【乳房にがん】16日目

2020/06/06

今日は夕方から天気がすこぶる悪かった。

朝からむしむししていたけれど、夕方からの雷の多さと雨粒の強さが室内にいて、あー、この閉じこもった空間にいて良かったーと思えるほどのものだった。

二階から下にのびる階段の踊り場にある小窓に顔をぴったり寄せている母。

なにしてるの?

と声をかけると

雷のね、あの稲妻の形をみたいのに、ただ光だけでつまんないのー。

と無邪気に言った。

この人のこういう子供らしいさは娘としてとても可愛らしく、その背中は決して、今までと何一つとして変わりがないように思えた。

しばらく稲光が見えることを期待していたようだが、諦め、またここ数日している片付けにもどった。

私が夕飯の支度をしていると仕切りに話しかけてくる。それも昔行きたかったお店の話覚えてる?メモ出てきた!

と懐かしむことばかり。

意識的なのか無意識なのか、はたまた片付けだからかこのところ「懐かしむ」ことがとたんに増えている。

そして、夕飯を終えると母が出してきたのは、

保険証券。

今どの保険に入っていて、どれくらい入院や通院で貰えて、受取人が誰で

という引き継ぎをした。

まさしく、これから使うであろうことをしっかりと。

今までこれといって大病をしていない母は、ようやくかけてきた保険を使うことが出来る。

なんとすごいことなんだろうと思う。

それに、昨日行った眼科でお医者様から、うちにも乳がんになった患者さんいるけど、みんな元気にまた目のことで通ってきてるから大丈夫!と励まされたらしい。(この眼科医とはそんなに長い時間話したことはなかったらしく、それだけでもなんだか嬉しかったようだ)

私にとってはやはりまだ実感はないが、母は保険証券の中のエンディングノートを目ざとく見つけるなど、確実に病と向き合っている。

でもね、病は気からと言うけれど、考えすぎると、病に持ってかれてしまうよ、と母の心がひたすら心配になっている。

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