事中の母親にメールを打つ

「受かったよ」という文章にビックリマークを20個くらい添えて

ありったけの感謝の思いを文章にしたためて・・・・



こうして長かったニート生活はやっと終わりを告げた

まさかこんなにも長引くとは思っていなかった

そしてこんなにも苦しいものだなんて尚更思ってもいなかった

このときの苦しかった経験は10年以上経った今でも脳裏に深く焼き付いている

本当にいろんなことがあって、いろんなことを学んだ

あれだけ強く望んだ夢ですらも、脆くも崩れ去ってしまうということ

好きなことはそう簡単に見つかるものではないということ

たった一回の挫折でも人は大きく道を踏み外してしまうこと

踏み外したレールから復帰するのは本当に難しいということ

そして途方に暮れてどうにもならない自分を支えてくれた家族がいるということ

たまには気分転換しようよと声をかけてくれた友人がいるということ

そして時には若さ故の無知さが行動力につながるということ

そして自分の努力に運が重なって報われることもあるということ

そんなことをこの経験で身をもって学ぶことが出来た

世の中の底を掬うような日々

もう二度と味わいたくは無いけれど

絶対に意味のある経験だっと今なら心から思える

今、まさにあの鬱屈とした暗闇の中にいたときの自分がこのブログを書かせている

きっとこの世界のどこかに自分と同じような気持ちを抱えながら

今まさに苦しんでいる人がいるのなら

本当に少しでもいいから

届いたら良いなと

この気持ちが

これまでの文章が

そしてこれからの僕の人生が

そういった人たちの道標に少しでもなってくれたら

この思いを綴った意味があるでしょう

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